加納莞蕾大回顧展 対話型鑑賞会 2019.6.2.Sat.
河岸 1933年
鑑賞者 10名
ナビゲーター:春日美由紀
A室に展示されているこの作品は100号ほどの大きさがあり、大作です。参加者が10名を超えると予想されたので、大きな作品の方が「みて語る」のに相応しいと考えて選びました。今回2回目の対話型鑑賞会だったので、2Fにある墨画も視野に入れていましたが、この日は団体の来館者が多く、大人数の鑑賞者が2Fまで移動するリスクを回避し、1作品目と同じ展示室にあるこの作品にしました。また、1作品目が「人物」が描かれているものなので、2作品目は「風景画」と描く対象物の異なる作品にしました。

画像をご覧いただければお分かりのように、断崖のある海岸風景です。太い筆で一見大胆に描かれているようにみえるこの作品から鑑賞者の皆さんはどんなことを語ってくださるのか、楽しみに鑑賞会を始めました。
最初にじっくりとみていただき、その後、作品から受けた印象や感じたこと、考えたことを自由に話していただくよう、声をかけました。
「勢いがある」タッチの大胆さから。
「色づかいのコントラスト、赤茶と緑」エネルギーを感じる。力強さ。補色配色から。
「崖の勢いと海の繊細さの対比」タッチの違い。海は丁寧に塗り重ねられている。
「構図が循環している」崖から湾のカーブのラインまでが連続してみえる。
など、描かれ方や色づかいから、力強さや勢い、エネルギーを感じる発言が出ました。
また、そこから
「季節はいつなのか?」
「湾の奥にある白く四角く塗られているものは何なのか?」
「崖の上の黒い四角く見えるものは何なのか?」
などの疑問も生まれました。
そこで、皆さんなりの見解をお話ししていただきました。
季節は
「色(緑・赤茶・黄色)から秋」
「家の屋根が白いから、冬」
「でも、屋根が白くて、冬みたいだけど、海の色は冬っぽくない」
「初冬?秋の終わりから、冬の初め。風が強くて、雪は吹き飛ばされている」
などの意見が出ました。そんな中
「特定の季節の場面を描いたものでは無いのではないか。」という意見が出ました。「この絵を描いた画家は、この景色が好きで、描いていたら、画家のイメージの中にある風景になったのではないか。だから、春夏秋冬が混在しているようにもみえるのでは?」という意見で、この発言を聴いた、他の鑑賞者が「なんだか、もやもやして、自分の中で、この景色について統合できずにいたけれど、今の話を聞いて、何だか胸のつかえが下りたようで、すっきりした。」という発言が出ました。

湾の奥の白く塗られているものは何なのか?
「船小屋」
「人家」
などの意見が出されましたが、ナビ(※1)の確認があいまいで、特定しきれなかったのが悔やまれます。キャプションには「河岸」とあるので、「人家」ではなく「船小屋」だったかもしれませんし、「人家」も「船小屋」もあったのかも知れません。鑑賞者の皆さんがどのように考えていたのかをフォーカシング(※2)(焦点化)して鑑賞し、確認していく過程を怠ったのはナビの不手際と反省するところです。
※1 ナビゲーターの省略。以下同様に表記。
※2 一か所にスポットライトを当てたように、そこをみんなでみていくこと。
崖の上の黒い四角のようにみえるものは何なのか?
「向こうにも入り江があって、崖がある。」という山陰海岸独特の地形として捉えた発言が出ました。この意見に同調する方もいらっしゃいました。
「お気に入りの風景を遊び心も加えながら描いたのではないか?作品として完成させていくにあたって、全体のバランスを見ながら、あそこに何かあった方が落ち着くといった感じで描いてみたのではないか。」
という意見も出ました。
また、この時には出なかったのですが
「描かれた時期が、太平洋戦争に突入する前だったので、日本海の守りも大事だったと思うので、監視施設のようなものがあったのではないか?あまりにきれいな四角形なので、建物のようにみえる。」
という意見もありました。

最後に、ナビも鑑賞者の一人として、自分の考えたこと「自然の大きな力と、そこにささやかに暮らしているであろう人々の家々を、雲間から差す一筋の光が照らしていることから、この光景を、画家が好ましく感じていたように思います。」と話して締めくくりました。
振り返り
参加者の感想
〇鑑賞する側が、それぞれに自分なりの見方で、こう見える、実はこうではないか?とか、これは何を意味するものなのか?とか、自分の思いや疑問を自由に話したり、また別の人の考えを聞いたりと、決めつけのない自由な対話をすることで、お互いが自分にない見方や思いを学べる実に画期的な鑑賞会でした。なるほど!!と感心しきり。これは、癖になりそうです。
〇描かれているものから受け取るイメージが、誰も大きくブレることはなかったので、そのことについて自由に話すことができました。
〇自分がモヤモヤしていた時、ほかの人の発言(意見)で、スッキリできて、こういう鑑賞もよいなと思いました。
○風景画からあそこまで各自が思い思いに解釈をできたのは、話しやすいムード作りや、作品の「フォーヴィズム(※3)(野獣派)」に呼応するようなナビのジェスチャーが効果的だったのでは?と思います。端的にいえば、楽しく、迫力のあるナビだったと思います。解釈を深める「そこからどう思う?」については、最後にナビ自身の解釈を述べたことが、鑑賞者が色々出した意見を深めるパラフレーズとなっていたと思います。
※3 20世紀初頭の絵画運動のひとつ。フォーヴィズム(野獣派)。1905年、パリのサロン・ドートンヌに出品された一群の作品の、原色を多用した強烈な色彩と激しいタッチから「あたかも野獣(フォーヴ)の檻の中にいるようだ。」と批評家ルイ・ボークセルが評したことから命名された。
ナビ自身の振り返り
〇白いものは何か?について、「人家」「船小屋」などの意見が出た時に、フォーカシングして確認できなかったのは、本当に残念でした。
〇意見が、次から次へと出たので、フォーカシング(焦点化)したり小まとめしたりのタイミングを逃してしまったので、対話が散漫になったような気がしています。大きな絵だったので、背景からみて、空の様子や、海の様子、陸にあるものについて、など、区分けしながらよくみていくと、また違った解釈が生まれたかもしれません。そこが、ナビとして不十分だったかな?と悔やまれるところです。
しかし、参加してくださった皆様に1回以上、語っていただけたことは、この鑑賞会のめざすところで、何よりの収穫でした。
参加いただきました皆様、ありがとうございました。
次回の加納美術館での実践は安部さんの人形展です。お楽しみに!!
【みるみるの会からのお知らせ】
浜田市世界こども美術館「橋本弘安展」にて鑑賞会を行います。

対話型鑑賞のつどい「 “みるみる”とみて話そう 」
6月15日(土)、29日(土) 14:00~15:00 【5階 展示室】
展覧会の作品について、語り合いながら鑑賞します。
〇当日自由にどなたでもご参加いただけます。
◆展覧会の観覧料が必要です
河岸 1933年
鑑賞者 10名
ナビゲーター:春日美由紀
A室に展示されているこの作品は100号ほどの大きさがあり、大作です。参加者が10名を超えると予想されたので、大きな作品の方が「みて語る」のに相応しいと考えて選びました。今回2回目の対話型鑑賞会だったので、2Fにある墨画も視野に入れていましたが、この日は団体の来館者が多く、大人数の鑑賞者が2Fまで移動するリスクを回避し、1作品目と同じ展示室にあるこの作品にしました。また、1作品目が「人物」が描かれているものなので、2作品目は「風景画」と描く対象物の異なる作品にしました。

画像をご覧いただければお分かりのように、断崖のある海岸風景です。太い筆で一見大胆に描かれているようにみえるこの作品から鑑賞者の皆さんはどんなことを語ってくださるのか、楽しみに鑑賞会を始めました。
最初にじっくりとみていただき、その後、作品から受けた印象や感じたこと、考えたことを自由に話していただくよう、声をかけました。
「勢いがある」タッチの大胆さから。
「色づかいのコントラスト、赤茶と緑」エネルギーを感じる。力強さ。補色配色から。
「崖の勢いと海の繊細さの対比」タッチの違い。海は丁寧に塗り重ねられている。
「構図が循環している」崖から湾のカーブのラインまでが連続してみえる。
など、描かれ方や色づかいから、力強さや勢い、エネルギーを感じる発言が出ました。
また、そこから
「季節はいつなのか?」
「湾の奥にある白く四角く塗られているものは何なのか?」
「崖の上の黒い四角く見えるものは何なのか?」
などの疑問も生まれました。
そこで、皆さんなりの見解をお話ししていただきました。
季節は
「色(緑・赤茶・黄色)から秋」
「家の屋根が白いから、冬」
「でも、屋根が白くて、冬みたいだけど、海の色は冬っぽくない」
「初冬?秋の終わりから、冬の初め。風が強くて、雪は吹き飛ばされている」
などの意見が出ました。そんな中
「特定の季節の場面を描いたものでは無いのではないか。」という意見が出ました。「この絵を描いた画家は、この景色が好きで、描いていたら、画家のイメージの中にある風景になったのではないか。だから、春夏秋冬が混在しているようにもみえるのでは?」という意見で、この発言を聴いた、他の鑑賞者が「なんだか、もやもやして、自分の中で、この景色について統合できずにいたけれど、今の話を聞いて、何だか胸のつかえが下りたようで、すっきりした。」という発言が出ました。

湾の奥の白く塗られているものは何なのか?
「船小屋」
「人家」
などの意見が出されましたが、ナビ(※1)の確認があいまいで、特定しきれなかったのが悔やまれます。キャプションには「河岸」とあるので、「人家」ではなく「船小屋」だったかもしれませんし、「人家」も「船小屋」もあったのかも知れません。鑑賞者の皆さんがどのように考えていたのかをフォーカシング(※2)(焦点化)して鑑賞し、確認していく過程を怠ったのはナビの不手際と反省するところです。
※1 ナビゲーターの省略。以下同様に表記。
※2 一か所にスポットライトを当てたように、そこをみんなでみていくこと。
崖の上の黒い四角のようにみえるものは何なのか?
「向こうにも入り江があって、崖がある。」という山陰海岸独特の地形として捉えた発言が出ました。この意見に同調する方もいらっしゃいました。
「お気に入りの風景を遊び心も加えながら描いたのではないか?作品として完成させていくにあたって、全体のバランスを見ながら、あそこに何かあった方が落ち着くといった感じで描いてみたのではないか。」
という意見も出ました。
また、この時には出なかったのですが
「描かれた時期が、太平洋戦争に突入する前だったので、日本海の守りも大事だったと思うので、監視施設のようなものがあったのではないか?あまりにきれいな四角形なので、建物のようにみえる。」
という意見もありました。

最後に、ナビも鑑賞者の一人として、自分の考えたこと「自然の大きな力と、そこにささやかに暮らしているであろう人々の家々を、雲間から差す一筋の光が照らしていることから、この光景を、画家が好ましく感じていたように思います。」と話して締めくくりました。
振り返り
参加者の感想
〇鑑賞する側が、それぞれに自分なりの見方で、こう見える、実はこうではないか?とか、これは何を意味するものなのか?とか、自分の思いや疑問を自由に話したり、また別の人の考えを聞いたりと、決めつけのない自由な対話をすることで、お互いが自分にない見方や思いを学べる実に画期的な鑑賞会でした。なるほど!!と感心しきり。これは、癖になりそうです。
〇描かれているものから受け取るイメージが、誰も大きくブレることはなかったので、そのことについて自由に話すことができました。
〇自分がモヤモヤしていた時、ほかの人の発言(意見)で、スッキリできて、こういう鑑賞もよいなと思いました。
○風景画からあそこまで各自が思い思いに解釈をできたのは、話しやすいムード作りや、作品の「フォーヴィズム(※3)(野獣派)」に呼応するようなナビのジェスチャーが効果的だったのでは?と思います。端的にいえば、楽しく、迫力のあるナビだったと思います。解釈を深める「そこからどう思う?」については、最後にナビ自身の解釈を述べたことが、鑑賞者が色々出した意見を深めるパラフレーズとなっていたと思います。
※3 20世紀初頭の絵画運動のひとつ。フォーヴィズム(野獣派)。1905年、パリのサロン・ドートンヌに出品された一群の作品の、原色を多用した強烈な色彩と激しいタッチから「あたかも野獣(フォーヴ)の檻の中にいるようだ。」と批評家ルイ・ボークセルが評したことから命名された。
ナビ自身の振り返り
〇白いものは何か?について、「人家」「船小屋」などの意見が出た時に、フォーカシングして確認できなかったのは、本当に残念でした。
〇意見が、次から次へと出たので、フォーカシング(焦点化)したり小まとめしたりのタイミングを逃してしまったので、対話が散漫になったような気がしています。大きな絵だったので、背景からみて、空の様子や、海の様子、陸にあるものについて、など、区分けしながらよくみていくと、また違った解釈が生まれたかもしれません。そこが、ナビとして不十分だったかな?と悔やまれるところです。
しかし、参加してくださった皆様に1回以上、語っていただけたことは、この鑑賞会のめざすところで、何よりの収穫でした。
参加いただきました皆様、ありがとうございました。
次回の加納美術館での実践は安部さんの人形展です。お楽しみに!!
【みるみるの会からのお知らせ】
浜田市世界こども美術館「橋本弘安展」にて鑑賞会を行います。

対話型鑑賞のつどい「 “みるみる”とみて話そう 」
6月15日(土)、29日(土) 14:00~15:00 【5階 展示室】
展覧会の作品について、語り合いながら鑑賞します。
〇当日自由にどなたでもご参加いただけます。
◆展覧会の観覧料が必要です