8月16日に名ドラマーのマックス・ローチが逝去してから、彼のプレイが聴けるアルバム『サキソフォン・コロッサス』をたびたび聴いています。
これはソニー・ロリンズがリーダーとしてクレジットされているもので、どのジャズ・ガイド・ブックを見ても必ず紹介されている、名盤中の名盤です。
ぼくがこのアルバムを買った時は、まだジャズを聴き始めた頃で、どのアルバムから買っていいのか分からなかったので、そういうガイド・ブックの類の記事を参考にしたものでした。
マックス・ローチ
1曲目の「セント・トーマス」がカリプソ調の明るく、親しみ易い演奏だったので、「ジャズの高い垣根」みたいなものを感じることなく、分からないなりにもアルバムを通して聴くことができました。
今、こうやって聴いてみると、やはり名盤と言われているだけあって、そのサウンドはぼくの耳を充分に刺激してくれます。
バックの三人の好演がロリンズのプレイをより引き立てています。
幹の太い木を思わせるようなどっしりした4ビートを堅実に刻むベースのワトキンス。とくに「モリタート」や「セント・トーマス」の中間部、「ブルー・セヴン」のイントロ、また「ストロード・ロード」のロリンズとデュオとなる部分などで聴かせてくれるウォーキング・ベースは、それだけで曲を引っ張っていけるようなグルーヴィーなものです。
ピアノのフラナガンは、こういったセッションで抜群の実力を発揮します。ツボを心得たブロック・コードの入れ方がスウィンギー。コロコロ転がるようなソロもシブいですね。
ドラムスのローチがボトムからしっかりとリズムを支えているような感じです。ロリンズがソロを取っている間はよけいな手数を入れるのは控えていますが、盛り上げどころは熟知しているようで、フィル・インはもちろん、ダイナミクス(音の強弱)ひとつで曲に彩りをつけているところなど、さすがです。また、ワトキンスとのコンビネーションも抜群で、このふたりで作るリズムの太い芯は少々のことでは揺らぎはしないと思います。
ソニー・ロリンズ
ロリンズのテナーって、とても温かい感じがしますね。よく彼のサックスは「豪快」だと言われます。けれど、ちょっとデリケートなところもあって、激しく吹きまくるだけでないのが分かります。雄々しさと抑え気味なところのバランスが絶妙なんです。
彼のよく歌うサックスは、インプロヴィゼイション部分でたっぷり堪能できます。分かり易いアドリブ展開も魅力だし、音色なども、聴いていてちっとも疲れない心地良いものです。
軽快な「セント・トーマス」~バラードの「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」~速めの4ビート「ストロード・ロード」~親しみ易いメロディーが楽しい4ビートの「モリタート」~タイトル通りブルージーな「ブルー・セヴン」と、曲順も「これしかない!」って感じです。流れがごく自然に感じられるんです。
ソニー・ロリンズ
秋の夜長にはジャズがとても合います。でもこれは、よく晴れた日の午後に聴いても気持ち良いアルバムだと思います。
秋の訪れとともに、ぼくがジャズを聴く日も増えることでしょう。
◆サキソフォン・コロッサス/Saxophone Colossus
■演奏・・・ソニー・ロリンズ4
ソニー・ロリンズ/Sonny Rollins (tenor-sax)
トミー・フラナガン/Tommy Flanagan (piano)
ダグ・ワトキンス/Doug Watkins (bass)
マックス・ローチ/Max Roach (drums)
■プロデュース
ボブ・ワインストック/Bob Weinstock
■レコーディング・エンジニア
ルディ・ヴァン・ゲルダー/Rudy Van Gelder
■リリース
1956年
■録音
1956年6月22日 (ニュージャージー州ハッケンサック、ヴァン・ゲルダー・スタジオ)
■収録曲
A① セント・トーマス/St. Thomas (Rollins)
② ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ/You Don't Know What Love Is (Raye, DePaul)
③ ストロード・ロード/Strode Rode (Rollins)
B④ モリタート/Moritat (Brecht, Weil)
⑤ ブルー・セヴン/Blue Seven (Rollins)
■レーベル
プレステッジ/Prestige