「木曽路は全て山の中である、、、」で始まる島崎藤村の「夜明け前」の舞台に
なった馬籠の夕景です。今年のお正月、30余年ぶりに訪れました。大雪の奈良
吉野の実家を朝出て、夕刻についたところが、こちらは雪の気配がなく、拍子抜
けでしたが、やはり寒い峠の宿場でした。
泊まった宿「但馬屋」さん。この馬籠も次の宿妻籠もそうですが、全く江戸時代
のままに復元されています。電線は地中に埋められ、自動販売機など影もあり
ません。鉄道が通り、人の流れが変わって寂れていく地元をなんとか観光で立
て直そうとがんばった人々の努力で、見事に藤村の時代の宿場が蘇っています。
ちょっと整然とし過ぎて映画のセットのような気がしないでもありませんでしたが。
実は以前にここを訪れたのは、万葉集研究でで有名な今は亡き犬養孝先生とご
一緒の「藤村の旅」でした。まだ学生だった頃の話です。藤村縁のお寺で「夜明
け前」の一場面を劇にして上演したのですが、なんと私は主人公青山半蔵の母
親役で出演したのです!
今回一緒に訪れた夫とまだ会ってもいない遠い昭和の話です。宿場の急坂を登
りながら、デジャヴというのでしょうか、不思議な気分になりました。
翌日は良い天気。欧米向けのガイドブックに出ているのでしょうか、外国人
(アジア人以外)の観光客の姿が多く目につきました。昔の日本にタイムス
リップしたような気分が味わえるからでしょうか。このあたりの中山道沿い
のトレッキングが人気のようです。