今回、東京大学の国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構が調べたのは、スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の影響を解析することで、宇宙の大規模構造の進化に伴うガスの温度変化でした。
すると、同構造中のガスの平均温度は、過去80億年の間に3倍程度上昇し、現在では約200万Kに達していることが分かったそうです。
さらに、この密度のゆらぎは、現在では“宇宙マイクロ波背景放射”にわずかに生じているゆらぎ(温度のゆらぎ)に対応しているようです。
標準的な理論では、この宇宙初期の小さな密度ゆらぎが種になって、周囲のダークマターやガスを引き寄せて銀河や銀河団が生まれ、網の目状に広がる宇宙の大規模構造を形成してきたとされています。
いまでは観測も進み、2019年にノーベル物理学賞を受賞したジェームズ・ピーブル博士らの説は有力なものとされています。
ただ、一方で宇宙の大規模構造の形成にはまだ多くの謎も残されていて、様々な手法を用いて過去から現在まで構造形成の進化の様子が調べられています。
分析に用いられたのは、赤外線天文衛星“プランク”が取得した“宇宙マイクロ波背景放射”のデータと、“スローン・デジタル・スカイ・サーベイで得られた合計200万点に及ぶ天体の分光観測データでした。
そして、これら二つの観測プロジェクトのデータを組み合わせて、スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果を用いた解析を行っています。
スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果とは、物理学者のラシード・スニヤエフとヤーコフ・セルドヴィッチによって理論的に初めて提唱された現象のこと。
この現象は、宇宙の大規模構造を“宇宙マイクロ波背景放射”の光子が通過する際、同構造内にガス状に存在する高温の電子によって散乱されることで生じます。
この散乱により、“宇宙マイクロ波背景放射”の光子は高温の電子からエネルギーを受け取り、この結果として宇宙の大規模構造を通過しない他の光子に比べて高いエネルギーを持つようになります。
この光子のエネルギー変化を分析することで、大規模構造中の高温電子ガスを可視化することが可能になるんですねー
また、スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の強さは高温電子ガスの熱的圧力に比例しています。
なので、スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の強さを分析することで、大規模構造中の高温電子ガスの温度を測定することができてしまいます。
解析の結果、これまで約80億年前(赤方偏移z=1)のガス中の電子の平均温度は約70万Kとされていたのが、3倍近い約200万Kにまで上昇していることが確認されます。
さらに、理論的なモデルと比較した結果、このガスの温度の進化は、宇宙の大規模構造の形式に伴う衝撃波による加熱で、ほぼ説明されることが示されました。
観測データの解析から具体的に示すことができました。
そして、この手法が今後の宇宙の大規模構造形成のより詳細な理解を深める助けとなり、精密宇宙論の理論的理解の貢献にもつながる道筋を拓いたことになります。
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すると、同構造中のガスの平均温度は、過去80億年の間に3倍程度上昇し、現在では約200万Kに達していることが分かったそうです。
密度ゆらぎと宇宙の大規模構造
誕生直後の宇宙には、量子力学的なゆらぎと、インフレーションによって生じた小さな密度のゆらぎが存在していたと考えられています。さらに、この密度のゆらぎは、現在では“宇宙マイクロ波背景放射”にわずかに生じているゆらぎ(温度のゆらぎ)に対応しているようです。
標準的な理論では、この宇宙初期の小さな密度ゆらぎが種になって、周囲のダークマターやガスを引き寄せて銀河や銀河団が生まれ、網の目状に広がる宇宙の大規模構造を形成してきたとされています。
いまでは観測も進み、2019年にノーベル物理学賞を受賞したジェームズ・ピーブル博士らの説は有力なものとされています。
ただ、一方で宇宙の大規模構造の形成にはまだ多くの謎も残されていて、様々な手法を用いて過去から現在まで構造形成の進化の様子が調べられています。
宇宙の大規模構造の進化に伴って変化するガスの温度
今回、オハイオ州立大学の研究チームは、宇宙の大規模構造の進化に伴って、大規模構造中のガスの温度の平均値がどのようにして変化してきたのかを分析。分析に用いられたのは、赤外線天文衛星“プランク”が取得した“宇宙マイクロ波背景放射”のデータと、“スローン・デジタル・スカイ・サーベイで得られた合計200万点に及ぶ天体の分光観測データでした。
“プランク”は、“宇宙マイクロ波背景放射”の高精度測定を目的としてヨーロッパ宇宙機関が打ち上げた赤外線天文衛星。
“スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”は、アメリカ・ニューメキシコ州アパッチポイント天文台のスローン財団望遠鏡を使った3次元宇宙地図作成プロジェクト。
“スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”は、アメリカ・ニューメキシコ州アパッチポイント天文台のスローン財団望遠鏡を使った3次元宇宙地図作成プロジェクト。
そして、これら二つの観測プロジェクトのデータを組み合わせて、スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果を用いた解析を行っています。
宇宙の温度(上)と大規模構造(下)の時間進化を計算したコンピュータシミュレーション。時間は左から右へ流れ、一番右の図が現在の宇宙に対応。(Credit: D. Nelson / Illustris Collaboration) |
この現象は、宇宙の大規模構造を“宇宙マイクロ波背景放射”の光子が通過する際、同構造内にガス状に存在する高温の電子によって散乱されることで生じます。
この散乱により、“宇宙マイクロ波背景放射”の光子は高温の電子からエネルギーを受け取り、この結果として宇宙の大規模構造を通過しない他の光子に比べて高いエネルギーを持つようになります。
この光子のエネルギー変化を分析することで、大規模構造中の高温電子ガスを可視化することが可能になるんですねー
また、スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の強さは高温電子ガスの熱的圧力に比例しています。
なので、スニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果の強さを分析することで、大規模構造中の高温電子ガスの温度を測定することができてしまいます。
解析の結果、これまで約80億年前(赤方偏移z=1)のガス中の電子の平均温度は約70万Kとされていたのが、3倍近い約200万Kにまで上昇していることが確認されます。
膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまう。この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになる。
さらに、理論的なモデルと比較した結果、このガスの温度の進化は、宇宙の大規模構造の形式に伴う衝撃波による加熱で、ほぼ説明されることが示されました。
観測データの解析から具体的に示すことができました。
そして、この手法が今後の宇宙の大規模構造形成のより詳細な理解を深める助けとなり、精密宇宙論の理論的理解の貢献にもつながる道筋を拓いたことになります。
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