ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

クリームの素晴らしき世界 (Wheels Of Fire)

2007年10月03日 | 名盤


 思い返してみると、このアルバムを聴いてみたい、と思ったきっかけは、あの「ホワイト・ルーム」が入っていたからでした。クリームのレパートリーの中でも名高い曲です。
 「カッコいい曲だ」というのはロック好きだった友人に聞かされていました。そんな時に「クリームっていうバンド、知ってる?好きなんだっら貸してやるぞ」と言われて、興味津々で借りて帰ったのが、この『クリームの素晴らしき世界』でした。


 ぼくはまだ中学生だったので、全編通じて聴いてもどこがどう良いのか分かりませんでした。
 改めて聴いてみて「スゴいな~」と思ったのは、どっぷりロックに漬かっていた20歳過ぎの頃だったと思います。
 その時は、「ホワイト・ルーム」よりも、むしろ「クロスロード」の演奏の方に感動を覚えました。三人がその圧倒的な演奏技術をフルに発揮して収束していく様は「凄まじい」の一言に尽きると思います。


     


 この『クリームの素晴らしき世界』は二枚組で、スタジオ盤とライヴ盤に別れています。当時は一枚ずつバラ売りされていたらしいですね。
 スタジオ盤は、どちらかというと、スタジオならではの実験性が見え隠れしています。
 プロデューサーのフェリックス・パパラルディがヴィオラやトランペット、オルガンなどで参加していて、ポップな要素も出しながら、当時としてはちょっとプログレッシヴな音作りを試みているようです。


 ライヴ盤の方は、まさに原題の「Wheels Of Fire」そのものの、熱気にあふれたインプロヴィゼイションが繰り広げられています。
 その中でも、「クロスロード」「スプーンフル」は、三人のスリル満点の壮絶なインタープレイが聴かれる、ロック史上に残る名演だと思います。
 また「列車時刻」ではジャック・ブルースのハーモニカ・ソロ、「いやな奴」ではジンジャー・ベイカーのドラム・ソロがたっぷり聴くことができます。さながら、三人それぞれの見せ場を再現しているようです。


     


 極端に言ってしまえば、スタジオとステージでは別のバンドが演奏しているようにも聴こえます。スタジオではポップだったり、プログレッシヴだったり、さまざまな方法論を試みているようです。
 しかしライヴでは、ブルースをベースにした三人のぶつかり合いによって、各自の強烈な個性を引き出し合っているようです。これはまさに、ロックというよりジャズといった方が良いのではないでしょうか。


 ベースを弾いていた自分としては、ジャック・ブルースの、派手で音数の多いスピーディーなベース・ラインに憧れて、よくコピーしていたものです。そういう意味でもこれは懐かしいアルバムです。



◆クリームの素晴らしき世界/Wheels Of Fire
 ■歌・演奏
   クリーム/Cream
 ■収録曲
  Side-A
   ① ホワイト・ルーム/White Room (Jack Bruce, Peter Brown)
   ② トップ・オブ・ザ・ワールド/Sitting on Top of the World (Walter Vinson, Lonnie Chatmon arr.Chester Burnett)
   ③ 時は過ぎて/Passing the Time (Ginger Baker, Mike Taylor)
   ④ おまえの言うように/As You Said (Bruce, Brown)
  Side-B
   ⑤ ねずみといのしし/Pressed Rat and Warthog (Baker, Taylor)
   ⑥ 政治家/Politician (Bruce, Brown)
   ⑦ ゾーズ・ワー・ザ・デイズ/Those Were the Days (Baker, Taylor)
   ⑧ 悪い星の下に/Born Under a Bad Sign (Booker T. Jones, William Bell)
   ⑨ 荒れ果てた街/Deserted Cities of the Heart (Bruce, Brown)
  Side-C
   ⑩ クロスロード/Crossroads (Robert Johnson arr.Eric Clapton)
   ⑪ スプーンフル/Spoonful (Willie Dixon)
  Side-D
   ⑫ 列車時刻/Traintime (Bruce)
   ⑬ いやな奴/Toad (Baker)
 ■アルバム・リリース
   1968年7月(アメリカ)、1968年8月9日(イギリス)
 ■プロデュース
   フェリックス・パパラルディ
 ■録音メンバー
  ☆クリーム/Cream
   エリック・クラプトン/Eric Clapton (guitar, vocal)
   ジャック・ブルース/Jack Bruce (vocal, lead-vocal, bass, cello, harmonica, acoustic-guitar, recorder)
   ジンジャー・ベイカー/Ginger Baker (drums, percussion, spoken-word⑤)
  ★ゲスト
   フェリックス・パパラルディ/Felix Pappalardi (viola, bell, organ, trumpet, tonette)
 ■チャート最高位
   1968年週間チャート  アメリカ(ビルボード)1位、イギリス3位(2枚組)・7位(1枚組)




 

コメント (6)
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