今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

貫禄と風格 ~モドキの成長~

2019年04月17日 | モドキ
先月に別の記事で少し紹介したモドキです。
1月に消息を絶っていたのが、先月になってふらっと顔を出した。2ヶ月ぶりの再会でした。もともと数ヶ月空けることもよくあったので、当店以外にも拠点のあることはわかっていた。しかし昨秋は店に入り浸りですっかり店の子気取り、いよいよこっちもお迎え準備かと思ったのですが、師走に入るとご飯も食べなくなって来店頻度も減ってきたのです。

モドキは先月の再会以降、スタッフが数回出会ってます。自分も2回ほど会いました。来るのは比較的遅い時間で、店に来るというよりは巡回の通過点といった感じ。たまに事務所の前や、先日は誰もいないスタッフルームの中でじっと座っていたとか。そして挨拶して帰る。付き合いで少し食べることもあるけど、殆ど食べない。空腹でないことは確かです。


事務所に戻ったらその前でポツンと休んでいた

そのモドキは、まるで別猫みたいに変わりました。とにかく体格が大きくなった。動きも以前のようにあどけなさの残ったチョコチョコした感じじゃなくて、のっしのっしと悠然としている。最大の変化は鳴かなくなったこと。あれだけ甲高い声でピーピーキーキーうるさかったモドキが、まるで嘘のように鳴かなくなった。今回の出会いの中でも誰も声を聞いてないのです。その落ち着きぶりには貫禄と風格も。ああ、立派な大人になったんだなあと感慨もひとしおです。

実際、テンチビやミケチビが店内でちょろちょろしていても気にしない様子。以前とは随分変わったものです。そんなモドキですが、店でも特に近い存在だった自分や妻やK君は覚えているようだ。先日は去り行くモドキを見つけて呼び止めたところ、振り返っただけじゃなくて戻ってきた。そして近くにちょこんと座ってしばしの挨拶をしていきました。


店を通り過ぎるモドキ
この後呼び止めたら戻って来た

先月で2年の付き合いとなったモドキ。その生活が安定していれば何よりだ。でも食事をどこかでお世話になってるにしても、ノラ生活に変わりはない。いつ生活の根拠が喪失するとも限らないし危険も多いのだ。なのでモドキは、いまだに保護したいノラ候補の筆頭です。ただ現実的に考えると、今の状況ではテンチビや(家裏の)顔白くんの方が先になりそう。というのも、この2匹は最近になってお近付き度が急上昇。まだ触れないモドキよりもお迎えの可能性が増してきました。


スタッフルームの前で

問題は既に8匹となったわが家。当面はシロキ以外里親さん探しの予定もありません。新しく迎えた子の里親さんが見つからなかったときのことを考えると、保護者の責任を果たせる範囲というものを見極める必要があります。そんな保護者の事情を待ってはくれないノラたちが不憫ではあるけど、何とかもう少し繋いでその間に道を開いていきたい。でも、今何とかしてもノラは次から次へと現れる。エンドレスなんですけどね。


落ち着いたもの静かな猫になりました

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やさしい保護者にやさしい猫 ~オジンの反省文~

2019年04月13日 | ニャー
この正月に膀胱炎と尿路結石で大変な思いをしたニャーのことです。
再発した膀胱炎も治まって、輸液も抗生物質も今月に入って止めました。今は普段と変わらない生活です。先生が推奨する療法食は頑として食べないので、市販の中から探した尿路健康用のカリカリ(ユニチャーム「ねこ元気」)を中心に食べています。ニャーはもともと吐き易い猫で、特にレトルトなどは十中八九食べた途端に吐いてしまうのですが、このカリカリは沢山食べても吐かないので助かります。今のところ再々発はなさそう。抗生物質を長く続けたのと、オシッコがそこそこ出るようになったのが大きかったと思います。


"日光浴"の窓から外を眺めるニャー

それにしても、本人(猫)にとっても保護者にとっても大変な2ヶ月間でした。幸い快方に向かったものの、どんなに後悔してもしきれない結果を招いたかもしれなかった。というのも、ニャーをここまで追い詰めたのは他ならぬ自分だからです。それまでのニャーがどれほどのストレスを溜めていたのか、今ならはっきりとわかるのです。

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ニャーは店時代から利発な猫として評判でした。人の気持ちを読んでそれに合わせて行動する。とっても穏やかで、出会ったときから旧知の仲だったような行動。間違いなく家猫だと思って飼い主を探し続けた。その1年間の、店でのノラ生活はとても安定したものでした。わが家に来たときも落ち着いたもの。お膳の上の食べ物を盗むでもねだるでもない行儀のいい猫です。ニャーを育て、しつけた方の悔恨が推察されました。


レジカウンターで休む店時代のニャー
お客さんに愛想を振りまいて好評だった

店時代のニャーとは自分が一番近い存在だった。その延長で、わが家に来てからも気心の知れた猫として、かつて自分の分身だったテツの後継的存在となったのです。それが、みうと出会った頃に様子が変わった。ニャーが家に来た頃まだ外にいたみうを、脱走したニャーが2度ほど襲った。そしてその半年後、家に迎えたみうをニャーは排除する行動に出たのでした。

ニャーが突然見せた攻撃性に、戸惑ったのはみうだけでなくこの保護者もだ。何とか仲良くさせようと、みうを追うたびにニャーを叱った。保護者との蜜月を望むニャーの心情を慮って、わが家の生活はニャーが中心だった。常にニャーのストレス軽減を心掛けたつもりだった。だけどひとつだけ、ニャーに多頭生活という保護者の都合を理解してほしかったのです。

それから1年半の間に、わが家は8匹まで増えました。どのような基準でそうなるのかわからないけど、ニャーはリンやハリーに対しても排除行動に出た。近付けば眼付けをして、追い回して襲う。平和な猫たちの生活にあってその行動は目立ち、そのたびに緊張感が走った。そのうちニャーを慕っていたちび太までが、リンを追うようになった。

家の猫たち全員が平和で仲良く暮らしてほしい。その願いがニャーへの過剰な制止に転じた。みうやリンを追う度に大きな音を立ててニャーを追い、徹底的に追い詰め、隅で身構えるニャーを大声で叱責した。わなわなと半分涙目で、小さく毛を逆立てて全身を震わせ、身を低くして潰れた声を漏らすニャーを何度も叩いたりもした。「そんなことしても猫にはわからないわよ」「ニャーの性格が変わっちゃう」 妻の悲痛な言葉は頭では理解できても、ニャーが懲りて止めてほしいという願いの方が強かった。

それでも、ニャーのストレスを気にしていた。当時の自分の記事を読み返すと、ニャーのストレスが多頭生活からくるものだと思い込んでいる。何という愚かさだ。自分は本当に、嫌味で最低最悪の保護者だった。猫たちの平和を乱していたのは紛れもなく自分でした。とまどっていたのは、自分じゃなくてニャーの方だったのです。

当時のニャーとは信頼関係が完全に崩壊していたと思います。それでもニャーは、自分が穏やかにしているときはそっと寄り添ってきた。もう怒らないでと、祈るような気持ちで寄り添ってきたに違いない。


当時のニャーの視線は、信頼というより警戒だった?

自分の転機は昨年の9月、「ブログ2周年」の記事の中でその兆候が見られます。でも上から目線で、まだ本気で自分の愚かさと向き合っていない。その後、年末に書いた「気心の知れた猫」の中で、ようやく自分自身が問題の種だったことに気付いたのでした。

しかし、そのときはもう遅かった。ニャーは正月早々災禍に見舞われることになる。それは膀胱炎、急性腎炎、そして尿路結石という生死に関わる病魔でした。そのいずれにも、ストレスが主たる原因のひとつとして挙げられている。そしてそれからの2ヶ月間、ニャーはオシッコが出ないという断末魔の苦しみの中で、この病魔と闘うことになったのでした。  
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今はもう忸怩(じくじ)たる思いでいっぱいです。何より、本当にニャーに悪いことをした。この危機を乗り切ってくれたニャーは自身だけでなく、危うく人の道を外すところだったこの保護者まで救ってくれたのでした。

自分にとって、ニャーはこれまで以上に大切な猫になりました。その思いを行動としてニャーに伝えています。猫はものを言わない。でもコミュニケーションをとることはできる。そのコツは、あらゆる思い込みを排除することなんだと改めて思い知らされました。ニャーは今、かつてのように自分が家にいるときはいつも傍にいてくれます。そして目を細めてじっとこっちを見ている。これまで殆どなかった、自分から膝の上に乗ってくることも多くなりました。


オジンの膝の上でニャーとみう
何と、みうがニャーにくっついて寝てる

そのニャーの最近の変化で特筆すべきは、他の猫たちにやさしくなった(ように見える)こと。みうやリンが近くにいても眼付けしたり追わなくなった。それどころか、みうとはオジンの膝の上に相乗りすることも。懸念されたテンちゃんとの諍いもありません。相変わらず吠えまくるテンちゃんをうまくこなしています。(テンちゃんも吠えるだけで手は出さない。) ニャーは、保護者を見習っているのだろうか。


向き合って休むニャーとテンちゃん
この後、ともにそのまま眠りについた

やさしい猫はやさしい保護者の下で育つ。そんな実感が持てるようになった今日この頃です。

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続・かわいい理由 ~幸せホルモン・オキシトシン~

2019年04月09日 | (故)チビ 
SCの裏手を通る遊歩道の桜並木が満開になりました。
東京より10日ほど遅れての満開です。
毎年のことですが「ああ、春だなあ」と思うと同時に、チビのことを思い出します。


満開の桜並木
中央ひときわ目立つ木がチビを2度目の落下から救った

チビについては、そのカテゴリーの中で語り尽くしてきた。
その思いは、過去記事「続・子ニャンの賛歌」と「子ニャンの勇気」に集約されています。


チビの事故現場(バス通り、奥にチビを救った桜の木)
3度目の落下のときは川の水が干上がっていて、チビがバス通りまで来てしまった

彼を亡くした無念さと自責の念から、このブログを始めました。
そしていろいろな出会いが、今も続いています。
ニャンコたちの持つ純粋無垢な心根に触れてしまうと、
その心地よさに、離れることができなくなってしまったのかもしれません。


チビは人馴れ途上の、アスリート体型の活発な子猫でした(再掲写真)

何故猫なの?
度々書いてきたように、好きになるのに、そしてかわいいと思うのに理由なんて不要です。
こんなに純粋でかわいいのに、想像を絶する過酷な生活。
ノラたちが背負うその運命の不条理さに、心ある人は動くのです。
野生の猫ではない、ノラだからこその宿命だから。


チビがニャーやシャッポと飛び回った裏駐車場
今では(店に来たときの)テンちゃんの散歩コースです

ところで最近は、猫をかわいいと思う感情が科学的に解明されつつあります。
その鍵を握るのが、「オキシトシン」と呼ばれる生理活性物質。
「幸せホルモン」とか、「癒しのホルモン」などと呼ばれています。
  ※「オキシトシン 猫」で検索してみて下さい。

この研究は従前から行われていたものです。
自分も、学生時代の研究テーマの延長で生理活性のメカニズムには興味がありました。
しかしオキシトシンは、アメリカの著名な科学誌「サイエンス」に、麻布大学獣医学部の永澤らの報文が掲載されたことで脚光を浴びることになります。それは、犬と飼い主が見つめ合うことで双方にオキシトシンが分泌され、お互いに癒されるというものです。オキシトシンは幸福感をもたらすホルモンとして知られていました。野生のオオカミではこの現象は見られず、遺伝子的に変化した"飼い犬"にしか見られなかったのです。

さらに、京都大学の堀越らは野生の猫と家猫(ノラ含む)の遺伝子的な違いについての最近の報告で、鍵を握るのがオキシトシンだと推察しています。つまり、家猫には野生の猫にはない癒し効果がある? これらの内容がNHKなどのテレビ局で特番として報道されると、世の中が俄かに色めき立って、前述の検索の結果となっているわけです。

もちろんまだまだ、更なる実験や解明が必要だ。しかし人間の近くで暮らすワンちゃんニャンちゃんの癒し効果が科学的に解明されつつあるいということ。これは言い換えれば、ワンニャンの癒し効果が本当にあることが証明されつつあるということなんです。すごいですね。科学というのは、本当にすごい。

今後は、介護の分野でもアニマルセラピーがますます脚光を浴びてくると思います。介護だけでなく、一般の社会でもワンニャンの価値がもっともっと高まって、それがノラ救済の大きなムーヴメントに繋がればと願って止みません。


今日のテンチビ
まだ触れなくても、鼻先でゴロゴロされれば癒し効果も抜群です

ところでチビよ、
お前の生まれ変わりのはずだったちび太の最近の体型は・・・。
お前もあと少しで、あんな体型になったんかねぇ。
(3つ前の記事をご参照下さい)


「フン!」(ちび太)
「あれ? オレの写真、何だかちいさいぞ」

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頑張れみう ~物静かな猫の挑戦~ 

2019年04月05日 | (故)みう(おかあさん)
主張しない猫、みうです。
トイレ以外は殆どリビングで暮らす「リビングの主」。キャットタワーからピアノの上の寝床、リビングに置いたパソコンの周辺、ストーブの前かホカペの上、天気のいい日は窓辺。大抵はそのいずれかでじっとしています。別に他の部屋に行けないわけじゃなく、暖かくなればきっと、また日当たりのいい2階まで足を伸ばすことでしょう。


みうのお気に入りはピアノの上の寝床です

いつもいるのにみうは静かで目立たない。でもよく見ていると、首をくるくる動かしていろんな事に興味を示している。やっぱり猫は猫。でも弱難聴のみうはどうしても慎重で臆病になって、行動に移るのに時間がかかるのです。なので動く機会を逸っしちゃう。家裏で外生活時代は行動的で俊敏でした。あの時代は他の猫に遭遇する機会が少なかったから、気にする必要もなかったのだろう。今はちょっと、猫密度が高過ぎるのかな。

もともと雌猫は男子と較べると大人しい。それでもリンは1日に1度はハッスルタイム(独り運動会)があるし、みうも家に来た当初はそうだった。ニャーやちび太に狙われるので、オジンがいるときにやるのが常です。みうは、いつから運動会を止めちゃったんだろう。


パソコン前で
ここにオジンが座ると大急ぎでくっつきに来る

でもふっくらしてきたということは、少しづつ自信がついてきたのかな。ニャーに睨まれても交わせるようになったし、テンちゃんに唸られてもひるまなくなった。悪ガキたち(ちび太にキー、クウ)に絡まれてもそれとなくこなしています。

先日、みうが常用しているピアノ上の寝床にツインズ(キーとクウ)が入っていた。みうが入りたくなっても出てくれない。みうは、ピアノやキャットタワーの中段からたびたび様子を伺います。でもなかなか出てくれない2匹にしびれを切らしたのか、思いがけない行動に出たのです。


みうの寝床に納まったツインズ
やがてみうが寝床に入りたくなって・・

リビングの何ヶ所かにセットした寝床はダンボール箱に毛布を敷いた簡単なもので、それぞれが1匹用の大きさになっています。しかしキーが中で寝ていると必ずと言っていいほど後からクウが割り込んできて、ぎゅうぎゅう詰めになってあのツインズ特有の光景になる。そのときも、寝ていたキーの上に無理やりクウが割り込んでいた。ところがみうは、まだ僅かに残った隙間にさらに割り込もうと試み始めたのです。

おお、何と積極的なみう。テレビを見ていた自分はみうの思わぬ動きに驚いたけど、ついつい応援しちゃいました。みうはゆっくりゆっくりと、しかし諦めずに僅かな隙間に割り込んでいく。一方のキーとクウは何だ何だという感じで、拒絶するでもなくみうの動きに合わせて詰めていく。まあ、ウェルカムじゃないけど仕方ないなあといった感じ?

でもさすがに3匹は無理でした。それでもみうは諦めない。ごりごりと無理やり、少しづつ奥へと入っていく。そのうち一番下のキーが「こりゃたまらん」と出てきて、結局みうがクウの上に乗って納まった。キーは諦めて寝床の前で寝てました。何気ない日常のひとコマですが、ああ、わが家の猫たちはもうすっかり家族なんだなあと思った次第です。

よし! みう、その調子だ。
頑張れみう。


クウの上に納まったみう(手前にキー)



おまけ:たまにニャーもやって来ます(別の日、手前はクウ)


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キーの大冒険・そのときクウは・・

2019年04月03日 | リン(旧イエミケ),クウ,キー
大冒険? いえいえ単なる脱走です。
脱走と言っても別にキーは逃げようとしたわけじゃない。猫が外に興味を持つのは仕方のないこと。これは言うまでもなく保護者の過失です。それにしても何? このタイトル。ええ、そうなんです。確かに1年前の脱走のとき、自分は自責の念と悲壮感に溢れてました。シリーズ「ノラと家猫と」の記述はホント、情けない限りです。でも今回は同じ脱走、同じ過失なのに、1年前のときとは自覚できるほど心境が違いました。

前回との決定的な違いはキーが必ず帰って来るという自信、いや信頼です。この1年の間にそれだけの信頼関係を培っていたのか、あるいは保護者(自分)の成長(?)なのかはわかりません。いずれにしても、対応さえ間違えなければキーは必ず帰って来ると確信していました。もっとも正直なところ、時間が経つにつれて自信が揺らぎつつはあった。でもキーはこっちの気持ちが折れる前に、自ら帰還したのです。

今回は自分が冷静だった分、クウの不安を察する余裕があった。「ツインズ」として度々紹介してきたように、キーとクウは切っても切れない仲。しかもどちらかと言うと、クウの方がキーに依存していたのです。日頃から、相手が1時間も見えなければ互いに探し回る。猫だから思わぬところで寝入ったりするわけですが、自分が探されているのに返事もしない。それでも、いつの間にか合流しているんですね。


見ているだけで癒され通しの「ツインズ」です

そのキーがいなくなった。前々回の記事を書いた翌日の晩のことです。珍しく夜の19時頃に新顔ちゃんが来たので、勝手口からご飯を出した。猫たちはリビングや2階にいることを確認。それだけ離れていればまず大丈夫、のはずだった。その時はちょっと前に来た顔白くんの残りを片付けようと思ったら少しこぼれていたので、勝手口から身を乗り出して集めたのです。

気付いたらキーが自分の横にいて外を眺めていた。ビビリのキーにしては思いがけない行動でした。慌てて空いた左手でキーを止めようとしたが、それが逆にキーを驚かせてしまった。キーは左手を掻い潜って勢いよく外に飛び出し、あっという間に夜の闇へと消えた。慌ててドアを閉めて、再び開けて様子を伺うと新顔ちゃんも消えていた。

途端に激しい後悔。自分の愚かさを嘆きました。でも何故か冷静だった。キーがそのうち戻って来ると思えたのです。むしろ新顔ちゃんに申し訳なかったなと。クウは、リビングにセットされた寝床のひとつで爆睡中でした。

勝手口の扉を少し開けて様子を伺っていると、顔白くんがまたやって来た。顔白くんはなかなか帰らず、40分くらいしてようやく消えた。が、間髪入れずに黄白くんが現れた。最近は殆ど見ることがなかった珍しい来訪でした。どうなってるんだ? 黄白くんは好戦的なのでちょっとまずい。彼は結局2時間近くも居座って、カリカリを少しあげて帰ってもらった。

それからトイレ砂を家の周りに置いて、キーの好きな食べ物も置いた。置き餌はその後頻繁に消費されたが、どうやら顔白くんが食べているようだった。そのうち、近くで短い猫の威嚇声が。キーか顔白が黄白に追われたように思えた。その頃、クウはもう起きていて何か落ち着きがなく、盛んに勝手口(の換気口)から外の気配を伺った。いやクウだけじゃない、リンもニャーもちび太も、盛んに外の様子を伺った。キーが外にいることがわかっているようだった。




猫たちは代わる代わる外を眺めた
(上からクウ、リン、ニャー右とちび太左)

猫たちの様子を見ていれば、キーが戻ってきたかどうかわかる。2、3時間で戻るという当ては外れたけど、まあ時間の問題だくらいには思っていた。その晩はリビングの掃き出し窓を少し開け網戸を通して外気と触れられるようにした。1年前のとき、キーは外猫のいた勝手口を避けてリビングから戻って来たからだ。猫たちは、交代でリビングと勝手口から外の様子を伺った。


リビング窓の隙間から外を見回すクウ(右はシロキ)

それから「大脱走」や「ノラと家猫と」のカテゴリーにある記事を何度も読み返した。あのとき、キーは24時間後に帰還したけどクウはまる4日間消息すらつかめなかったのです。それでも帰って来た。キーも必ず帰ってくる。焦らずに待とう。自分は徹夜しました。妻や他の猫は寝に入ったけど、クウはリビング窓と勝手口を交互に回って外を見続けた。夜が白みだした頃、前例に倣ってキーの捜索をしたが気配すら確認できなかった。キーを見つけるなんてとても無理そうだったし、むしろキーが戻って来たときに自分がいなければまずい。そうはわかっていても気が落ち着かず、結局その日はキーの捜索を7回も行ったのです。

クウはその日もリビングや勝手口からずっと外を見続けた。途中ご飯と少し寝たようだけど、殆どこの保護者と行動を共にした。クウは珍しく自ら保護者の方に何度も寄って来た。そして大きな目で人の顔をじっと見る。何だか責められているようにも思えたが、クウの表情はそうではなかった。困ったときの神頼み、いや保護者頼み。クウは藁をもつかむ気持ちで、この保護者に救いを求めているように見えたのです。リン一家を引き離すなんてできない。そう書いたのはつい先日の記事でした。まさかこんな形でツインズが離れ離れになるなんて・・・。




その日1日、クウは外を見続けた(上から未明、昼、晩)

キーは日暮れになっても現れなかった。その日に限って、暗くなってもガタガタと庭仕事をしている裏のB宅が恨めしかった。妻が帰宅した直ぐ後の19時半頃、勝手口から外を見ていたちび太が反応した。直ぐにニャーとクウが駆け寄る。自分も慌てて近付くと、外でキーの声がした。とてもか細くて、とても弱々しい声だったけど、間違いなくあの甲高いキーの声だった。見ると、風呂場の前あたりでキーがちょこんと座ってこっちを見ていた。24時間ぶりのキーの姿でした。

所在がわかれば元気100倍。それからはドア開けキーのお迎え作戦を何度も繰り返したが、怯えて慎重になっているキーはなかなか入って来ない。キーを待てずにドアを大きく開けて逆に脅かしたり、身体半分中に入ったところで大きな音をたてて逃げられたり、顔白くんが現れたり、突然スコールのような大雨が降り出したり、極めつけは廊下側のドアを開けたちび太が外に出ちゃったり(このときは妻がすぐに外に出て抱き上げた)、今にして思えば漫画のようなバタバタ劇を繰り返した。結局中の猫たちをそれぞれの部屋に閉じ込めて完全ドア開け作戦に切り替えると、キーは間もなく家の中に入って来たのでした。

こうしてキーの大冒険は終わりました。いや、冒険と言っても近くでじっとしていただけかもしれない。キーは戻った後も一晩は怯え声でした。今回は手厚いお迎えをしたのはちび太だけ。他の猫たちはいつもと変わらなかった。クウも、キーと再会した途端にずっと一緒だったような顔になりました。


キー帰還の翌日、何事もなかったかのように過ごすツインズ


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