ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

こどももオトナもいっしょにみました!!

2024-09-16 17:55:09 | 対話型鑑賞

みるみるの会9月例会① 海とあそぶアート展

美術館HP   https://www.hamada-kodomo-art.com/

日時:2024年9月15日(日)11:00~11:20

場所:浜田市世界こども美術館 

1作品目

鑑賞作品「海を守るクジラとカメ」 作家:sobolon(ソボロン)

参加者:幼児(4歳くらい)~孫と一緒のお祖母さんまでこどもとオトナ約10名+みるみるメンバー1名)

ファシリテーター:春日美由紀

作品選定の理由

 7月13日から開催されているこの企画展で私たち「みるみるの会」の月例会を開催するのは3回目となる。

 7月の月例会に参加したが、夏休みに入ったばかりの日曜日で、多くの家族連れで賑わっており、企画展会場でアート鑑賞会を行うスペースを確保するのは困難だなと感じたことを覚えている。それでもと開始前に会場にいた皆さんに参加を呼びかけたが、皆、思い思いの活動に向き合っていて飛び入りの参加者はおられなかったので、オトナだけでの鑑賞会を行ったのは先の嶽野さんのレポートの通りである。

 8月も同様の状況だったことを津室さんのレポートが伝えている。

 長期にわたったこの企画展は来館者参加型となっている。特に子どもにはワクワクする仕掛けがいたるところにある。その活動に参加している我が子の様子を画像に収めたり、一緒に取り組んだりするオトナ(親)の姿が多くみられたので、最終回となる9月はなんとか、今日この時間にこの会場にいる子どもたちに参加して欲しいと考え、会場を何度も見回った。5階のスロープを下った先にある部屋の奥にはテーブルと椅子があり、子どもたちが万華鏡を作ったり、テーブルに海から拾ってきた様々な物を並べたりして楽しんでいた。そこの部屋の壁には大きな作品が2つ並べて展示してある。この作品は、はっきりとした色調でクジラやカメ、魚たちが海の中で泳いでいるようにみえる。クジラやカメ、魚は分かりやすい形態をしており、そのもの自体が大きいので、ちょっと離れたテーブルからもよくみえるし、テーブルで活動に取り組んでいても、声をかければ手を止めて、考えたり、話したりしてくれるのではないかと考え、作品というより、この場所でやろうと決めた。

鑑賞会の様子

 5階のエレベーターホールから「今から、この下の部屋で、みんなでおしゃべりしながら作品をみていこうという会をやりますので、よろしかったら参加しませんか?子どもさん大歓迎です。もちろん親さんも、ご一緒に。いかがですか?」と声をかけた。1度だけでなく、スロープの中ほど、下、でも同様の声かけをした。会場となるスペースに着いた時にも声かけをした。ありがたいことに、部屋の奥には子どもたちがたくさんいて、各々の活動に取り組んでいた。傍らに親さんの姿もあった。声かけに誘われて移動して来てくださった家族の姿もあった。また、テーブルについていた親子さんも声かけに反応してくださったので始めることにした。

 「今から、この壁にあるこの作品について、みつけたことや感じたこと、パッとみたときの印象とか話してもらいたいなと思います。しばらく時間を取りますので、ちょっとじっくりみてください。」と声を張って伝えた。その部屋にいた総ての人が、ちょっと身を乗り出すような感じで会場がすこし「シン」とした。その空気感にうまくいきそうな手応えを感じた。

 「いかがですか?みつけたものとか、感じたことはないですか?」と始めた。

 「カメがいる。」4~5歳くらいの女の子が言う。

 「どこにカメがいるかな?」

 「あそこ。」と指さす。

 「魚がいる。」と、男の子。

 「どこにいる?」

 「あそこ。目がペットボトルのキャップ」とみつけたことを話す。

脈絡なく会話が進んでいったが、あまりコントロールせず、思い思いに話せる雰囲気を大切にすると、オトナも「クジラがいる」などの発言も出た。「黄色い魚」が好きだと言った男の子がいたので、

 「他にどんな色の魚がいるかな?」

 「赤い魚は何匹いる?」

 「オレンジの魚は何匹?」

 「じゃあ、魚は全部で何匹いるの?」

などと、そこにいる子どもの年齢に応じた問いを投げて、子どもたちが作品をよくみるように促した。また、

「10匹の魚の中で好きなのはどの魚?」と、みて考えることを「自分ごと」にする問いを投げ、誘われてこの部屋に来たのに隅っこの方にいるお孫さんと一緒のお祖母さんにも訊ねた。

 「あの赤い魚。」と話されたので「どこがお気に入りですか?」と重ねて尋ねると「小さいから。」と答えてくれたので「赤い魚は6匹いますが1番小さい魚がお気に入りだとお話してくださいました。」とパラフレーズした。続けて

 「魚は何でできているかな?」

 「このモノは何かな?」

と、素材に関わる問いも投げた。

 「プラスチック」と男の子が応えてくれたので

「このプラスチックは新しい?それとも古い?」と少し考える問いを投げた。しばらく考える時間が流れた。作品の脇に砂浜で回収した作品の素材となっている様々なプラスチックでできた物やゴム長靴が入れてある透明なケースが置いてあるので、そちらを示しながら

 「あの中に入っているものが、この作品の素材になったもののようです。」と紹介した。よく話してくれる男の子が駆け寄ってみてくれたので

 「何があった?」と近くに寄って訊ねると

 「プラスチックでできたものや長靴」と答えてくれた。

「これらの海から拾ってきたプラスチックなどでこのクジラやカメや魚が作られているということについて何か考えられることはないですか?ちょっと、子どもさんには難しいかも知れないので、オトナの方に考えていただけたらと思います。」と、この作品の核心になりそうなことについて最後考えてもらって終わることにしようと考えた。オトナが答えるより先に、さっきの男の子が

 「魚にもよくないから、人間にもよくない。」と言った。

 「どういうことか、もうちょっと話してくれる?」と伝えると

 「魚が食べて、その魚を人間が食べるから。」と言った。

 「プラスチックは無くならないので、簡単に捨ててはいけないな。」というオトナの声もあった。

 「今日はこの作品を皆さんとみてお話して行きましたが、海から拾った主にプラスチックで出来ているということで、このプラスチックが海やクジラ、カメ、魚とどんな関係にあるかについて、少し考えていただくことができたのかな?と、思います。ありがとうございました。」と告げて締めくくった。約20分の鑑賞だった。

振り返り

 今日の鑑賞会はそこに居合わせた子どもやオトナをどれだけ鑑賞会に巻き込むことができるか、というものだったので鑑賞の中身より

 ①活動に興味をもってもらって参加を促す。

 ②話しやすさ、何でも言える雰囲気。

 ③子どもの発言にオトナが触発される。

 ④海洋ゴミについて考えることができればよい。

で進めたので概ね成功したのではないか?と思う。終わったときに松山から来ていた男の子が「おもしろかった。」と話してくれたのが何よりの成果だったと感じている。

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