母の手を迎ふる竜田姫絢爛 岡本紗矢句集「午後の向日葵」より
もみじの美しい季節に逝った母に捧げる妹の句です。竜田姫は秋をつか
さどる女神さま。女神のおわす竜田山からそう遠くない、この奈良吉野
の地で父も母も生まれ、逝きました。
父の十三回忌、母の三回忌で帰った故郷は、色鮮やかな美しい季節でした。
家の裏の白倉山も一年で一番華やかな装いです。
お宮のイチョウも、てっぺんの方はもうだいぶ葉を落としています。
夏は青々と、秋は黄金色に、冬は葉を落として寒々と、帰省する度
に、そのときどきの姿を見せてくれます。左に見える吉野杉の木肌
の美しいこと。
温暖な地方とはいえ、山深いこの辺りはこれから朝晩どんどん冷
え込んできます。ふるさとの秋を詠った古の歌が思い出されます。
み吉野の山の秋風さ夜ふけて ふるさと寒く衣うつなり
新古今集 参議雅経