「投げ返す球から辣は抜いておく」
川柳くろがね3月号より
http://www.nissenkyou.or.jp/map/40fukuoka/kurogane.html
前月号鑑賞 真島久美子 選評
「トラブルの原因たんとある遺産」 志岐けい子
父が亡くなる前に「揉めるの嫌だから、ちゃんとしとってよ」と冗談で言うと「そんなもの無いけん心配せんでよか」と言っていた。それでも操めた話を周りから聞いていたので心配していたのたが、蓋を開けると本当になんにも無くて脱力した。
「爪かんでばかり冬には冬の海」 水谷そう美
爪を噛む癖は愛情が足りない証拠だと聞いたことがある。その癖が足りないものを埋める為ならば、なんと悲しい仕草なのだろうか。その悲しさに追い打ちをかけるように冬の海鳴りが聞こえてくる。どこまでも寒くて魅力ある一句だ。
「じんましん出てくるような世辞ばかり」 安部ももこ
謙遜するから蕁麻疹が出るのだ。私も昔は謙遜してばかりだったが、最近ではまんざらでもない顔をしているらしい。火のない所に煙は立たないと同じで、お世辞だって半分は本気だと思っている。まともに受け入れて楽しく生きたい。
「使い捨てカイロのごときコスパ恋」 独活乃枯朴
恋でよかった。これが愛なら大問題てある。愛になる前に使い捨ててしまうとは、なんとも豪快な話だ。だがよくよく考えてみれば、コスパのいい恋は恋と呼ぺる代物だろうか。使い捨て懐炉が冷たくなった時の気持ち悪さを思い出す。
7
火花抄 傘下の句会報より
中村 トシ子 選
ねずみより子どもが脛をよく齧る 雅彦
音程のずれからわかる酔い具合 廣
年金で中途半端に酔いました 聖
酔うほどに大風呂敷のつけを負う 昌子
今日だけはウソの甘さに酔ってみる 秀美
誰とでも仲良くなれる衣紋掛け 山彦
そこここを繕い語る母の過去 嘉代子
身の丈に合わせて欲を削る年 愛子
コンパクトパチン弱気をとじ込める みつこ
新米の私がつくる寿司御前 弥栄
新妻は顔にも磨き大掃除 民子
一人鍋ぐつぐつ愚痴も煮込んでる 孝子
懐の深さ男を太くする 裏風
わが心包んだままの片想い 蘭草
惚けてなくても薄らいでいく記憶 伸江
真似しないだけど自然に父に似る いっこう
口下手な人だがいつも笑ってる 春代
思春期の恋の切れはし持ち続け けい子
思春期の詩がこころにこびりつく つとむ
シャネル5がニキビ面から匂い立つ 龍太郎
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