昨年の1月に店に現れたハルのこと、まだ覚えているでしょうか。
居着くのかと思ったら消息を絶ち、そして再会の繰り返し。
公園散歩のときに住宅街との間の遊歩道で見かけたことも2度あった。
昨年から今年にかけての「一見さん」カテゴリーは、ハルの記事で溢れています。
しかし今年の2月に姿を消して以来、見かけることはなかった。
Mさんが2月に新しい猫を迎えたと風の便りに聞いた時、胸騒ぎがした。
その猫の模様が「白地に両耳元とシッポの半分が黒」と聞いたからです。
それで先週末にMさんにお会いしたとき、ハルの写真を見せたのです。
「そうそうこの子、間違いない」とMさんとご主人。
そうなんです。ハルはMさん宅に保護されていたのでした。
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ハル、こんな子です
Mさんはハルのことを「ユキちゃん」と呼んでいた。
それにしてもどうやってあのハルを保護したのか・・、と訊こうとしたとき、
Mさんの思いが溢れて、一気にユキちゃんのことを語りだしたのです。
ユキちゃんは2年半ほど前、当時Mさん宅の庭に来ていたノラが産んだ子だった。
大変そうな子育てを見て、Mさんはその親子3匹を保護することにしたと言う。
しかし母猫と姉猫は保護できたが、ユキちゃんはどうにもできなかった。
警戒心が強く近づけない。その一方で家族と離れて不安そうなユキちゃん。
家には入らなかったが、家を離れることもなくMさんは世話を続けた。
やがてユキちゃんが大人になった頃、ユキちゃんはMさん宅から姿を消した。
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1年経った頃は、少しなら近づけるようになっていた
ユキちゃんが再びMさん宅に現れたのは昨年の初夏のこと。
1月に当店に顔を出して、春先に姿を消したその後のことだ。
ユキちゃんはしばらくしてMさん宅の庭で2匹の子供を産んだ。
Mさんは再び、何とか懐いてもらって家に迎えようとした。
しかしユキちゃん一家は警戒心が強く、なかなか人に懐かない。
だがそのうち、子供の1匹の様子がおかしいと気付いた。
弱っていたその子を保護し、掛りつけの動物病院に連れて行った。
食欲もなく鼻血が止まらなくなり、先生からは何か先天的な病気かもしれないと言われた。
病院通いと必死の介護にも拘らず、その子は半年後に息を引き取った。
手厚く葬り、その子の骨壺は今もMさん宅に並んでいる。
Mさんはユキちゃんに申し訳ないと思ったが、その頃ユキちゃんは再び姿を消していた。
もう1匹の子は男の子で、立派に成長して今もたまにMさん宅を訪れると言う。
今年の2月になって、ユキちゃんが再びMさんの家に現れた。
今度こそ、とMさんは思った。
母猫は娘さん宅に移ったが姉猫はまだ在宅だ。
姉妹を一緒にしてやりたいと思った。
今度こそ確実に、その一心でMさんは捕獲機を使うことにしたのです。
知人から借り、初めて使う捕獲機だったけど、思いのほか首尾よくいった。
ユキちゃんはこうしてMさん宅の家族になりました。
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今年の1月、遊歩道で出会う (ハル、よかったな)
しかし、それで万事うまくいったわけではなかった。
捕獲機から養生用のケージに移すとき、ユキちゃんが逃げてしまったのです。
以来、ユキちゃんは完全な家庭内ノラとなり、その状況は今も続いている。
姉猫ともう1匹の先住猫とはまあまあでも、人間は近づくこともできないそうだ。
さらに大問題が発生。
保護したひと月後、ユキちゃんがMさん宅で6匹の子を産んだのです。
ユキちゃんの子育てを見守りながら途方に暮れたMさん。
当初は里親さん確保に奔走したと言う。
しかし自分と話した時はもう覚悟を決めていて、みんな自分で育てるつもりだと。
Mさんは、お宅(わが家)と同じ9匹になっちゃったと言って笑っていた。
でも、家庭内ノラにやんちゃ盛りの3ヶ月が6匹。これからはもっとすごいだろう。
保護者の年齢もある。もちろんMさんも自覚している。
問題が山積なのはわかっている。
それでも念願のユキちゃんを迎えることができて、安堵に満ちたMさんなのでした。
さて、Mさんの話、実はハルのことだけではなかったのです。
次回はいよいよモドキの登場。
※「Mさんとハルとモドキ」(「モドキ」カテゴリー)に続きます。
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もうハルが店に来ることはありません