エミリ・ディキンスン家のネズミ | |
エリザベス・スパイアーズ | |
みすず書房 |
花を買いたいといわれても、
花を売るなんてできません。
じゃ、貸してといわれるなら、
お貸しします。
村の家の軒下で、ラッパズイセンが、
帽子をぬぎ、
ミツバチたちが、じぶんたちの、
白ワインや、シェリー酒をもとめて、
クローバー畑に集まってくるまで、
そうね、それまでなら、お貸しします。
でも、それ以上は、一時間だってだめ!
エミリーディキンスン(花を買いたいといわれても、134)
長田弘訳
米国の詩人エミリー・ディキンスンの家に住み着いた詩人ネズミの視点から描いた
いわばディキンスン伝です。"Hope is the thing with feathers"や"I am nobody
,Who are you?..."「希望には羽がある」や「私は誰でもない、あなたは誰?」など
どこかで聞いたことのある詩の作者であるこの女性、生涯ほとんど家から出たこ
とがなかったという元祖オタクみたいな人ですが、今やアメリカの国民的詩人です。
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そのエミリ・ディキンソンと彼女の部屋に住み着いたネズミのエマラインの詩に
よる交流という、なかなか斬新な、魅力的なお話です。表紙の絵と挿絵がとても
すてき。ネズミとの詩のやり取りとはおとぎ話のようなお話ですが、それ以外は
非常に史実に忠実に描かれているらしいです。生前彼女の詩はほとんど公開さ
れていず、家からほとんど外に出ることもなかったのに、彼女の住むアマストで
は人々に敬愛されていたとのこと。
この『エミリ・ディキンスン家のネズミ』は、のような人となりが鮮やかに浮か
び上がってくる愛すべき一編です。