10月3日付けの毎日新聞は
民主党の小沢一郎代表が5日付の党機関誌で、インド洋での海上自衛隊の給油活動に代わる国際貢献をめぐり、民生支援の重要性を強調する一方で、「政権を担う立場になれば、アフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)への参加を実現したい」 と語っていることが2日分かった。ISAFは治安維持活動を行っており、参加すれば憲法が禁ずる海外での武力行使にあたる可能性が出てくる。
小沢さんの憲法解釈によれば、
小沢さんは「ISAFは国連の活動で、参加は憲法に抵触しない。派遣するかしないかは時の政府の判断だ」と語り、党幹部は「小沢代表の持論から言えば、武力行使を含むISAFへの参加は当然だ」と指摘している。
と報道している。
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小沢さんの主張
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小沢さんは給油活動は米国の戦争に加担しているので、憲法違反だと言い、ISAFの活動への武力行使を含む参加は合憲だと言う。
ここで改めて、小沢さんの言うISAF参加による武力行使が合憲か否か考えて見たい。
まず小沢さんの言うように自衛隊によるインド洋上の給油が違憲と言う問題だ。
[今までの経過]
・9.11を契機に米国によるアフガン侵略が始まった。
・米国を中心とする有志連合不朽の自由作戦(OEF)としてアフガニスタンを含む中央アジア地域を始めとする、少なくとも世界5箇所で対テロ作戦が展開されている
・日本もインド洋における海上給油その一貫としてその作戦に参加している。
・アフガン政府樹立以後のタリバンの活動が盛んになったことと、イラクで戦力を割かれた米国はアフガンにおける活動の中心をNATOに移管した。
・それは国際治安支援部隊(ISAF)として国連よりオーソライズされている。
・その結果対テロ戦争は国連公認のアフガンと未公認のその他の地域に別れている。
・国連で、賛成14,反対0、棄権1,で国際治安支援部隊(ISAF)と不朽の自由作戦(OEF)に対する謝意決議が行われた。
棄権票を投じた常任理事国のロシアについては、OEFが国連の枠外活動であることを主な理由として棄権したと国内では報道されている。
この経緯から判る様に、アフガン内のテロ戦争は国連公認、その他のテロ戦争は言わば国連の言わば黙認の作戦だ。
詰まり小沢さんの言う様に、自衛隊の給油は国連未公認の海上におけるテロ活動封じ込めの作戦の支援活動に参加しているのは問題だと言う事だけは筋が通っている。
(然し、給油した艦船がISAFへの支援に使われている時は、彼の言を借りれば合憲となる。)
そして、給油活動に法的な根拠としての自衛権の問題については、
憲法9条全体の解釈として、Wikipediaによると、
・自衛権を含め一切の戦争行為及び戦力を否認しているとする説
・自衛権は否定していないが戦争行為は否認しており、そのための戦力も認められないとする説
・自衛の範囲内ならば戦争も戦力も認められるとする説
。個別的自衛権は認めるが、集団的自衛権は認めないとする説
など今で定説はない。
然も肝心の自衛権も憲法のどこにも見当たらず、論拠は国連憲章の自衛権の規定を論争の根拠にしている。
然も、9条中の戦争、武力、武力の行使などの言葉自体の解釈が別れているそうだ。
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小沢さんの主張の問題点
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小沢さんの提起した問題を考える前に憲法の関連条文を書いておく。
憲法の前文の一部
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
9条
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
小沢さんの主張の詳細は判らないが、素人考えで推測すると、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使の表現から、日本国の国権でなく国連の権力主導による戦争は、憲法違反にならないと考えているしか考えようがない。
もしそうだとしたら、国連からの戦争容認の決議が出たとき、首相がその判断により日本軍隊を戦争に派遣しても、合憲になるのだろう。
然し、その出兵する当事者にとって生命の危険を冒してまで、自ら進んで戦地に赴くだろうか。
やはり時の首相が出兵が日本の国益に適うと判断して、国民を納得させ、然も国家権力により派兵を決定し、ある程度の強制力を行使する他はない。
つまり国権を用いて、軍の指揮権を国連に移譲することだ。
それが合憲だろうか。
極端に言えば、今後小泉さん以上に米国一辺倒の首相が現れて、私がいつも言う世界一戦争好きな米国からの要請で、日本の国権を米国に完全に移譲する形で参戦しても、合憲となる。
考えるだけで慄然とする思いだ。
然し、小沢さんの言う様に自衛隊の給油も憲法上疑義があるし、小沢さんの国連主導の戦争参加もそれ以上の問題だ。
彼の意見は多分憲法学者から鼻にも引っかけられないかも知れない。
国の存亡に関わる自衛権の問題が何時までも解決されないのは、安倍さんの「美しい国」ではないが、日本国憲法も余りにも理想を追い過ぎて、現実はなれをしているのを放ってきたつけが今の状態を起こしているのだ。
だから憲法解釈でさえ、憲法に記載のない国連憲章まで持ち出さなければならないのだ。
特に、問題ややこしくしているのは、憲法の前文の、
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
の記述だ。
日本の周辺にも、必ずしも諸国民の公正と信義に信頼できない国が多くいる。
小沢さんが信じる国連も権謀術数が飛び交い、自国の気にいらぬことは、拒否権を発動する米国、ロシヤ、中国などから足を引っ張られている団体だ。
[アフガンを巡る現状]
・アフガン戦争は現在は国連公認のISAFが関与しているので、給油が仮にアフガン戦争の支援に使われても、小沢理論では合憲になる。
・給油がテロ組織締め出しのための海上警備に使われていても、やっていることは所謂警察行為であり戦争とはかけ離れた行為だ。
これが憲法上疑義があるとしても、小沢さんの言う憲法の理念とは大きな乖離はない。
政府も今後後者に的を絞った給油に限定すると言っている。
・民主党は小沢さんの前は基本的には給油賛成だったが、今頃憲法問題を持ち出すのに国民の間に不信感が増大している。
政治家や護憲論者を含めた識者達と現状と将来を見据えた、憲法論議をして貰いたいものだ。
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民主党へ
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解散、総選挙かそう遠くない時に来ているそうです。
自民党は選挙戦略として、小沢さんが天下を取ったら、自民党のように国民の安全を考えた国際貢献でなく、国民の生命の危険を冒す戦争参加しかねないと宣伝するのはほぼ間違いないでしょう。
そんなときになってあれは小沢さんの個人的な意見だと言い訳しますか。
その選挙戦の成り行きを見て、今まで協力姿勢を取っていた社民党もその党是と言うべき護憲の立場から、民主党反対に廻るか協力姿勢の見直しをするかも知れません。
党内には小沢さんと反対や慎重な意見を持つ人も多いそうです。
民主党は今のうちに党の基本的な考えを統一しないと、思わぬ大敗を喫して、その結果、千載一遇の政権奪回のチャンスを永遠に無くすかも知れません。
前にも書きましたが、彼の発言は参院選の大勝で舞い上がって、つい油断した上の発言としか思えません。
民主党は攻撃のときはまだしも、防御に廻るとがたがたになるという性格を持っているようです。
私は自民、民主を問わず政権交代のできる時世がくるのを待っている一人です。
その点からも民主党が小沢さんのように、大勝に浮かれずもっと足が地についた党であって欲しいと願っています。
参照:
カテゴリー → 民主党
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