キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

カレン・アームストロング-現代において宗教とは?

2012-01-14 21:14:21 | 
      新年早々国連環境計画の青年向け雑誌Tunzaの記事を訳しました。それは

      カレン・アームストロングさんへのインタビューでした。"Start with yourself"

      (自分から始めよう)というタイトルで、環境問題に関しても、人にとやかく

      言う前に、自分から行動を起こそうという、当たり前といえば当たり前の提

      言でしたが、宗教家として立場からのその言葉は説得力がありました。寡

      聞にして、彼女のことは全く知らなかったのですが、興味を覚え、図書館で

      彼女の本を借りて読んでみました。  
 

神の歴史―ユダヤ・キリスト・イスラーム教全史 (ポテンティア叢書)
Karen Armstrong,高尾 利数
柏書房
      カレン・アームストロングさんは有名な比較宗教学者です。10代で修道女となり

      7年間をすごしますが、その後オックスフォード大学に入学、結局還俗します。

      瀬戸内寂聴さんの反対を行っているような人ですが、その究極の思想は同じ

      ではないかと思います。2009年に彼女が発起人となり、世界中の宗教者によっ

      て『思いやりの憲章』が起草されました。「あなたがしてほしくないことは、

      人にもするな」というどんな宗教にも共通するいわゆる『黄金律』を基にした

      「思いやりを取り戻そう」と呼びかける訴えです。

狭き門を通って―「神」からの離脱
Karen Armstrong,たかもり ゆか
柏書房


     "belief"という言葉、「信じること」「信仰」という意味ですが、本来は「愛する」

     という意味だったとか。それが近代になって宗教の「信じ込み」(彼女の説によ

     れば)になってしまったと。宗教というのは元々神へ信仰を強制するものでは

     なく、「あなたのしてほしくないことは、人にもするな」とうような生活実践規範

     だったと彼女は言います。どの宗教もそう。他人を思いやって、仲良く生きるこ

     と、それが宗教の第一の教えだと。

     『神の歴史』はユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それに仏教やヒンドュー教、

     儒教その他も網羅した大部の世界宗教の解説書です。特にイスラム教につい

     ての造詣が深く、「原理主義宗教は現代文化に対する反応でありその産物だ」

     という説を唱えています。どの宗教も公平かつ冷静に分析しているので、一つ

     の宗教の立場から見ると、不満を覚える著書かもしれません。大部で多少忍

     耐は要りますが、読んで損のない作品です。作者のカレン・アームストロング

     は、「神」を見失った現代人に、もっとも単純でもっとも根源的な、生きとし生け

     るもの、地球上のすべてのものへの「思いやり」と「尊敬」を取り戻そうと説く

     聡明で愛情豊かな元修道女の女性です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする