ちょうど1年前の今頃、夫と娘とともにイギリスのソールズベリを訪れました。
英語でいうと「ポッシュなposh」というのでしょうか、ちょっと気取った
感じのしゃべり方をするベテランおばちゃんガイドに連れられて、ヨ
ーロッパで2番目に高いというソールズベリ大聖堂を見物しました。
レンガ造りの家々が並ぶ町が秋色に染まって、この上なくシックで、落ち着
いた美しさが漂うすてきなところでした。でも、その時はストーン・ヘンジや
バースにも行ったのに、今なぜにソールズベリをと言うと、カズオ・イシグロ
の「日の名残りThe remains of the day」を読んだからなんです。
日の名残り (ハヤカワepi文庫) | |
Kazuo Ishiguro,土屋 政雄 | |
早川書房 |
ソールズベリは「どの通りも広々として風がよく通り、町全体に素晴らしく
ゆったりした感じを与えていました。」土屋政雄訳「日の名残り」より。
物語は主人公である由緒あるダーリントンホールの執事スティーブンス
が自動車旅行に出て初めて宿泊したのがソールズベリという設定です。
カズオ・イシグロのこの本のおかげで、1年前のソールズベリの風景が蘇り
ました。もちろん、彼がノーベル賞を取ったということで、ミーハー的な気持
で読み返したのですが、面白かった!時代遅れで堅物の主人公の一人称
語りで、自分を弁護、正当化しようと躍起になって弁を弄するのですが、敗
北感と後悔がどんどんにじみ出てくる。最後には出会ったばかりの老人の
前で泣いてしまいます。するとその老人が言うんです「、、、後ろばかり振り
向いているから気が滅入るんだよ。、、、人生楽しまなくっちゃ。夕方が一日
でいちばんいい時間なんだよ、、、」土屋政雄訳「日の名残り」より。