★ベルの徒然なるままに★

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映画『RENT/レント』

2006年05月07日 | 映画鑑賞記
ミュージカル映画『RENT』を見てきました。

『ハリーポッターと賢者の石』でお馴染みの、クリス・コロンバス監督の映画です。

最近、『プロデューサーズ』などブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品がとても多いですが、この『RENT』も、ブロードウェイの映画化です。
とはいえ、『プロデューサーズ』や『オペラ座の怪人』などの、いわゆる典型的な古典的ミュージカルとは少し違う感じなんですよね。

この『RENT』という作品は1980年代のアメリカ・ニューヨークに蔓延していた、ドラッグやエイズ、貧困を描いたミュージカルなんです。そういう意味では、テーマはとても重く、深刻です。
ですが、それを「ミュージカル」にしている点で、少しソフトに、そして、取っつきやすく理解しやすい出来になっていると思いました。

舞台は1989年のクリスマスから1990年のクリスマスまでの一年間。
この一年間・・・365日・・・525600分の時間。
この525600分の時間の中で、貧しくも理想を持った、若い芸術家達が、貧困やドラッグへの誘惑、そしてエイズ発病の恐怖と闘いながらも、懸命に生きる姿が描かれます。

映画の冒頭で『Seasons of Love』という歌を、メイン登場人物がステージに一列に並び歌うシーンがあります。
「525600分という時間を、あなたはどうやって数えますか? 夜明けの数? モーニングコーヒーの数? 夜の数? 恋人とのキスの数?」
という感じで、1年間という時を、とても大切にした歌なんですが、この物語を見る内に、この歌の歌詞の重みがヒシヒシと分かってくるんですね。

1989年のクリスマス。
ニューヨーク42番街。若くて貧しい芸術家の卵達が集う場所。

ドキュメンタリー映画の監督を目指すマーク。
マークの同居人で、恋人をエイズで亡くしたミュージシャンのロジャー。彼自身もHIVに感染しています。
そして、マークとロジャーの階下に住む、ストリッパーのミミ。彼女も、HIV感染者です。
また、マークの別れた恋人でレズビアンの歌手モーリーンに、その恋人の女弁護士のジョアンヌ。
マークとロジャーの親友で、ゲイの大学教授コリンズに、彼とクリスマスの夜、運命の恋に落ちた、女装の男性エンジェル。彼らもまた、HIV感染者であります。

家賃も払えないどころか、寒さをしのぐ暖房代すらない彼らが、貧しさ、ドラックへの誘惑、HIVの恐怖、世間からの偏見を感じながらも、「自分らしさ」や「自由」を得るために、必死で生きるのです。そして、そこには、色んな愛や、その葛藤が見られます。

今の、日本人の私たちには、正直、少し理解というか、想像しがたい登場人物達の日常と環境です。
ひったくりや暴動が横行し、ごく普通に簡単にドラッグが買えちゃったり。
そういう環境を知らない私にとっては、簡単に「共感」という言葉は使えませんでした。
でしたが、「精一杯誰かを愛すること」、「ひたむきなほどに夢を大切にすること」、そして、「今のこの瞬間の時間を大切に生きること」。何より「自分の尊厳を守ること」。
これらが、生きる上でどれほど大切なものなのかが伝わってきました。
平和な日々に、ボ~と生きている自分は、時間のロスをしているのかもしれないなぁとちょっと反省してみたり。
もっと、「生きる」ということを大切にしてみたいなぁと思ったりしました。

因みに、この『RENT』は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』が原作だそうです。
ただ、『ラ・ボエーム』では、当然のことながら、時代はもっと古く、そして舞台はパリ。パリに住む貧しく若き芸術家達の物語だそうです。そして、彼らを苦しめる病魔は結核。

舞台をニューヨークにし、エイズを取り扱った点で、現在進行形の生きたミュージカルになっているのですね。
ちょっと「重い」テーマなので、気楽に楽しめるミュージカル・・・ではありませんが、でも、とてもメッセージ性の強い映画なので、興味のある方は是非是非♪