キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

塩野七生の三部作:どっぷりイタリア

2012-01-28 10:50:01 | 
黄金のローマ―法王庁殺人事件 (朝日文芸文庫)
塩野 七生
朝日新聞社
緋色のヴェネツィア―聖(サン)マルコ殺人事件 (朝日文芸文庫)
塩野 七生
朝日新聞
銀色のフィレンツェ―メディチ家殺人事件 (朝日文芸文庫)
塩野 七生
朝日新聞


       イタリア名誉市民の塩野七生さんは、多分イタリアについて、イタリア人

       よりずっと詳しい人。イタリアの歴史についてたくさんの著作があります

       が、そのうち「殺人事件」という題名のついた三部作を読み返しました。

       ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマを舞台に、マルコ・ダンドロという架空

       の(ダンドロ家自体はヴェネツイアの名家で、ヴェネツアの元首を何人

       も出しているが)人物が、ほとんどが実在した人々と絡み合って織りなす

       歴史絵巻です。この三冊を読めば、16世紀半ばの三都市の様子がまる

       で、自分の目で見たかのようにまざまざと想像できます。「面白くて、漫

       画みたいにすらすら読めちゃった」なんていう感想を書いていた人もい

       ましたが、ほんとに一気に読めます。しかも、当時の社会、政体、経済、

       外交などのしっかり咀嚼された膨大な知識に裏打ちされているので、

       安心して物語の世界に入り込めます。でも「殺人事件」と銘打っていても、

       いわゆる推理物ではないので、それは期待しない方が良いでしょう。

       

       ヴェネツイアの元首(ドージェ)の息子に生まれ、オスマントルコの高

       官に上り詰めながら、非業の死を遂げるマルコの友アルヴィーゼ・グリ

       ッティと謎の高級遊女オリンピアが心に残ります。

       

       文庫本の表紙が素敵です。『緋色のヴェネツイア-聖マルコ殺人事件』

       はティツィアーノの『灰色の目の男の肖像』、これは主人公のマルコ・ダ

       ンドロのイメージでしょうか、それともアルヴィーゼ・グリッティか?

       『銀色のフィレンツェ-メディチ家殺人事件』は有名なボッティチェッリ

       の『プリマヴェーラ』の一部。物語の中では、ロレンツィーノ・メディチ

       の別荘に所蔵されていることになっています。『黄金のローマ-法王

       庁殺人事件』は、ティツィアーノの『ウルビーノのビーナス』。これは、

       物語では遊女オリンピアが自分を描かせたものという設定です。どの

       絵もフィレンツェに行けば見ることができます。行きたいな。
コメント
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