



10月17日(土)浜田市世界こども美術館 ナビゲーター 春日美由紀
鑑賞作品 孔雀鳩(石本 正) PEACE & BIRD(天津 恵)
今期のコレクション室の作品は小品の展示が多いので、1作品で30分の鑑賞を行うのはやや場が持たないと判断し、2作品を鑑賞することにした。
2作品鑑賞するとしたら、作品間に何かつながりがある方が深まるので、関連性のある作品を探した。この日もう一人のナビである房野さんが風景作品を選択したので、その作品以外から関連性のある作品を2作品ずつ選んだ。ひとつめは「静物」つながり、ふたつ目は「鳥」つながりで、どちらか迷ったので、参加される方に鑑賞したい方を選んでいただくことにした。
鑑賞参加者はみるみる会員4名と常連の男性、小学低学年の女の子を伴ったお母さんの7名。最初に「静物」がよいか「鳥」がよいかを尋ねたところ「鳥」に挙手した方が多数だったので「鳥」を鑑賞することにした。作品は画像で確認してほしい。
最初は石本正氏の「孔雀鳩」から鑑賞した。こちらの作品の方が具象的で描かれているものが分かりやすいので、2作品みる時には、話しやすいと判断したためである。
2羽の白い鳥が描かれているが「ハト」だとフォルムで分かる。上の1羽はうずくまり下の1羽は立ち、同じ方向を向いている。この動作から上のハトが卵を温めているのではないか。下の一羽がそれを守っているのではないか。という意見が出た。特に下の1羽の方が首の傾げ方やくちばしの方向でやや戦闘的(威嚇的)にみえるという意見が出た。また、尾羽の描線が鋭角的な部分もみられ、今にも羽を広げそうなところからも威嚇するような緊張感が感じられるという意見も出て、目線の先には何か危険なものがいるのではないか、という意見に参加者全員が同意した。まだまだ背景の様子など話し合える要素はたくさんあったが、ここまでで12分を経過していたので、2作品目の天津恵氏の「PEACE & BIRD」に移ることにした。
作品はやや抽象度が高く、鮮やかな色面で構成されている。中央部に向き合うように鳥ではないかと思われる形状のものが描かれている。この作品も始めにじっくりとみていただいた。みた後に「どなたからでも。何からでも。」と声をかけて始めたが、しばらく沈黙が続いた。その時、小学生の女の子が恥ずかしそうに話し始めた。
「真ん中に2羽の鳥がいて、左側のは色が薄くてなんか生きていないみたいだけど、右側の鳥の方がくちばしが下に向いているから動きがあって、生きていると思う。」というちょっと衝撃的な発言に触発されて対話が始まった。幾何学的に分割された面が様々な色で塗られているが、そのことについても「朝と夜」や「山と海」「暖かそうと寒そう」など、対比的な要素を含んでいるのではないかという意見が多く出された。
また、途中で作品の左端に描かれている2つの半円状のものについての意見を求めたところ、女の子から「太陽と月」という発言も出され、2つの要素が複雑に組み合わされ、「生と死」をも表そうとしているのではないかという意見まで出た。
描かれている要素について多くの意見が出されたが「そこからどう思う」までは辿り着かずに時間切れとなったが、小品でも十分に対話できることを実感することの出来るよい機会になった。
ナビ後の振り返りでは、左端に描かれた半円状のものについて語られていなかったので、そのことについて意見を求めたのはよかったという評価があったが、語られていないものについて、ナビが発言を求めるのは「アリ」だと思った。また、今回この作品を選んだことによって、抽象度の高い作品でどんなトークが行われるのか興味があったが、参加者がみんなしっかりと考えて色や形から様々な読み取りをしていくことができることも分かったので、挑戦した甲斐があったと感じた。今後はナビのスキルを上げるためにも、もっと抽象度の高い作品にチャレンジしていきたいと思う。
RICHな会話で楽しいひと時を過ごさせてくださった鑑賞者の皆様に感謝です。