宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ヨーロッパ発の再使用型宇宙船、本体が完成!

2014年03月26日 | 宇宙 space
ヨーロッパが開発する大気圏への再突入が可能な宇宙往還機。
この宇宙往還機“IXV”が完成し、今年の10月には初試験が行われるようです。

“IXV”は、再使用型宇宙往還機を目指して、ヨーロッパ宇宙機関が開発を進める実験機です。

空気熱力学や航法衛星の情報を元にして、
大気圏再突入時の自動操縦や耐熱性能などを実証するための、中間的な機体になります。


そして、アメリカで開発が進む7人乗り有人宇宙船“ドリームチェイサー”などと同様に、本体が揚力を生むリフティングボディ型の機体になっているんですねー

機体はタレス・アレニア・スペースが設計し、イタリア宇宙機関を中心にヨーロッパの産業界、大学共同のコンソーシアムで製作され、現在はイタリアのトリノでミッションコントロールセンターの準備が進められています。

“IXV”の無人試験機は、今年10月にフランス領ギアナの宇宙センターから、ヴェガロケットで打ち上げられる予定。

高度320キロでヴェガロケットから分離、この後412キロまで上昇します。
大気圏への再突入時には、高度120キロ付近で秒速7.7キロに達する予定です。

試験全体にかかる時間は、およそ1時間40分ほど。
パラシュートを開いて降下し、太平洋に着水した後に回収される予定です。

ドローンと人工衛星の機能を併せ持つ“成層圏バス”

2014年03月25日 | 宇宙 space
フランスの航空宇宙企業タレス・アレニア・スペース社が、
高度20キロの成層圏で定点滞空ができる、大型無人飛行船“成層圏バス”の構想を発表しました。

“成層圏バス”は、高度20キロに自律的に定点滞空することができる無人飛行船です。
そして地球観測、安全保障、通信放送、航法など人工衛星のような機能を持つんですねー

“成層圏プラットフォーム”と呼ばれる施設の一種になり、
長さ70~100メートル、直径が20~30メートル程度の大きさで、太陽光発電システムと燃料電池を備えます。

風速25メートル毎秒までの風に対応し、自動でモーター出力を調整するので、上空の一点に留まり続けることができるんですねー

最大で200キロまでの観測機器や通信機器を搭載することができるので、
水害や山火事など災害状況の監視や、気象観測、国境や海洋監視活動、GPS衛星などからの航法信号の増幅、通信・放送などのミッションに対応します。

人工衛星よりもコストが低く、電波の送受信に遅延が少ない、打ち上げリスクが小さい
などのメリットがあるので、“成層圏プラットフォーム”は各国で研究開発が行われています。

2000年代前半に日本でも実証実験が行われたのですが、実用化には至らず…

記憶に新しいものでは、Googleが2013年に発表した通信網構築構想“Project Loon”があります。
ただ、これは飛行船ではなく気球を使ったプロジェクトなんですねー

“成層圏バス”は、
耐久性と定位置に自律的に留まる機能で“Project Loon”よりも優れているんだとか…
まぁー 5年以内に登場するプロトタイプ機を見てみないと分かりませんね。

大質量星が生まれるメカニズム

2014年03月24日 | 宇宙 space


国立天文台のVERAを含む
JVN(Japan VLBI Network)を使ったメタノールメーザー観測により、大質量星形成領域“Cep-A”にある、
電波源“HW2”の固有運動が測定されました。

測定の結果、
電波源の周囲のガスが、回転しながら少しずつ中心に落ちていくようすがとらえられたんですねー




“Cep-A”は、地球から約2230光年の距離にある大質量星形成領域で、
電波源“HW2”は、“Cep-A”にある若い大質量星のひとつです。

今回の研究では、
2006~2008年にかけ、3回にわたって“HW2”のモニタリング観測が行われています。

そして、29のメタノールメーザースポットを観測した結果、
測定した固有運動は秒速0.2~7.4キロ、
回転および落下速度は、それぞれ0.5プラスマイナス0.7キロと、1.8プラスマイナス0.7キロでした。
観測したメタノールメーザーの固有運動。
色付きの点が観測スポット(色はメーザーの速度を示す)、
円錐は周辺スポットを平均した固有運動、
点線の楕円はメーザースポットが分布している円盤を描いたもの。

これらの動きは、電波源“HW2”を中心とした半径680AU(1AU=太陽と地球間)の周囲を、
回転しながら落下している可能性があるんですねー
観測結果から算出された降着円盤モデル。
固有運動を示す矢印が回転しながら中心に向いている。

太陽の10倍ほどもある大質量星の作られ方は、
星同士がぶつかって合体して大きくなるモデルや、星の周りのガスが回転しながら落ちて(集まって)いくことにより大きくなるモデルが考えられています。

今回の観測結果は、後者に当てはまる結果になっていて、大質量星が生まれるメカニズムを解明する手がかりになるようです。

宇宙が一瞬で膨張した決定的証拠を発見

2014年03月23日 | 宇宙のはじまり?
宇宙が誕生した瞬間、驚くほど強力な重力波が広がっていった。
っという事実が、最新の研究によって明らかになりました。

これにより、誕生直後に急膨張したとする“宇宙インフレーション理論”を裏付ける決定的な証拠が、初めて観測されたことになるんですねー
宇宙に波を打って広がる重力波
(イメージ図)
“インフレーション理論”は、
初期宇宙の誕生直後から、想像を絶するほどの大きさにまで膨張した成り立ちを説明する進化モデルで、火の玉の爆発で始まったとする、ビッグバン理論を補完する位置づけにあります。

今回の研究では、宇宙誕生後に放出された熱の名残り“宇宙マイクロ波背景放射”を分析しています。

“宇宙マイクロ波背景放射”は、天空全域に広がっていて、
宇宙誕生の40万年後に、物質がどこで凝縮していったのかが分かるんですねー

重力波は波打つように広がり、移動した部分の空間を歪めます。
そして、広がりの規模に応じて、一定間隔で物質をひとまとめにしていきます。

これは、アインシュタインの重力理論で予言されていて、宇宙インフレーションの存在を示す証拠になると考えられてきました。

なのでこの研究では、重力波を直接観測した訳ではなく、“宇宙マイクロ波背景放射”に与えた影響をとらえています。


観測は、澄んだ空と乾いた大気の条件を満たし、地上随一のレベルで“宇宙マイクロ波背景放射”の観測が可能になる、南極大陸のBICEP2望遠鏡で行われています。
インフレーションからの重力波が、
“宇宙マイクロ波背景放射”に“Bモード偏光”歪みを生じさせる。
黒い線が“宇宙マイクロ波背景放射”の偏光方向を示し、
歪みの程度に応じて色が付けられている。

インフレーション理論では、“宇宙マイクロ波背景放射”が重力波の影響を受けると、
偏光サングラスと同じ理屈で、特定の方向の光に歪みが生じるそうです。
これを観測するために、2010~2012年の3シーズンを費やしたんですねー

そして、ついに特徴的な偏光パターン“Bモード偏光”を発見することに…
その歪みは事前の予想に比べて、およそ2倍も強力だったそうです。

インフレーション理論では、宇宙誕生時の高密度エネルギーによって、
誕生から1秒の1兆分の1の、さらに1兆分の1の、さらに100万分の1以内の時間で、
宇宙の境界が、指数関数的に膨張していったと想定されています。

なので、宇宙は誕生した瞬間に、人類が観測可能な領域(直径約920億光年)を超えて、
はるか彼方まで広がっていったんですねー

重力波はその時生まれたもので、今回の研究は宇宙誕生の謎を解明する大きな一歩になると期待されているようですよ。

水星は40億年で14キロも縮小していた?

2014年03月21日 | 宇宙 space
干しブドウのように縮み、しわをふやしつつある惑星…

この太陽の周りを回る惑星“水星”が、
約40億年の間に直径を最大14キロも小さくしていることが、
最新の研究で分かってきました。

水星の岩盤プレートは1枚だけだった

水星が縮小しているのは、
この惑星が冷却しつつあるからです。

地球と異なり水星には、熱損失が地殻に及ぼす圧力に応じて、
振動したり押し返したり横滑りしたりする、
複数のプレートはありません。

なので、水星を一枚で覆っている岩石のプレートが縮むことで、表面がひずみ、
しわ状の尾根と、耳たぶ状の崖と呼ばれる、波打った断崖が形成されることになります。

NASAの水星探査機“メッセンジャー”がとらえた画像から、
こうした惑星表面の全体像が明らかになってきたんですねー
NASAの水星探査機“メッセンジャー”がとらえた水星の画像。
クレーター(青色の部分)の間を、
しわ状の尾根の筋が540キロにわたって走っているのが見える。

程度の差はあれ、すべての惑星は冷却し熱を発散していて、
太陽に最も近い水星も例外ではありません。

でもそのプロセスが、
既にクレーターだらけの水星表面に大きなダメージを与えていて、
最大3キロの断崖や、長く連なる尾根の筋を形成しています。

水星の表面全体を走る尾根の全長は、最大1700キロもあり、
フロリダ州の南北の長さの倍以上に達しているんですねー


あまり行われなかった水星の探査

これまで水星の表面のようすは、半分も分かっていませんでした。

それは“メッセンジャー”以外で、
水星に接近した探査機が、NASAの“マリナー10号”だけだったからです。
マリナー10号
メッセンジャー

“マリナー10号”は、1974~1975年に3度のフライバイを行い、
水星表面の45%を撮影しています。

ただ、この部分的なデータは、研究者たちを不思議がらせることになります。

それは、“マリナー10号”の画像では、
水星が誕生初期の約40億年前、小惑星に次々と衝突されていたころから、
直径にして2~6キロしか縮んでいないことを示していたからです。

これに対し、惑星内部の熱史に基づくモデルでは、
その最大10倍の収縮を予測していました。

それが今回の研究によって、
水星はこれまでに半径にして4~7キロ収縮していることが示されたんですねー


水星の断崖や尾根は、火星や月の表面に見られるものと似ているのですが、
月や火星に比べて、はるかに収縮が進んでいるとみられる点が重要な違いになります。

19世紀ヨーロッパの地質学者の説には、
地球に収縮が起こったので山脈ができたというものがありました。

でも、1950~1960年代に入って、
地球の岩石質の地殻は縮むとしわが寄る一枚の層でなく、
それぞれが独立して動く多数のプレートの集まりだと分かることに…

なので、この説は否定されることになるのですが、
どうやら地球でない惑星“水星”では正しかったようですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 水星に大量の“水の氷”