テンちゃんとの出会いは2017年、正月明けの4日のことでした。
Xmasの日に消息を絶ったシャッポを捜して街を彷徨う自分に、店からの連絡が。
「新しいネコちゃんが来てる。よれよれなんだけど。」
店に来て初めてのテンちゃんの写真
それは激ヤセで、顔が張り子のようにコチコチで目も塞がった小さな猫だった。
ヒゲも切れ、体毛のあちこちが剥げて血が滲んで痛々しい。
傍に置いたご飯を探すのにも苦労していた。
店長さんにに抱かれると、自分から膝の中に納まった
(後で疥癬と知ってギョッ!)
ようやく食べ終わると、よちよちと人の気配を追ってくる。
固まった目やにをお湯でそっと拭く。すると、つぶらな瞳が現れた。
それがテンちゃんとの初めての対面でした。
全身手当てするスタッフにもなされるままだった
重度の疥癬と低体温。先生は一見して首を横に振った。
しかしスタッフの懸命の介抱と本人(猫)の生命力で持ち直し、先生を驚かせた。
当初は子猫かと思っていたが、10才は過ぎた老猫だと言われた。
病院で手当てを受けるテンちゃん
それから3週間後、すっかり回復したテンちゃん。
昼は3mのリード付、夜は事務所に独りお泊りの生活を始めたのです。
それからの2年間、本当にいろいろなことがありました。
自分はテンちゃんとの散歩が日課に、スタッフも何かと場所を移動してくれた。
甘え上手のテンちゃんはすぐさまお客さんの人気者に。
テンちゃんのいる風景が当たり前のようになっていった。
その一方で、リード暮らしがテンちゃんにとって幸せなのかと毎日のように考えた。
初めてのリードも慣れたもん?だった
2018年の晩秋、テンちゃんの体調がおかしくなった。
暮には食欲もなくなり、療養のため家に引っ越すことにした。
佐竹さんの来訪は、そんな晩秋の頃でした。
事務所やスタッフルームで仕事のお邪魔虫をするのも日課に
佐竹茉莉子さん。
「猫のいる風景」(Sippo)や「道ばた絵日記」(フェリシモ猫部)など、
温かい目で猫たちの生活を見続け、淡々と書き綴るライターです。
単行本も何冊か出版。その中の「里山の子、さっちゃん」では、
全身マヒの猫が仲間たちに支えられて元気に暮らす日常を綴る。
やさしさに溢れるその暮らしは動物番組などでも何度も紹介された。
テンちゃんはお花屋さんの看板猫になりました
佐竹さんはテンちゃんの評判を聞いて店に来てくれた。
そしてテンちゃんの暮らしぶりを書いてみたいと。
自分はお会いできなかったけど、すごいねテンちゃんと、店のスタッフ全員が喜んでいた。
しかし年が明けて佐竹さんの2度目の来訪のとき、店にテンちゃんはいなかった。
わが家に引っ越して療養生活に入っていたのでした。
病院が店の隣なので通院のときは店にも寄ったけど、残念ながら佐竹さんには会えなかった。
春には遊歩道の桜の下で戯れた
テンちゃんは慢性腎不全の末期でした。
家に来た当初は元気復活かと思われたテンちゃん、容態は徐々に悪化し通院が負担に。
慣れない自宅輸液の開始。しかし保護者の不安が伝わるのか拒否するテンちゃん。
嫌がるテンちゃんに追う保護者。
テンちゃんにとって何が幸せなのか、今度は「命」について考えさせられた。
SC内散歩中のテンちゃん(奥は公園の丘陵)
その年、2019年の6月に、テンちゃんは添い寝する自分の横で逝きました。
最後は思い出に浸りながら、いつまでもテンちゃんを撫で続けた。
楽しく充実した2年半でした。テンちゃんにとってもそうであったと信じたい。
その中でも、断片的に脳裡に焼き付いて離れない場面がいくつか。
また折を見て、書いてみたいと思います。
テンちゃんのキラキラ瞳
(疥癬完治後も殆ど目が開かなかったテンちゃんの滅多に見れなかった瞳)
※テンちゃんと過ごした2年半は、「テン」カテゴリーに思い切り詰まっています。