ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

スウィート/ライヴ・アンド・ベスト (Anthology)

2007年10月29日 | 名盤



 スウィートというバンド、今ではその名も忘れられがちですが、1970年代のイギリスではかなりの人気を博していました。日本でも70年代の中盤に「フォックス・オン・ザ・ラン」と「アクション」が立て続けにヒットし、一時はあのクィーンのライバルと目されたこともあったようです。編成も同じだし、ルックスも悪くないですから、女性ファンも多かったことでしょう。
 このアルバムは当時、タイトル通りスウィートのライヴ・パフォーマンスを収めたものと、ベスト・セレクションを収めたものの2枚組LPとして発表されたものです。CDではシングル・アルバムとなり、最初の7曲がライヴ、残りの10曲がベストとなっています。





 スウィートはグラム・ロック・バントとか、バブルガム・サウンドなどと見られたり、その容姿からアイドル・バンドのように思われたりしがちですが、実際に彼らのライヴを聴いてみるとエネルギッシュで小気味のよいハード・ロックを演奏しています。それぞれのテクニックもかなりあるようで、サウンドに隙がありません。ヴォーカルのブライアンは安定した歌唱力を持っているし、ギターのアンディ・スコットはバッキングにソロにと八面六臂の活躍ぶりです。ベースのスティーヴ・プリーストは目立ちはしないものの、しっかり低音部分でサウンドを支えつつ、時には自由に動いてサウンドに彩りをつけています。そしてミック・タッカーのドラミングですが、「70年代で最も過小評価されているドラマーのひとり」とも言われる卓越したもので、パワー、テクニック、グルーブ感、どれをとっても申し分なしです。





 1970年代半ばに発表した「フォックス・オン・ザ・ラン」と「アクション」では、親しみ易いメロディーなどポップな要素を持たせながら、ヘヴィでスリリングなロック・サウンドを展開していて、日本でもかなりのヒットを記録しました。
 シングル「フォックス・オン・ザ・ラン」のジャケットには「ヘヴィ・メタル」という言葉が載っていたような記憶があります。今のヘヴィ・メタル・バンドからすればスウィートのサウンドはややおとなしい感じもありますが、この「ライヴ・アンド・ベスト」のライヴ部分を聴いてみると、その頃では充分ヘヴィ&ハードなサウンドで鳴らしていたのがわかりますね。
 また「アクション」はのちにデフ・レパードによってカヴァーされています。スウィートのヴァージョンを踏襲したアレンジですが、さらにパワー・アップしています。





 ベスト・トラックを収めた8~17曲目のラインナップを見ると、「フォックス~」「アクション」を始めとして、「ボールルーム・ブリッツ」「ソリッド・ゴールド・ブラス」「ザ・シックスティーンズ」「ブロックバスター」などのヒット曲が収められています。でも、「ファニー・ファニー」「コ・コ」「ポパ・ジョー」「リトル・ウィリー」「ウィグ・ワム・バム」「ティーンエイジ・ラムペイジ」などの彼らの初期の一連の作品が漏れているのが惜しまれます。


     


 ただ、そういった初期のスウィートの作品はニッキー・チンとマイク・チャップマンというソング・ライター・チーム(他にもスージー・クアトロなどに作品を提供しています)が手掛けたもので、おそらくはティーン・エイジャーをターゲットにしていたようです。しかし、スウィートの面々が彼らの手を離れて自作曲で勝負するようになってから、アイドル・バンドなどという彼らにとっては不本意なレッテルを自らの手で剥がし、正統派ハード・ロック・バンドへ脱皮することに成功したと言えるでしょう。



◆ライヴ・アンド・ベスト/Anthology
  ■歌・演奏
    スウィート/Sweet
  ■リリース
    1976年5月20日 (日本)
    1975年11月(イギリス:オリジナル・タイトルは『Strung Up』)
  ■プロデュース
    スウィート/Sweet
  ■収録曲
    ① ヘルレイザー/Hellraiser (Nicky Chinn, Mike Chapman)
    ② バーニング/サムワン・エルス・ウィル/Burning/Someone Else Will (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ③ ロックン・ロール・ディスグレイス/Rock 'n' Roll Disgrace(Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ④ 恋の大募集/Need a Lot of Lovin' (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑤ ロング・オールライト/Done Me Wrong Alright (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑥ 愛してくれていいんだよ/You're Not Wrong for Lovin' Me (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑦ 黄金の腕を持った男/The Man with the Golden Arm (Elmer Bernstein, Sylvia Fine)
    ⑧ アクション/Action (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑨ フォックス・オン・ザ・ラン/Fox on the Run (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑩ セット・ミー・フリー/Set Me Free (Andy Scott)
    ⑪ ミス・ディミーナ/Miss Demeanour (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑫ ロックン・ロールに恋狂い/Ballroom Blitz (Nicky Chinn, Mike Chapman)
    ⑬ バーン・オン・ザ・フレイム/Burn on the Flame (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑭ ソリッド・ゴールド・ブラス/Solid Gold Brass (Brian Connolly, Andy Scott, Steve Priest, Mick Tucker)
    ⑮ 初恋の16才/The Six Teens (Nicky Chinn, Mike Chapman)
    ⑯ アイ・ワナ・ビー・コミッテッド/I Wanna Be Committed (Nicky Chinn, Mike Chapman)
    ⑰ ブロックバスター/Blockbuster (Nicky Chinn, Mike Chapman)
    ※①~⑧=Live Album(1973.12.21  Live at Rainbow Theatre, London) ⑨~⑰=Studio Album(Compilation Album)
  ■録音メンバー
    ブライアン・コノリー/Brian Connolly(lead-vocals)
    アンディ・スコット/Andy Scott(guitars, keyboards, synthesizers, backing-vocals, lead-vocals)
    スティーヴ・プリースト/Steve Priest(bass, backing-vocals, lead-vocals)
    ミック・タッカー/Mick Tucker (drums, percussion, backing-vocals, lead-vocals)
  ■チャート最高位
    1975年週間アルバム・チャート  イギリス9位


コメント (4)
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