ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、ソンブレロ銀河のハローには低金属星の割合が非常に小なく、一方で金属の豊富な星の割合が予想以上に高いことが示されました。
このことは、典型的な渦巻銀河に見られるものとは異なる傾向… 何か理由があるのでしょうか。
ほぼ真横から見る銀河円盤とそれに沿った暗黒帯、円盤部から突き出した丸い形が特徴的で、その形からメキシコのつばの広い帽子“ソンブレロ”にたとえられ“ソンブレロ銀河(以下ソンブレロ銀河)”とも呼ばれています。
アマチュア天文家の撮影対象として人気のソンブレロ銀河ですが、研究対象としては不思議な構造が注目されてきました。
ソンブレロ銀河は、その形の特徴から銀河の形状分類上は、これまで渦巻銀河とされる場合がほとんどでした。
でも、近年の大口径望遠鏡や赤外線による観測から、中央の丸い突出部を囲む淡いハローが非常に大きな範囲に広がっていることが明らかになります。
さらに分かったのは、ソンブレロ銀河のハロー内には、渦巻銀河では通常数百しか存在しない球状星団が数千個も存在していること。
これらの特徴から、実際は楕円銀河でありながら、その中に円盤状の構造を持つに至ったと考えられています。
そう、ソンブレロ銀河は、楕円銀河と渦巻銀河の特徴を兼ね備えたハイブリッドな銀河なんですねー
銀河全体の質量はおよそ太陽8000億個分で、直径は5万光年ほど。中心部には超大質量ブラックホール(太陽質量の10億倍)が存在しているようです。
今回、この領域をアメリカ・宇宙望遠鏡科学研究所のチームがハッブル宇宙望遠鏡を用いて観測。
すると、金属量(水素とヘリウム以外の元素の量)が低い星の割合がわずかしかなく、反対に金属量の高い星が予想以上に多いことが明らかになります。
ハローは天の川銀河をはじめ渦巻銀河に見られる構造で、一般的には金属量が少ない低金属星(金属欠乏星)の割合が高い領域になります。
金属元素は恒星の内部で起こる核融合反応によって生成され、星が一生を終えるときに周囲へ放出されます。
その物質を取り込んで次世代の星が誕生するので、銀河の円盤部のように星の材料が豊富に存在し、星形成のサイクルが活発なところでは星の金属量は増えていきます。
反対にハローでは、そのような活動が無いので、サイクルは繰り返されず、年老いた金属欠乏星の割合が高くなると考えられてきました。
でも、今回行われた観測研究では、ソンブレロ銀河ではそうなっていないことが示されたんですねー
これらの星団からハローに星が抜け出していけば、金属欠乏星の割合は高くなるはず。
でも、ソンブレロ銀河では、そのような過程があまり起こってきませんでした。
そこで考えられるのは大質量の銀河同士による衝突合体です。
これらの銀河が、金属を多く含む多数の若い星で構成されていれば、ハローの中に金属量の高い星が多く分布していても不思議ではありません。
ただ、ソンブレロ銀河は非常に安定した整った姿をしていて、天文学的な時間スケールでの最近に破壊的現象が起こったことを示す証拠は全く見られていません。
それでも、コンピュータモデルでは昔に衝突合体が起こった可能性が示されることに…
今後は、ソンブレロ銀河と同程度の距離にある銀河のハローに含まれる金属量が調べられる予定です。
また、次世代宇宙望遠鏡による観測では、ソンブレロ銀河の予想外の特徴がさらに詳しく分かってくるかもしれません。
楕円銀河と渦巻銀河の特徴を持った不思議な銀河の歴史が明らかになるといいですね。
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このことは、典型的な渦巻銀河に見られるものとは異なる傾向… 何か理由があるのでしょうか。
楕円銀河と渦巻銀河の特徴を持つハイブリッドな銀河
おとめ座の方向約2800万光年彼方に位置する明るい銀河M104。ほぼ真横から見る銀河円盤とそれに沿った暗黒帯、円盤部から突き出した丸い形が特徴的で、その形からメキシコのつばの広い帽子“ソンブレロ”にたとえられ“ソンブレロ銀河(以下ソンブレロ銀河)”とも呼ばれています。
アマチュア天文家の撮影対象として人気のソンブレロ銀河ですが、研究対象としては不思議な構造が注目されてきました。
ソンブレロ銀河は、その形の特徴から銀河の形状分類上は、これまで渦巻銀河とされる場合がほとんどでした。
でも、近年の大口径望遠鏡や赤外線による観測から、中央の丸い突出部を囲む淡いハローが非常に大きな範囲に広がっていることが明らかになります。
さらに分かったのは、ソンブレロ銀河のハロー内には、渦巻銀河では通常数百しか存在しない球状星団が数千個も存在していること。
これらの特徴から、実際は楕円銀河でありながら、その中に円盤状の構造を持つに至ったと考えられています。
そう、ソンブレロ銀河は、楕円銀河と渦巻銀河の特徴を兼ね備えたハイブリッドな銀河なんですねー
銀河全体の質量はおよそ太陽8000億個分で、直径は5万光年ほど。中心部には超大質量ブラックホール(太陽質量の10億倍)が存在しているようです。
渦巻銀河の特徴に合わないハローの金属量
ソンブレロ銀河の明るい部分の周囲には、ハローと呼ばれる淡い領域が球状に広がっています。銀河の外観図。銀河円盤の中心にある膨らみが“バルジ”で、全体を球状に包むのが“ハロー”と呼ばれる部分。画像はソンブレロ銀河M104。 |
すると、金属量(水素とヘリウム以外の元素の量)が低い星の割合がわずかしかなく、反対に金属量の高い星が予想以上に多いことが明らかになります。
ハローは天の川銀河をはじめ渦巻銀河に見られる構造で、一般的には金属量が少ない低金属星(金属欠乏星)の割合が高い領域になります。
金属元素は恒星の内部で起こる核融合反応によって生成され、星が一生を終えるときに周囲へ放出されます。
その物質を取り込んで次世代の星が誕生するので、銀河の円盤部のように星の材料が豊富に存在し、星形成のサイクルが活発なところでは星の金属量は増えていきます。
反対にハローでは、そのような活動が無いので、サイクルは繰り返されず、年老いた金属欠乏星の割合が高くなると考えられてきました。
でも、今回行われた観測研究では、ソンブレロ銀河ではそうなっていないことが示されたんですねー
南米チリにあるヨーロッパ南天天文台ラ・シーヤ観測所の望遠鏡によって撮影されたソンブレロ銀河M104(Credit: ESO/IDA/Danish 1.5 m/R. Gendler and J.-E. Ovaldsen) |
銀河同士の衝突と合体
ハローには、年老いた星が数十万個集まっている球状星団という天体も存在しています。これらの星団からハローに星が抜け出していけば、金属欠乏星の割合は高くなるはず。
でも、ソンブレロ銀河では、そのような過程があまり起こってきませんでした。
そこで考えられるのは大質量の銀河同士による衝突合体です。
これらの銀河が、金属を多く含む多数の若い星で構成されていれば、ハローの中に金属量の高い星が多く分布していても不思議ではありません。
ただ、ソンブレロ銀河は非常に安定した整った姿をしていて、天文学的な時間スケールでの最近に破壊的現象が起こったことを示す証拠は全く見られていません。
それでも、コンピュータモデルでは昔に衝突合体が起こった可能性が示されることに…
今後は、ソンブレロ銀河と同程度の距離にある銀河のハローに含まれる金属量が調べられる予定です。
また、次世代宇宙望遠鏡による観測では、ソンブレロ銀河の予想外の特徴がさらに詳しく分かってくるかもしれません。
楕円銀河と渦巻銀河の特徴を持った不思議な銀河の歴史が明らかになるといいですね。
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