ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

気仙沼・羽田神社奉納

2018-09-04 01:45:45 | 能楽の心と癒しプロジェクト
8月12日の日曜日、気仙沼の羽田神社(はたじんじゃ)で奉納上演させて頂きました。
この朝、何度もプロジェクトの活動に参加くださっている太鼓の大川典良さんも到着。



大川さんはその前日には横浜で催しがあり、それが終わってから東北に駆けつける、とのことでしたが、なんせこちらの奉納の開始が午前10時。。
深夜に車で走って来る、とのことでしたので、がんばって気仙沼の宿舎(個人宅)まで来れば。。とお勧めはしたのですが、結局多賀城に深夜に宿泊することになったそうでした。
え。。多賀城から気仙沼までは車で2時間の距離。。
朝の奉納のためには、また多賀城から早朝に出発しなければなりません。
それでもこの日、無事に気仙沼に到着されました。相変わらずのバイタリティ。

さて羽田神社は気仙沼では有名な神社だそうで、それというのも「お山がけ」という神事が国の重要無形民俗文化財に指定されているからです。
「お山がけ」は数え七歳の男児が神社の裏にある羽田山に登って奥院に参拝し、無事の成長を祈願する行事で、全行程は2時間ほどのようですが、さすがに小児のことですから登山には同伴者が必要。しかし両親の同伴は我が子への情けを断ち切るためか禁止で、通常は祖父や叔父さんがつきそうのだそうです。

子どもさんは登山がつらくて泣いたりしないのですか? と総代さんに ぬえは聞いてみたのですが、子どもはつらいようだが途中棄権の例はないです、むしろ同伴のお爺さんが先に音を上げたりしますね(笑)とのこと。

まあ、こういう神事は似た例もありそうなものですが、こちらの神社の「お山がけ」は広く気仙沼全域。。それこそ町村合併以前の唐桑地区や本吉地区からの参加者もあるそうです。さらにはお祭りの際の御輿の渡御も、羽田地区だけではなく気仙沼の広い範囲を廻るそうで、この神社がいかに崇敬されていたのかが分かります。前日に泊めて頂いた ゆかぽん家でもこの「お山がけ」に参加したことがあるそう。

さて羽田神社の拝殿・本殿は急勾配の階段の上に鎮座しています。が、現在では参拝者もこの急段を登るのは難儀とのことで、我々プロジェクトの奉納場所も拝殿ではなくふもとの社務所となりました。ぬえもがんばって装束を階段で運び、拝殿で着付けて奉納するつもりだったのですが。。社務所で良かった。。もとい、残念でしたw

羽田神社は気仙沼の水梨地区あたり、だとは神社の住所を見て見当はつけていたのですが、実際はかなり山奥、といったところで、それでも奉納上演にはかなりの参詣者が集まってくださいました。






(↑撮影:小野寺由美子さん)

能「羽衣」の奉納のあとには いつものように能楽体験会も。



終演後。。と言っていいのか、楽屋に割り振られた社務所の一角に飾られた「吊し雛」の紐がもつれていたのは能楽師3人ともが到着早々気になっていたところで。。

ぬえもこれが気になって、もつれた紐をほどこうとしていたのですが、途中で断念。

が、ほどなく別の能楽師。。太鼓の大川さんがこれに挑戦して、まさしく没頭状態にww





神社さまからは わざわざ昼食のご用意を頂いたのですが、もうこなると大川さんは食卓にお招きしても「はい。。すぐ行きます。。」と生返事をしながら、まばたきもせずに吊し雛との格闘を止めようとしません。

あーこう細かいところが気になるの、「能楽師あるある」かもしれないです。

結局紐はほどけませんで、大川さんは「次に当地に来るときは必ず」と、宿命を背負わされて(誰に?)、次の活動場所である石巻に移動したのでした。ははは。