また夏目漱石の作品を読んだ。「こころ」です。これは夏目漱石の後期3部作の第3作であるのこと。この小説の構成は前々回読んだ「彼岸過迄」、前回読んだ「行人」と同様に短編小説(この作品は3つ)を集めて一つの小説にした作品です。主人公は「私」で全編にわたって語り部のような構成になっている。「彼岸過迄」、「行人」に比べて独立性はなくて「こころ」3つの小説は従属性に富んで上中下のような構成です。
ざっくりと言うとこの作品は主人公の「私」が会った「先生」の経験した恋愛の三角関係の結果で親友を自殺に追い込んだ懺悔の告白小説であると思います。「先生」は遺書という形で「私」に告白して死んでいく結末で終わっている。
読んでみて思うのは「先生」の境遇を鑑みると愛と家族に飢えていたのでこれ(親友を自殺に追い込んだ)もありかなと思えてくる。実は「こころ」は約50年前の私が中学生の時に読んでいる、その時の感想は「先生」に対して憎しみの感想を感じていた。自分で連れてきた親友が自分の恋人に恋したから、あせって恋人を売約済みにして 親友を自殺に追い込んだと強く感じたから。でも、50年の時を経て人生の終盤になった今は「先生」に同情してしまう自分です。
「こころ」は夏目漱石の後期3部作の第3作の中で主題が明確で読みやすいがその分、答えが何通りもある奥が深い小説です。是非とも多くの人に読んで欲しいと思います。