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太陽系外からやってきた“オウムアムア” 予想外の加速をするのはなぜ?

2018年07月20日 | 宇宙 space
太陽から遠ざかりつつある恒星間天体の“オウムアムア”が、予測よりもわずかに大きい速度を持っていることが分かりました。

なぜ“オウムアムア”は加速をするのか? “オウムアムア”の正体は?

小惑星だと考えられていた“オウムアウア”ですが、どうやらその正体は彗星の可能性が高いようです。


太陽系の外からやってきた天体

昨年の10月にハワイのPan-STARRSサーベイで発見された天体が“オウムアムア”です。
  “オウムアウム”はハワイ語で「遠方からやってきた最初の使者」の意味。

近日点が水星の軌道よりも太陽に近く、軌道傾斜角が非常に大きな軌道を持っているんですねー
  近日点とは天体が太陽に最も近づく地点のこと。

観測の結果から太陽系外の恒星系からやってきた史上初の“恒星間天体”だと考えられています。

発見されたのは近日点通過の1か月ほど後で、現在は木星軌道を越えて、時速約11万4000キロで太陽から遠ざかっているところ。

これは太陽の重力を振り切って太陽系から飛び出すのに十分な速度なんですねー


彗星なのか小惑星なのか

当初、“オウムアウム”の正体は彗星だと思われていました。

その理由は、生まれ故郷の恒星系の重力を振り切って宇宙空間に飛び出す“恒星間小惑星”よりも、同じようにして宇宙空間に飛び出す“恒星間彗星”の方が数が多いと考えられているからです。

ただ、“オウムアムア”を撮影した画像からは彗星だとする証拠は見つからず…
ガスを放出したりチリが取り巻いたりしていないので、“オウムアムア”は恒星間小惑星として分類されることになります。

でも、“オウムアムア”をめぐるこの話には続きがあり、驚くべき展開が待っていたんですねー


軌道がズレた原因

ヨーロッパ宇宙機関の研究チームは、“オウムアムア”の発見直後の観測に引き続き、地上の天体望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を用いて天体の精密な位置測定を続けていました。
  これ以降、“オウムアムア”は太陽から遠ざかるとともに暗くなり、
  現在は撮影できないほど暗くなっている。“オウムアムア”の画像は、
  今年の1月にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたものが最後。


この追観測の結果、研究チームは予想外の事実を発見することに…
“オウムアムア”が、太陽と惑星からの重力だけを受ける場合に辿るはずの軌道からわずかにズレていたんですねー
  “オウムアムア”は太陽から遠ざかるにつれて速度を落としていくのですが、
  この減速の割合が重力の影響だけを受けている場合よりも小さかった。

○○○
“オウムアムア”の軌道。
重力の影響だけの場合にとるはずの軌道(緑色)に比べ、
実際の観測から得られた“オウムアムア”の軌道(青色)は、
今年5月の位置に比べると10万キロほど先行することになる。
この軌道のズレを厳密に分析した結果、太陽光が及ぼす圧力(放射圧)や太陽熱、太陽風の影響で軌道が変わったという説は否定。

他にも、別の天体が“オウムアムア”に衝突して起動がズレたという説や、実は“オウムアムア”は2個の天体が重力でゆるく結び付いているという説も検討されますが、いずれもありそうにないという結論になります。

そして最も可能性が高かったのが“オウムアムア”は彗星だとする説。
彗星表面から放出されるガスが軌道のわずかなズレを引き起こしているというものでした。


彗星だけど奇妙な小天体

彗星の核には氷が含まれていて、太陽に暖められると氷(固体)から水蒸気(気体)に昇華します。

すると、表面からチリが放出され、ぼんやりとした“コマ”や尾を作り出すんですねー

こうして核から噴き出すガスの圧力によって、重力だけが働く場合の軌道に対してズレが生じるというわけです。
○○○
“オウムアムア”のイメージ図。
太陽に暖められることでわずかにガスを放出している可能性がある。
ただ、ハッブル宇宙望遠鏡を使った“オウムアムア”の長時間露出撮影では、典型的な彗星に見られるようなチリや、彗星らしい化学的特徴は一切検出されず…

このことについては、“オウムアムア”が放出しているチリの量が非常に少ないか、あるいはほとんどチリを含まないガスだけを放出していので検出されなかったのではないか、という結論に達します。

“オウムアムア”は依然として奇妙な小天体です。
ただ、今回の研究から得られた結果からすると、“オウムアムア”は彗星であって、小惑星の可能性は無いということになりますね。


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