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どれからなりとおためしください

2013内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開

2013-11-17 | 宇宙

毎年恒例、「ロケットの聖地」 内之浦宇宙空間観測所の施設特別公開が今年の秋も開催されました。

内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開

今年は特に、7年ぶりの新型ロケット・イプシロンの打上げからまだ2ヶ月ほどしか経っていないので、イプシロンの打上げで噴射炎に晒されて焼き焦がされた発射場周辺の施設設備がそのままの状態で残っている非常に貴重なタイミングでの開催となります。
現地でイプシロン打上げを見守った宇宙ファンとしては、これは絶対に見逃せない!

という訳で、前日から泊りがけで内之浦に行ってきました
イプシロン誕生直後の2013年内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開レポートです!



2013年11月10日(日曜日)

どういう訳だか毎年、秋晴れとはいかず雨が降る事が多い内之浦の施設特別公開。今年も朝から小雨がぱらつく中での開催となりました。
今年は一般見学者は内之浦総合グラウンド駐車場に誘導され、そこからシャトルバスで宇宙空間観測所まで送ってもらいます。


シャトルバスの到着したM台地ロケット組立室は、既に大勢の見学者が詰めかけています。


地元・肝付町のゆるキャラ「いて丸」くんがお出迎え。

Mロケット組立室で目を引いたのがこれ。

ちょっと新幹線の先頭車を想わせる流麗なフォルム…
イプシロンロケットのフェアリングのプロトタイプモデル(試作試験品)です!
2つに分離した状態の、片割れが置かれていました。


フェアリングの中に潜り込んで見る事も出来ました。
かなり狭いです。こんな狭い空間に衛星「ひさき」は詰め込まれて、宇宙へと旅立ったんですねぇ。

少し雨脚が弱まったようなので、組立室からロケット発射装置のあるM台地へと出てみます。


M台地の一角には、産業廃棄物置き場のようになっている区画があったのですが、雨ざらしで打ち捨てられているガラクタのようなこれらはよく見るとMロケット発射装置がイプシロン打上げに対応するために改修された際に発生した先代のM-Vロケット打上げ用の機器類、すごいお宝の山です!
M-Vの第1段ロケットの根本を支えていたランチャのポッドもあります。
これ、鉄道の工場一般公開イベントの時のようにマニア向けの廃棄物オークションで放出したら、かなり人気が出るかも!?
…あ、でもどこかのアブナイ軍事国家の手に渡って兵器に開発転用される危険があるかもなぁ


こんなものもM台地に置かれています。イプシロンの第1段と第2段の継ぎ手部分のプロトタイプモデルのようです。


その横の芝生には、イプシロンロケットのフェアリングの片割れも放置中。
この横に、現在組立室で展示中のもう一方の片割れが並んで置かれていたみたいですね。それにしてもロケット関連の施設では、とんでもないシロモノを平気でそこらに置きっぱなしにしてるなぁ(笑)

Mロケット整備塔の手前には、イプシロンの第1段ロケットを運んできた台車と思われる物体がブルーシートをかけた状態で置かれていました。


ちなみにこれって…


6月に内之浦宇宙空間観測所まで搬入される途中の山道の国道で第1段ロケットを積んだまま立ち往生して、動けなくなってしまったんですよね。あの時は心配したなぁ。
(→イプシロンロケットの1段目、内之浦の国道上で立ち往生…

Mロケット整備塔の壁には、「M型ロケット発射装置」の銘板が。
イプシロンが打上げられるようになったので「E型ロケット発射装置」に改称されるのではないかと思っていたのですが、今でもM型ロケットの名称が残っていました。



新しい銘板も横に追加されています。
なるほど、M型ロケット発射装置改修(イプシロンロケット対応)という扱いになるんですね。
いかにも事務的な処理の結果という感じですが、そのおかげで名機Mロケットの名称が今も残っているのはちょっと嬉しい。


Mロケット発射装置の、ロケットランチャも間近で見ることが出来ます。これが、イプシロンの打上げで噴射炎に晒され焼き焦がされたランチャの基部です!
全体をざっと高圧水噴射で水洗いしただけの状態のようですが、高熱で焼かれたせいか表面の塗装が剥がれて、過去にM-Vロケットで打上げられた衛星たちの開発コードネームのペイントがうっすらと浮き出て読めるようになっていました。
驚くべきことに、実際には打上げられなかった月探査衛星「LUNAR-A」も読み取ることが出来ます。いつでも打上げられるように、ペイントまで完了していたんですねぇ…


ロケットランチャの海側には、噴射炎を受けるデフレクターが。
イプシロンからはデフレクターに新規で追加設置された煙道が見えています。

ここで、天候が回復したので整備塔の大扉を開いてランチャ旋回の実演が行われることに。
ランチャ旋回は内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開の一番の見どころイベントです。これは必見!






整備塔内に収納された、黒焦げのランチャ本体が姿を現しました!!

続いて、ランチャがゆっくりと旋回して外に出てきます!!




ランチャの下部に設置された、ロケット位置を嵩上げするための箱状の設備が頭上を通過していきます。
凄い迫力です!!






イプシロンの打上げから実に2ヶ月ぶりに、ロケットランチャが空の下にそびえ立ちました!
イプシロンが翔び立った時、そのままの姿です!!
それにしても、神々しいまでの黒焦げぶりです。
固体燃料ロケットの噴射炎のパワーの凄まじさを実感する、恐ろしくて痛々しくも実に頼もしい、力強いランチャの雄姿に見とれてしまいます。


ランチャの裏側から見るとこんな感じ。ランチャは見事に焼き焦げていますが、煙道部分は比較的きれいな状態のままであることが分かります。
噴射炎を海側に逃がす煙道の効果が存分に発揮されたことを物語っています。

M台地ロケット組立室クリーンルームでは、内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開のもう一つの必見イベント、
イプシロンロケットのプロジェクトマネージャー森田泰弘先生の講演会も開催されました。


イプシロンの翔び立ったその場所で行われた森田先生の講演会、とてもリラックスした雰囲気で楽しいお話をお聞きすることが出来ました。
森田先生も、大仕事を終えた後でロケットボーイの素顔のままに、イプシロン打上げまでの想い出を嬉しそうに語っておられましたよ。
僕としては特に、
「発射台に立ったイプシロンは、位置を地面から嵩上げするための私が“電話ボックス”と呼んでいる箱の上にいるのだが、その様子はまるで自分より大きかった先代のM-Vロケットに負けないように一生懸命がんばって背伸びをしているように見えました」
という言葉が印象的でした。森田先生、本当にロケットのことを慈しみ我が子のように愛してるんだなぁ…

質疑応答コーナーでは僕も質問させていただきました。

Q:イプシロンの第1段ロケットを搬入する途中、山道で輸送用トランスポーターが故障して立ち往生するという出来事がありましたが、今後のイプシロン2号機以降では第1段ロケットの搬入方法については何か改善策を考えておられますか?

A:(森田先生)あ、その件については輸送搬入担当の人がそこでマイク係をしておられますので直接聞かれて下さい。(ええっ!?(笑))

(マイク係をしておられたJAXAスタッフさん)はい、実はこの施設特別公開が終わったらすぐ、トランスポーターの対策を打ち合わせるためにイタリアに向かいます。次回は故障しないよう対策を取ります。
(筆者)それは、急勾配に対応した新しいトランスポーターを準備するということですか?
(JAXA)はい、そうです。新車を入れます。

おおっ!次回から新しい輸送用トランスポーターが使われるようですね!

Q:イプシロン初号機では機体に応援メッセージを刻むキャンペーンを行われましたが、森田先生はイプシロンの機体に刻み込まれたメッセージを直接ご覧になられましたか?

A:はい、もちろん見ています。整備塔の中でも直接読みましたし、全てのメッセージの内容をプリントアウトしたものを受け取っていますので目を通しています。

Q:実は私のメッセージもイプシロンに刻まれて一緒に乗っています。森田先生はどのようなメッセージが特に印象に残られましたか?

A:そうですね、やはり自分の夢がイプシロンと一緒に翔んでいくというメッセージは特に心に響いて、嬉しかったですね。

(筆者)あのキャンペーンは、自分の想いや心もイプシロンと一体となって翔んでいくようで、打上げを見ていてとても感動しました。お手数でしょうが、是非2号機以降でも同様のキャンペーンを続けて下さればと思います。ありがとうございました。

※この森田先生講演会の内容は、一緒に講演会を聴いた岩本塚さんが詳細なレポートを書かれていますのでそちらを是非ご参照ください(岩本さん、ありがとう!)。

内之浦宇宙空間観測所(USC)特別公開に行ってきた 2013.11.10(岩日誌 2013-11-13)

講演会の会場には、イプシロンゆかりの品々も展示されていました。


内之浦でのロケット打上げを支え続けた縁の下の力持ち、地元婦人会の皆さんから送られた千羽鶴。


子供たちからの応援メッセージと並んで、日本の固体燃料ロケット打上げの伝統である、お酒のラベルのパロディ作品が表紙を飾る性能計算書も!
今回は地元の焼酎「新燃」が元ネタだったようですね。
宇宙研魂は健在なり!!(笑)


秋田県の能代ロケット実験場で実際に使用された、イプシロン発射台の煙道の実験模型もありました。

ここでサプライズが!何と、そのイプシロン発射台の煙道に入れる見学ツアーが急遽実施されることに。


煙道の周辺は、超高温の固体燃料ロケット噴射炎がまともに叩き付けられたせいで海側の通路の舗装の強度が極端に落ちていて危険なため、人数を制限してのグループ見学ツアーとなりました。


ここからイプシロンのロケット噴射炎が吹き抜けたんですねぇ…


煙道の中から上を覗くと、ランチャの下に設置された「電話ボックス」が煙道と見事にきっちりと位置が合って、噴射炎を通す道が形成されていることが分かります。


ランチャが旋回して「電話ボックス」が離れると、煙道の上には内之浦の秋空とM型ロケット発射装置の姿が。
最新型のイプシロンも、これまで数多くの先輩ロケットが旅立ってきたのと同じランチャから宇宙へと翔び立つのですね…
そのことを実感させる、感動的な光景が煙道の上に切り取られた空の下に広がっていました。

日本のロケットの聖地、内之浦は、
世界最高性能の新型固体燃料ロケット・イプシロンをもって、新たな時代を迎えました。
そしてこの先、どんなにロケットが進化を続けても、その土台を支えるのは変わらぬロケットボーイたちの熱い想いと情熱、そしてそれを見守る地元の人たちの温かな心。
そのことを実感して、聖地・内之浦を後にします。

今年もありがとう、聖地・内之浦。
また来年、そして次の打上げの時に来ます!




ロケット聖地巡礼~えっがね祭りだ!内之浦美食天国~

2013-11-17 | 食べる

ロケット聖地巡礼~内之浦宇宙空間観測所かけ足散歩~からの続き

ロケットの聖地・内之浦は、実は美食の聖地でもあります。
太平洋に面した内之浦漁港から水揚げされる活きの良い魚介類は、とにかく素晴らしい美味さ!海の幸の味を求めて美食家たちが集まる町なのです。
その中でも特に名高いのが、鹿児島県内でもトップクラスの漁獲高を誇る伊勢海老!
ここでは土地言葉で“えっがね” と呼ばれる伊勢海老を、食べない手はないでしょう!
という訳で、今夜は内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開の前夜祭、えっがね祭りだ!

我々が泊まっているお宿は、内之浦でも食事にこだわっていることで有名な「ときわ荘」さん。
今夜は奮発して、えっがねフルコースです!


前菜。細やかに作られたオードブルが5種類も!
いちじくのココナッツミルクがけという珍しい一品も付きます。


魚は、ひらめの刺身。薬味や砕いたナッツが添えられ、これまた非常に手の込んだ作り。


車海老のあんかけ団子。優しい口当たりで、ほっこりするお味。


太刀魚の揚げ物。濃厚な白身が口の中でほろりととろけます。

そしていよいよ、メインディッシュの登場!


えっがねです。すごい迫力!!
お皿に乗ったえっがね様、まだヒゲを動かすほどの活きの良さ!!
えっがねの身と並んだ魚の刺し身も絶品でした。お見事なり、内之浦の海の幸!!


さらに肉料理で黒豚も登場。
力強い味なのにまったくくさみのない、こんなに食べやすい豚肉は初めていただきました。


そしてとどめは、えっがねの味噌汁!
汁の中から飛び出したヒゲが高くそびえ立っています。こんなに標高の高い味噌汁は初めてです(笑)
えっがねの殻から出た出汁の味と、殻から身をほじくり出す作業で皆暫し無言に。

いや~満腹満足!えっがねサイコー!!ごちそうさまでした。


すっかり幸せになってぐっすり眠って、翌朝。


おおっ、これぞ正しい日本の旅館の朝ごはん!


そして何とベーコンエッグまで出てきて、朝から和洋折衷何でもあり状態の食卓に(笑)
普段は少食の僕も、朝からおひつのご飯をおかわりしましたよ!

内之浦に美味いもの在り!本当に食べ物が美味しかった。ごちそうさまでした!

…さあ、腹ごしらえはバッチリです。
いよいよ“例大祭”に行きましょう。内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開に出発!!

2013内之浦宇宙空間観測所 施設特別公開に続く

ロケット聖地巡礼~内之浦宇宙空間観測所かけ足散歩~

2013-11-17 | 宇宙

ロケット聖地巡礼~内之浦ぶらぶら歩き~からの続き

午後遅く、内之浦の町からクルマで山道を登って、山の上のロケット基地「内之浦宇宙空間観測所」までやって来ました。
受付門衛所の閉門時間まで小一時間程ですが、何とかかけ足でロケット基地内を見て回ることにします。

まずは観測ロケットが打上げられるKSセンターへ。


KSセンターに来てみると、ランチャドームの大扉が開き始めました。
一体何事かと思ったら、もうすぐ所長が見回りに来るので準備のために開けたとのこと。
「なーんだ、僕たちのために開けてくれたんじゃなかったのか」等と冗談を言っていたら、ちょっとだけドームの中を見せてもらえることに!これはラッキー!!


ドーム内には、観測ロケットの自走式ランチャが!


S-310型ロケットのランチャには、ロケット本体のダミーがセットされています。
銀色に赤帯の、日本の伝統的な固体燃料ロケット色、ウルトラマンと同じカラーリングのこの塗装はやっぱりカッコいい!

いきなり良い物が見られましたが、いかんせん時間がありません。
お礼を言ってから次の場所へ急いで移動。コントロールセンター横を通り昇交橋を渡って、第5光学観測室/10mパラボラアンテナへ。


日が傾きかけた空を見上げる10mパラボラアンテナ。
どことなく哀愁が漂います。

10mパラボラアンテナの建屋のまわりをぐるっと一周りしてから、衛星ヶ丘展望台へ。


さっきの10mパラボラアンテナが見えます。なんだか山の中の秘密基地の怪しいアンテナのように見えますねぇ…


こちらは衛星ヶ丘にある20mパラボラアンテナ、通称“小うっちーさん”


“小うっちーさん”は夕陽に向かって通信運用中。


谷間の向こうの尾根には衛星追跡センターと34mパラボラアンテナ、通称“大うっちーさん”が鎮座まします。
夕焼けの巨大パラボラの姿は何とも荘厳。まるで巨人ダイダラボッチのよう。

衛星ヶ丘展望台からはカッコいいパラボラがたくさん見られて楽しいのですが、先を急ぎましょう。
いったん内之浦宇宙空間観測所の敷地から外に出て、五運橋を渡り、M台地(ミューセンター)へ!


M台地にそびえるMロケット発射装置整備塔。
ここからイプシロンロケットが打上げられたのです。


M台地の片隅に掃き集められた、これは多分イプシロン打上げ時にロケットの噴射炎で吹き飛ばされた部品類!
焼け焦げた蛇腹ホース状のものはアンビリカルケーブルではないでしょうか?
一見、単なるゴミにしか見えないのですが、これはお宝の山だ~!!
しかも焼け焦げ部品の横にある筒状のものは、どう見てもランチャ旋回試験で使われたイプシロンのダミーウェイトだし(笑)


M台地に展示されているM-3SIIロケットのデフレクター。
ロケット発射時の噴射炎を受け止めるものですが、現在は発射地点の地面に据え付けられているデフレクターも以前はフレームで組まれてランチャに直接取り付けられていたんですね。
固体燃料ロケットの噴射炎をまともに叩き付けられたので表面のコンクリートがボロボロに溶け崩れて、メッシュ状の鉄筋がむき出しになっています。


こちらもM台地に展示されているM-3SIIロケットのランチャ旋回用台車。
見た目は鉄道車輌用の台車と同じ構造ですが、ランチャ旋回用ですので台車そのものが曲線を描いて湾曲した造りになっています。
ちゃんとレールも2本敷かれて、本当に「鉄道」になっていますね。軌間(ゲージ)はJRの1067mmよりだいぶ狭いようですが、何mmあるのか気になります。
そして、よく見ると車輪のフランジが両方とも同じ側に付いている…これは面白い!もし普通の鉄道でこんな構造の台車を走らせたら、あっという間に脱線しますよ(笑)

以上、かけ足で見て回った内之浦宇宙空間観測所とM台地ですが、明日の施設特別公開で細部までじっくり見ることが出来ます。
今日はこれで帰ることにしましょう。明日が楽しみですね…

でも宿に戻る前に、あと一か所だけ寄り道を。


夏にイプシロンロケット初号機の打上げを見送った宮原一般見学場


あの日と同じ光景が、静かに夕焼けの中に佇んでいます。
木立の向こうに見えるM台地から再び、2機目のイプシロンが翔び立つのは再来年の冬の予定。
その時は、またここに来て見送るぞ!!

さあ、日が暮れます。宿に帰りましょう。
今夜は内之浦ならではの御馳走が待っていますよ!

ロケット聖地巡礼~えっがね祭りだ!内之浦美食天国~に続く