本記事は、「ノラたちとの共存を目指して・場外編その7」の位置づけとなります
本記事は先日書き上げたシリーズその8・地域猫問題を補完するものです。地域猫活動と言えばTNRが中心。そのTNRの概念は1970年代に英国を中心に導入されたと言われています。それが何を対象にしたものかは不明だが、ほどなくしてアメリカに導入され、動物愛護団体がノラ猫を対象に始めたようです。その8で述べたように、この概念を基にして日本で地域猫活動が提唱されたのは1999年のことでした。
当ブログの未手術3匹組;①ココ(店)
環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(2010.2)によれば、地域猫活動は猫の問題ではなく地域の環境問題としています。ノラ猫を減らす目的で行うTNRですが、長い時間(年月)を要するので、その間は猫を排除するのではなく住民が飼養管理してトラブルをなくす試みであると。つまり、動物愛護の観点から猫の生活を保障しながら、地域住民の被害をなくすことを地域猫活動の目的だとしているのです。地域猫活動を奨励する各自治体の目的も同様だと思います。
一方活動の中心となるボランティアさんは、過酷な生活を強いられているノラたちを救いたいという思いで活動を始めたと思うのですが、あまりにも多すぎるノラの数、無責任な住民からの依頼、そして非難、さらには猫捨てや多頭飼育崩壊や殺処分からの救出など当初は頭になかった日々やるべき事で手いっぱいになり、ノラ問題の全体像に目をやる余裕がなくなってしまう。かくして排他的になったり軋轢を生じたり、ノラ本位だったはずなのにノラの気持ちや事情はおろか待遇までが二の次になったりもしてしまうのではなかろうか。
自分はかつて、市で行っている猫の不妊去勢手術(無料)に申し込んだが結局辞退したことがあります。当時(2016年)の記事にもありますが、彼らの取り組み方や猫の扱い方に疑念を抱いたからです。実はその後も、ボランティア団体が行っている割引手術サービスに申し込んで結局止めたことがあります。理由はやはり猫の扱いに疑問を抱いたからで、説明の不親切や従わなければお断りの姿勢、何よりふた言目には「ボランティアでやってんだから」の言い草。正直、こんな人がボランティアやってて猫の命は大丈夫なのだろうかと不安に襲われたのでした。
TNRの問題点やメリットデメリットについては、ネットで検索すれば山ほどでてきます。その多くは「人間にとってどうか」という観点から論じられているが、獣医師さんの記事は猫に対する配慮を含んでいるものもある。前記事に書いたサクラの先生の懸念はずっと以前から自分も抱いていたもので、要約すると;
1.(耐性も調べずに)いきなり麻酔をすることのリスク
2.手術後の養生期間が十分にとられていない
3.リターンした後に消息を絶ってしまうリスク(術後観察ができない)
②ケン(家)
1.は先生の専門だが麻酔で命を落としてしまう猫もたまにいると。2.について先生は♂猫で10日、♀猫で1ヶ月は必要としているが、手術したその日のうちにリターンされることも結構あるらしい。今は抜糸不要の方法で縫合するのでちょっとしたことで患部が開いてしまうのだと。特に開腹手術となる♀猫の場合はお腹の毛を剃ってしまうし、術後の保温が必要な時期に寒い外に出してしまうのは危険が大きいと。3.については先生やボラさんのブログから、リターンした後2割くらいのノラが消息を絶ってしまうそうだ。やはり怖いことされてその場を諦めてしまうのだろうが、傷付けられて場所を追われて、当の猫にとってはまさに最悪のパターンだ。しかし逆に養生期間が長すぎると、リターンした後にこれまで通りやっていけるのかという懸念が生じるというジレンマもある。
本ブログでも自分は当初、TNRに対して懐疑的でした。しかし「ノラの本懐」や本シリーズその7(形而上学編)で述べたように、すべての生物にインプットされたDNAすなわち野生の本能(=種族保存の本能)がその生物(個体)の行動を規定し、どんな恐怖や命さへよりも優先する限り、その個体が幸せになどなり得ないのだと知った。人間は理性でその本能を克服したが(ごく一部の性犯罪者除く)、動物たちをその本能から開放する方法はないものか。種族保存のDNAは適宜様々なホルモンを分泌させて行動を規定するのだから、できるならホルモンの分泌機能を削除してしまえばいい。それで不妊去勢手術に前向きに転じたわけです。そうであれば獣医師さんたちがおっしゃる通り、人間だけでなく当の猫にとってもメリットなのだと思う次第です。
しかし手術やその前後の処遇が猫たちにとってリスクになり得ることは述べてきた通りで、当の猫自身のために行うTNRは、彼らに対して細心の注意と気遣いをもって行われなければならないものだと、心してほしいのです。
③サクラ(家)
「ノラたちとの共存を目指して」目次 ※予告編(期日未定)含む
その1 資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題) 2017.2.27
その2 現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち) 2017.5.31
その3 エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの) 2017.8.31
その4 一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みう+テンちゃんの日常) 2017.11.30
その5 闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」 2018.4.29
その6 原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動) 2018.8.31
その7 形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う) 2020.1.31
その1 資料編「現状と動向調査」(追記:餌やり、地域猫問題) 2017.2.27
その2 現場編「ノラを守るのに理由は要らない」(報道されたボラさんたち) 2017.5.31
その3 エサやり問題・続編「裁判事例の検証・他」(司法が肯定したもの、否定したもの) 2017.8.31
その4 一服編「ノラだからこそ・・かわいい!」(ニャー&みう+テンちゃんの日常) 2017.11.30
その5 闘魂編「許さない、虐待に不法投棄に暗闇ビジネス」 2018.4.29
その6 原点回帰編「再確認・人間性とは?」(食肉、動物駆除と保護活動) 2018.8.31
その7 形而上学編「ノラの幸せとは」(シャッポやソトチビの行動に想う) 2020.1.31
その8 地域猫問題・続編「殺処分ゼロに向けて」(目的達成のために必要なこと)2022.11.30
その9 理想追求編「殺処分ゼロの先にあるもの」(対等の精神と真の共存)
その10 最終章「共存の終焉」(ノラのいない社会)
その9 理想追求編「殺処分ゼロの先にあるもの」(対等の精神と真の共存)
その10 最終章「共存の終焉」(ノラのいない社会)
番外編
番外編1「罪と罰」(法の実行と刑罰の妥当性) 2019.3.29
番外編2「動物愛護の精神を問う」(餌やり議論の本質) 2019.10.31
番外編2「動物愛護の精神を問う」(餌やり議論の本質) 2019.10.31
番外編3「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(前編)」(特別加入) 2020.6.30
番外編4「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(後編)」(特別加入) 2020.8.31
番外編5「政治とメディア」(ノラたちの未来を決める人たち) 2021.1.31
番外編4「エサをやるなは殺せと同じ・第3弾(後編)」(特別加入) 2020.8.31
番外編5「政治とメディア」(ノラたちの未来を決める人たち) 2021.1.31
番外編6「保護に奔走する人たち」(その2とその6の補足)
場外編
場外編1 猫の煩悩とはこれ如何に 2021.7.10
場外編2 続・死刑に処すべし? ~死に体・動物愛護法の復活を期して~ 2021.7.21
場外編3 どうしてこんなに軽いのか <続・続・死刑に処すべし> 2021.11.10
場外編4 メディア批評、の・つもりが・・(国民の鏡としてのメディア) 2021.11.24
場外編5 社会の闇 (残存する「当たり前のように猫を捨てる文化」) 2022.6.29
場外編6 ジレンマ(猫捨てを補完するノラ保護活動)2022.7.31
場外編7 ノラたち自身のためのTNR ~命と生活を守るには~
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