キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

熊野行--白浜・紺碧の海と南方熊楠

2017-10-10 06:18:57 | 旅行
                

                こんなに青い海と空を見たのは、初めてのような気がします。ここは温泉

                で名高い南紀白浜の景勝地、三段壁です。高さ50メートル以上の岸壁が

                2キロも続いています。地下36メートルまで岩をくり抜いたエレベーターが

                通じていて、そこに海へと通じる洞窟があり、波が迫力満点に打ち寄せる

                光景を見ることができます。

                

                洞窟はイタリアの青の洞窟を彷彿とさせる自然の驚異ですが、エレベーター

                を作るには大変な費用が要ったのでしょうね。地上の乗り場は恐ろしく俗っ

                ぽい雰囲気で、大音響の音楽がかかり、商魂たくましいスタッフがエレベー

                ターへと恵比須顔で客を誘っていました。下へ降りると記念写真を撮られ、

                (もちろん買う買わないは自由ですが)結構大勢が買っている様子でした。

                

                下には、中国風のお堂まであります。昔ここで結ばれることが叶わず海に

                に身を投げたカップルがいたとかで、恋人の聖地にもなっているようです。

                自然のすばらしい造形を、人間がとことん利用しようとする感じにちょっ

                と辟易した私です。

                

                それに比べて、すぐ近くの国の名勝千畳敷では、その名の通り広い岩畳が

                紺碧の海に向かって突き出している壮大な景色が楽しめました。 

                

                昼食にと、近くの大きな魚市場へ行き、おいしいお寿司を食べました。

                こんな場所が大賑わいで俗っぽいのは、大歓迎。こと食欲となるとね。

                勝手なものです。空もこの日は海のように真っ青。What a grand day!

                

                

                藍色、紺色、紺青、瑠璃色、紺碧、海の青を表す言葉は色々ありますが

                この海はどれにあたるのでしょう。黒潮の太平洋の濃青の海が、これま

                た青い空の下に果てしなく広がっています。

                

                岬の突端にある南方熊楠の記念館へ行きました。熊楠は「知の巨人」と

                称され近年その真価が認識されてきた和歌山出身の博物学者です。知

                れば知るほど、その偉大さとまた変人ぶりがわかる面白い博物館でした。

                

                キノコみたいだけど、動物のように動く性質を持つ極小の生物「粘菌」

                研究の泰斗であり、また民俗学者でもあり、若いころから欧米に出て、数

                カ国語を自在に操ったと言います。科学雑誌「ネイチャー」への数々の寄

                稿、その他膨大な文献資料を残しています。生物学者であった昭和天皇に

                請われて、近くの上島で進講を行ったそうで、その思い出を天皇が詠った

                碑がありました。

                

                

                博物館の屋上からは四方八方の海が見渡せました。こちらの方向が、アメ

                リカ、あちら多がヨーロッパと手すりに表示され、ああ、この青い海を越え

                て開国間もない日本から、明治時代に熊楠が単身日本の科学の道を切り

                開いていったのだなと、感慨深く眺めました。

                
コメント
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