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国際宇宙ステーションで起こる電子の集中豪雨って何?

2016年08月30日 | 宇宙 space
国際宇宙ステーションには“CALET”という観測装置が設置されています。

この観測装置のデータから明らかになったことがあるんですねー

それは、国際宇宙ステーションが磁気緯度の高い地域を通過する際、
数分間にわたり大量の放射線電子が降り注ぐ“電子の集中豪雨”が起こっていること。

どうやら“オーロラのさざ波”を感じて大気に落とされたバンアレン帯の電子が原因のようです。


高エネルギーの観測

2015年8月に“こうのとり”5号機で国際宇宙ステーションに運ばれたのが、
“高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)”です。

“CALET”が設置されたのは、日本実験棟“きぼう”の船外実験プラットフォームでした。

宇宙を飛び交う非常に高いエネルギーの電子やガンマ線、陽子・原子核成分を、
高精度に観測するための装置が“CALET”です。

この観測データから、高エネルギー宇宙線・ガンマ線の起源と加速の仕組み、
宇宙線が銀河内を伝わる仕組み、暗黒物質の正体などを解明することができるんですねー
日本実験棟“きぼう”の船外実験プラットフォーム。
“CALET”は赤い位置に取り付けられている。

オーロラ活動が活発だった2015年11月10日のこと、
数分間だけでしたが、放射線電子のカウント数が想定の数十倍から数百倍にまで急上昇し、
準周期的に強弱の変化を示すという状況を“CALET”が検出しています。

これをきっかけに“CALET”の観測開始から4か月間のデータを分析。

すると、11月に検出されたものと同様の“電子の集中豪雨”現象が、
国際宇宙ステーションが夕方から夜中にかけて、磁気緯度の高い地域を通過するタイミングに、
繰り返し起こっていることが明らかになります。

  磁気緯度は地球の自転軸ではなく地磁気の軸を基準とした緯度。

また、現象が主にバンアレン帯の放射線電子が豊富なときや、
オーロラ活動が活発なときに発生していることも明らかになりました。


原因はオーロラ活動の余波

赤道上空の高度1万~4万キロに放射線電子が集中する領域があり、
ここをバンアレン帯と言います。

つまりここは、地球大気に落ちなかった電子が宇宙空間で滞留している場所になり、
ここから常に地球大気に向かって電子が降り注いでくるわけではありません。

今回の現象で集中豪雨の雨雲に対応するバンアレン帯から、実際に大量の電子が降り注ぐ現象は、
オーロラ活動に間接的に刺激されることが引き金になっています。

オーロラを活発にする原因は、真夜中側から地球に押し寄せてくる、
電子と陽子が一体となって流れるプラズマの大波です。

大波は地球に近づくと強い地磁気を感じてブレーキがかかるのですが、
その際に電子の流れは明け方、陽子の流れは夕方の方へと回り込みます。

明け方側に回り込んだ電子の一部はオーロラやバンアレン帯の一部となり、
夕方側の陽子は、その場所でプラズマのさざ波(電磁イオンサイクロトロン波)を立てます。

そして、さざ波に出会ったバンアレン帯の電子の多くが、
電磁場の揺れを敏感に感じ地球大気に叩き落とされることになります。

このように、オーロラ活動の余波によって、
国際宇宙ステーションで電子の集中豪雨が検出されたと考えられます。
電子の集中豪雨の状況説明図。

電子の集中豪雨という現象自体は新発見ではありません。

これまで主に極軌道衛星によって高緯度地域で観測されてきた相対論的電子降下と呼ばれる、
バンアレン帯電子の大量落下現象と同じものだと考えられています。

そして電子の集中豪雨の観測は、
現在の国際宇宙ステーションの放射線環境を正しく知る上でも貴重なデータになります。

さらに、秒単位で乱れる激しい振動を詳しく分析していくことで、期待されることがあります。

それは、オーロラ活動によるさざ波の成り立ちに関する理解が進み、
電子の集中豪雨の宇宙天気予報や人工衛星の帯電障害の軽減対策、
大気科学の研究などに貢献することなんですねー


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