7月7日にNHKのクローズアップ現代で、「混迷のアフガニスタン」・「オバマの新戦略」について、翌日の8日には国際協力機構(JICA)理事長の緒方貞子さんが出演しての 「日本の復興戦略」の放送があったので、表記のことを書こうと思っていました。
然し日本の政界の激動でつい政局中心のエントリーが続く結果と成りましたが、最近の自民・民主の泥試合、自民党内のごたごたでうんざり、かりかりしているので、私の頭を冷やす意味でもアフガンの問題を遅まきながら取り上げてみようと思いました。
7日の「オバマの新戦略」のNHKの番組案内では、治安状況が最悪となっているアフガニスタン。アメリカ・オバマ政権は、テロを押さえ込む「主戦場」をイラクからアフガニスタンに移すことを宣言。2万1千人のアメリカ軍部隊増派に加えて、農業支援などの「開発援助」を作戦の中心に据え、大幅な増員・増額をすることで治安状況の「潮目」を変えようとしている。しかし、出口戦略の要となるアフガニスタン人治安部隊育成には時間がかかり、汚職の根絶も進まない。一方、治安が悪化する中で、開発援助は軍と一体で進めざるをえなくなっているが、アメリカ軍が誤爆などで民間人を殺害しているとして、援助の受け手である地元民からは、アメリカへの反発が根強い。と紹介しています。
今日は番組の後半に記してある、米軍の攻撃に関しての作戦変更について、私どもの英字新聞輪読会での解説資料の紹介をしたいと思います。
出所は「Student Times」の7日付けの「New rules aim to cut Afghan death toll」ですが Web版はありません。
・アフガンでの戦闘と爆撃についてより厳しい新ルールは米軍にとってより複雑なものにするだろう。然し当局は彼らの戦闘の努力を台無しにする原因となっている、市民の死者数を減らす為には避けられないことだ。
・アナリスト: 今まで戦闘で空軍の援助に頼っていた地上軍に取って、もっと危険に晒されるような新しいガイドラインを彼らが直ぐに実行することはないだろう。
然しそのリスクはもしアフガンの人達から戦争への支持を得られるのなら、その努力をする価値がある。
つまり今までのように、最初に空からの攻撃を行い敵の戦闘能力を失わせて、地上軍が攻撃に入るという効率的な戦闘方針が、市民の死者増大で反感を買ってきたので見直そうと言うのです。
・Exum(シンクタンク・新米国安全保障):我々は米国人の死者がより減るをたしかにしようとしているのでなくて、我々はアフガン市民の死者の数を減らすためにいるのだ。
McChrystal(アフガンの米軍の総司令官)は間もなく米軍とNATO軍に空からの攻撃に対する新ガイドラインを指示し、もし彼らが出来るなら、民家に隠れている過激派との戦闘を避けるように告げるだろう。
・Smith(米軍報道官): 彼は米軍またはNATO軍が、差し迫った危険にさらされるなら、民家に隠れている過激派を攻撃しても良いし、応戦すべきだと命令を出すだろう。
然し彼らが住宅街で攻撃を受けた場合は、彼らはその地域から不必要な軍への危険を避けて、脱出しても良い。 (攻撃または脱出の)どちらかを彼らかが選ばねばならない。何故ならそれらの住宅街にはタリバンによってしばしば一般市民が人質になっている可能性があるからだ。
今までのように強引に攻撃して一般市民を巻き添えにしないようにする考え方です。
今までガイドラインは強化されてきたが、この命令はアフガン国民を守るための米軍司令官による強い手段だ。
・国防省の役人や司令官達は一様に、この様な死者は彼らの暴動鎮圧の使命を傷つけている、何故ならそれは一般のアフガン市民に政府や米軍、NATO軍ほへの反感を抱かせているからだと言う。
・Excum:この変化は多分タリバンやたの過激派を勢いつかせ、市民の中に隠れたり彼らを人間の楯にすることを続けたり、さらに増大させるかもしれない。然し彼らがそうすれば彼らは国民から支持を失うだろう。
新ガイドラインによって、空からの攻撃は少なくなるし、不利な状況の中にいる地上軍に取っても選択の範囲が限られてくるだろう。
ガイドラインは彼らの選択肢の幅を制限するだろう。しかし使命は兵士(の生命)より優先する。しかし私はこのことで彼らがタリバンによって制圧されるとは思わない。
・Korb(シンクタンク・American Progress)::新しいガイドランには地上軍を守るものだ。
もし彼らが危険状態になれば、応戦する必要がある。しかしもし彼らが不必要な危険を避けて撤退するのも一つの選択肢だ。
然し市民を防ぐことについて考え直す必要がある。 問題は(一時的な)戦闘に勝つのではなくて、戦争に勝つ(戦争の目的の達成)ことだ。
市民の犠牲者はアフガン大統領と米国の間の摩擦の主な原因だ。
昨年では829人の市民犠牲者をだした。
・Excum:大事なことは必ずしも一つのガイドラインではなくて、アフガンに新しい優先事項を示すことであり、McChristal総司令官がこれらの優先事項をどんなものであるかをアフガンの部下の司令官達にに示すことだ。
彼はアフガンにおける作戦の考え方を変えている。
タリバンを殺すことと、市民を救うと言う選択肢があるとすれば、市民を救う方を選ぶことだ。
[私の感想]
米軍は第二次世界大戦で日本が、特に沖縄で経験したように、またベトナム、イラクなどでみるように、圧倒的に強力な空軍による空爆と、海軍や地上軍の砲撃で敵軍の戦力の殆どを消耗させた上で、(そして多くの一般市民も巻き込んだ上で)、地上軍(もとの日本で言えば歩兵)を突入させるのが伝統的な戦略・戦術でした。
しかしオバマさんに変わってからの影響もあるかどうか知りませんが、アフガンでもタリバン殲滅の作戦一辺倒から、農業支援などの「開発援助」へそして、アフガン市民の安全保障へと戦略を変えてきたようです。
問題は資料でも一部指摘していますが、
・生命の極限状態にある兵士達が(シンクタンクの人達が机上で考えるように)、新しいガイドラインを護れるか
・逆にみすみす敵を目の前にして撤退するなど兵士の士気が低下しないか
・タリバンが市民の楯作戦を強化しないか
・この作戦ではタリバンの崩壊や、今までの米軍への反感から支持に変わるまで長い年月かかると思いますが、それに米国がどれだけ辛抱できるか
など大きくて難しい問題が残っているようです。
しかしこの世界に大きな影響力を持つ米軍の作戦の"Change"は新しい試みとして一応は評価し見守って行く価値はあるような気がします。
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ブッシュ政権後期から国防長官になったゲーツ、オバマの対抗馬だったマケインとアメリカ中央軍が主導したやり方をオバマが踏襲している、ってのが軍事学的には正しい見方です。