ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

青い影 (A Whiter Shade Of Pale)

2007年10月20日 | 名盤

 
 数あるポピュラー・ミュージックの中で、ぼくが最も好きな曲を挙げるとしたら、必ず五指に入るのが、プロコル・ハルムの「青い影」です。
 この曲は1967年4月にリリースされると、発売後3週間で約40万枚を売り上げ、イギリスのチャートで6週連続No.1となる大ヒットを記録しました。全米での最高位は5位、他にもヨーロッパ各国でヒット・チャートを席捲しました。もちろん日本でもヒット、当時のGSがこぞってレパートリーに取り上げ、ゴールデン・カップスやズーニーヴー、スパイダースなどがレコード化しています。


 「青い影」が収録されているのが、プロコル・ハルムのデビュー・アルバム「青い影」です。
 ぼくがこのアルバムを買ったときは、ちょうどレコード盤からコンパクト・ディスクへの移行期で、このアルバムがぼくが生まれて初めて買ったCDということになります。
 

 シングル「青い影」の大ヒット後、プロコル・ハルムはアルバム制作に取りかかりますが、レコーディング前にレイ・ロイヤー(ギター)とボビー・ハリスン(ドラム)が脱退します。
 脱退したふたりに代わって加入したのはロビン・トロワー(ギター)とB.J.ウィルソン(ドラム)。ふたりともブリティッシュ・ロック史の中にしっかり足跡を残す名手です。
 トロワーとウィルソンを加えたプロコル・ハルムはファースト・アルバムを制作するのですが、イギリス盤には「青い影」は含まれていません。
 
 
     


 アルバムを一貫して覆っているのは、ほの暗くてミステリアスな雰囲気です。
 非常に印象深いのは、ブルッカーの黒っぽくてソウルフルな歌声です。
 要所要所で前に出てくるのがトロワーのヘヴィなギター。
 そしてプロコル・ハルムの看板とも言えるのが、当時珍しかったツイン・キーボードです。
 終始絡み合うブルッカーのピアノとフィッシャーのオルガンの織り成すサウンドは、「青い影」に見られる荘厳な雰囲気だけでなく、ブルースやジャズ、トラッド・フォークなど、ルーツ・ミュージックへの指向も伺わせます。
 
 
 名曲「青い影」(原題を直訳すると「蒼白な」という意味に近い)の荘厳な雰囲気のイントロは、バッハのカンタータ140番「目ざめよと呼ぶ声あり」をモチーフにしたとされています。また一説にはパーシー・スレッジの「男が女を愛する時」にインスパイアされた、とも言われています。当時は「クラシックとR&Bが結婚して生まれた名曲」と言われていました。
 今ではエレクトーンの教材に欠かせぬ曲です。またCMにもたびたび起用されているので、ほとんどの方がこの曲を聴いたことがあるのではないでしょうか。
 ちなみに荒井由実は、この曲を聴いたことがきっかけとなって音楽を自作するようになった、ということです。
 1970年代にはジョー・コッカーがこの「青い影」をスマッシュ・ヒットさせています。最近ではサラ・ブライトマンやアンジェラ・アキがカヴァーしているようです。


     
     アルバム「プロコル・ハルム」(アメリカ盤)
 
 
     
     シングル「青い影」


 アルバムの主だった収録曲は、ホンキートンク調の「メイベル」、R&Bっぽい「クリスマス・キャメル」、ヴォードビル風の「グッド・キャプテン・クラック」、軽快な8ビートの「カレイド・スコープ」、オルガン主体で、ヘヴィなギター・ソロがフィーチュアされたクラシカルな「ヴァルプルギスの後悔」などです。「青い影」と「ヴァルプルギスの後悔」以外は、どちらかというとR&Bをベースにしたアメリカ指向のサウンドだと言えるかもしれません。


     


 なお、「プロコル・ハルム」という一風変わったバンド名は、作詞したキース・リードの友人で、プロデューサーのガイ・スティーヴンスの飼い猫の名前から付けられた、ということです。
 
 
 
◆青い影/A Whiter Shade Of Pale
  ■リリース
    アメリカ1967年9月、イギリス1967年12月 
  ■歌・演奏
    プロコル・ハルム/Procol Harum
  ■プロデュース
    デニー・コーデル/Denny Cordell
  ■録音メンバー
   【プロコル・ハルム/Procol Harum】
    ゲイリー・ブルッカー/Gary Brooker (vocals, piano)
    マシュー・フィッシャー/Matthew Fisher (organ)
    ロビン・トロワー/Robin Trower (guitar)  
    デヴィッド・ナイツ/David Knights (bass)
    バリー・J・ウィルソン/Barrie "B. J." Wilson (drums)  
    キース・リード/Keith Reid (lyrics)  
    ------------------------------  
    アメリカ盤A01「青い影」のみ  
    ゲイリー・ブルッカー (vocals, piano)  
    マシュー・フィッシャー (organ)  
    レイ・ロイヤー/Ray Royer (guitar)  
    デヴィッド・ナイツ (bass)  
    ビル・エイデン/Bill Eyden (drums)  
    キース・リード (lyrics)
  ■収録曲
   ☆イギリス盤
    A01 征服者/Conquistador
     02 シー・ワンダード/She Wndered Through the Garden Fence
     03 フォローイング・ミー/Something Following Me
     04 メイベル/Mabel
     05 セルデス/Cerdes (Outside the Gates Of)
    B06 クリスマス・キャメル/A Christmas Camel
     07 カレイドスコープ(万華鏡)/Kaleidoscope
     08 サラダ・デイズ/Salad Days (Are Here Again)
     09 グッド・キャプテン・クラック/Good Captain Clack
     10 ヴァルプルギスの肖像/Repent Walpurgis
     ※ 作詞=キース・リード(①~⑩)  作曲=ゲイリー・ブルッカー(①~⑨)、マシュー・フィッシャー⑩
   --------------------------------------------
   ☆アメリカ盤     
    A01 青い影/A Whiter Shade of Pale ☆
     02 シー・ワンダード/She Wndered Through the Garden Fence
     03 フォローイング・ミー/Something Following Me
     04 メイベル/Mabel     
     05 セルデス/Cerdes (Outside the Gates Of)
    B06 クリスマス・キャメル/A Christmas Camel
     07 征服者/Conquistador
     08 カレイドスコープ(万華鏡) ~サラダ・デイズ/Kaleidoscope~Salad Days (Are Here Again)
     09 ヴァルプルギスの肖像/Repent Walpurgis
     ※ ☆=シングル・カット
     ※ 作詞=キース・リード①~⑩  作曲=ゲイリー・ブルッカー②~⑨、ゲイリー・ブルッカー&マシュー・フィッシャー①
  ■チャート最高位
    1967年週間チャート  アメリカ(ビルボード)47位、イギリス26位



コメント (12)
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