昨夜のNHKでシリーズものの「日本の、これから「とことん話そう 税金」」と言う一般の人とゲストの財務大臣・伊吹文明,慶応義塾大学教授・竹中平蔵,経済アナリスト・森永卓郎,慶応義塾大学准教授・土居丈朗の4氏による討論番組があった。
テーマとして高齢者に対する福祉費の高齢者と若者の負担、財源として無駄による歳出削減か増税か、所得税増税の賛否、移住するとしたら高福祉高負担のスェーデン、個人責任重視の米国のいずれを選ぶかなどが討議された。
その中で気付いたことを書いてみた。
「ゲスト出演者」
NHKはこの種の番組には必ずゲスト出演者には必ず金子勝さんや遥洋子さんなど反政府的発言をする人を入れているが、今度の森永さん万人が知っているように政府批判の立場に立っている。
然し今までの反政府の立場のゲストと違うのはその発言だ。
Wikipediaでは彼の発言の例として
・「北朝鮮が攻めてきたら竹やりで対抗すればよいから、自衛隊は要らない」
・「戦争になったら自分はアメリカに逃げる」
・竹島問題について 「韓国にあげればいい、東京都内だって外国の投資ファンドに買われている。」等と発言、同席者から「竹島は武力による占領状態で日本の主権を無視しているが、投資ファンドは日本の主権を認め法律を守り、税金も払っている」と顰蹙を買った。
・憲法改正について反対し「仮にとんでもない奴が攻めて来たら、もう黙って殺されちゃえばいいんだと思うんです」「世界の歴史の中で、昔は日本という国があって、戦争をしなくって制度を守るんだって言い続けて、ああそんな良い民族が居たんだなぁと思えばいいんじゃないですか」
と挙げている。
公平、堅実を旨とするNHKが何故彼のような人をゲストに呼んだのだろうか。
今回の増税問題でも、主張の異なる伊吹さん、竹中さん、土居さんのいずれも歳出削減をしてもいずれ今の経済情勢では増税は避けられないと意見は一致しているのに、森永さんだけは「埋蔵金」を使えば良いと発言した。
他のゲストから埋蔵金を使ってもそれは一時的なもので、いつかにそれが無くった時はどうするかと言われて黙り込んでしまった。
彼らの一人は森永さんを報道バラエティーのコメンテーターとからかっていた。
私と同じように、政治、経済問題の専門家ではない一般の参加者は物事の一面だけを取り上げて発言するため、その発言に対する批判がでて議論が白熱するのは良いが、問題の重点が拡散しがちになるのを纏めるのが専門家のゲスト出演者だと思うのだが、今回は彼の登用で何時も以上に取り留めない議論で終わってしまった。
ことによるとそれがNHKの意図であるかも知れないが。
「質問の要点の説明のないまま設問」
・歳出削減か増税か
この問題で当然議論の対象となると予想される、政府機関の無駄を省くことについては、世界的な国会議員の定数の比較、公務員数の比較の数字を示すべきだった。
後者に付いては人口1000人当たりの公務員数では英独仏では33人から38人、米国は22人、スェーデンは26人に比して日本は世界最低クラスの17.1人で、国会議員定数は削減出来ても、公務員定数削減にも限界があることを知らせて置くべきだった。
・所得税増税
どのような所得税増税論の政治家でも、所得税増税の際は低所得者層を考慮して食糧品など生活必需物資については現状の5%を据え置き、それ以外について増税すると言うのが通例だ。
例えば一律10%アップなど言っては世論の反発を食うなどは常識だ。
議論で熱くなっている会場では伊吹さんなどのゲストもそのことをコメントするのに気付かなかったために、会場では所得税増税など「弱いものイジメ」などの議論に集中して、次第に問題の核心から外れることになった。
それで設問には「生活必需物資以外の消費税増税」について触れて置くべきだったと思う。
・高福祉高負担のスェーデン、個人責任重視の米国のいずれを選ぶか
ここでも、米国の場合、医療行為について健康保健会社が介入して来るので、過剰な医療行為にはチェックが入るが、(日本の社会では受け入れない)低所得者は難しく費用のかかる医療は受けられないことを事を説明して置くべきだった。
なおスェーデンを選んだ人達に対して、竹中さんがその中に増税反対論者が多く含まれていると指摘したが、それと1000人当たりの公務員数がスェーデンは26人、日本17.1人の数字は福祉問題の難しいことを示している。
[NHKへ]
前にも書いたが、NHKの今までのこの種の番組の進め方から見て、意見を纏めると言うよりも、問題点を浮き彫りにしようとしているようだ。
このような方針だから昨夜も一般の人達から政府が悪いと発言が続いたように、この種の報道を見た一部の人達からではNHKは反政府的だと言う批評も出ているようだ。
私個人はこの種の番組は非常に示唆的なもので評価している。
・それだけに、ゲストにはもう少し公平な立場の人を選ぶこと(それと一般出演者には特定思想を持った人も出来るだけ避けること)
・今までゲストから設問の仕方が良くないといつも指摘されていることを改善すること。
・短時間でこのような難しい問題を纏められないのは当然としても、担当スタッフの間で議論を重ね、取り上げる予定の問題について出てきそうな意見に相応しいデータを準備して、議論が拡散してとりとめのないまま終わることのないもっと有意義なものにして貰いたいものだ。
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ところで、こういう討論番組は、えてしてまとまった結論はでないことの方が多いものです。しかし、管理人様も述べられているように、立場の違う人々からの問題提起には、なるほどそういう問題もあるのかと思うことも多いものです。それだけでも見る価値はあるのではないかと思います。議事を進行する上での注意点はご指摘のとおりと思います。
しかし現実というのは誰にとっても共有されている事実ですから、これを以て反論することは問題の核心を見えにくくします。大切なのは、誰もが共有する現実に、各自がどのような道徳で向き合うのかということです。
そしてこの問題の場合「自由」と「平等」は決して両立しないという認識の下に「自由」と「平等」のどちらが優先されるべき道徳なのかということを、私達一人一人が先ず心の内に決定しなくてはならないのだと思います。
お二人のご意見はとても示唆に富むもので大変勉強になります。
今後ともなお一層のご助言とサポートをお願い致します。
伊吹大臣の発言は成る程ですが、大蔵OBですし、増税賛成を隠しての発言ですから、相当割り引いて聞く必要がありました。
一つの良い点は、一般視聴者の66%が先ずは歳出削減と答えたことです。従い国家公務員制度等の改革は間違いなく支持されていると思いますが、一方で、消費者庁創設に反対しないのはどうしてなんでしょうかね?官僚や政府は信用できないと既に証明済みです。