幽玄堂さま、つきのこさま、コメントありがとうございました。おかげさまで姫も順調にご快癒あそばされ、ぬえもひと安心というところでございます~~ (#^^#)
さて「翁」と「千歳」の装束の着付けは、しばしば装束の間を閉め切って、楽屋の中にも非公開にして行われます。このような措置は『道成寺』から奥の習いの曲ではしばしば行われます。もっともこれらの曲の着付けに特別な仕掛けがあるワケではなくて、曲に敬意を表して、扮装するところを秘するのでしょう。その意味では『葵上』や『善知鳥』の方がよっぽど秘すべきような秘訣が着付けに施されていると思いますけれども。
でも、ぬえの師家では『翁』の時には、胴着(←装束の下に着る厚い綿入れの下着)も「翁用」というものがあって、『翁』のシテを勤められる時にしか使いません。これまた特別な胴着なのではなくて、『翁』以外には使わない、という胴着が別に用意してあるのです。これも『翁』という曲をを尊重して、普段上演する能と別扱いしているのでしょう。
かくして「翁」「千歳」の装束の着付けが終わる頃、ようやく開場時刻となり、お客さまが見所に入られます。まさかもうこの頃には準備万端出来上がっているとは、お客さまはご存じないと思いますですね~。そして開演15分前、楽屋では開演前の最後の儀式が執り行われます。この儀式、私たちは普通に「盃事」と呼んでいますが、本当はなんて言うんだろう。あえて名前はつけられていないのかも知れませんが。
いわく、開演前のあらかじめ決めておいた時刻に(当家では開演15分前)に囃子方・狂言方・地謡は鏡の間に集合します。普段の能のように(もちろん開演よりずっと前の時刻に)囃子方はお調べを奏し、一方その頃シテ方のふたりの後見は、「翁飾り」に切り火を切って、粗塩と洗米が載せられた三宝と錫口を手分けして持って、登場する各役に「盃事」の儀式を開始します。
さてその手順は。。後見の一人は御神酒を入れて「翁飾り」の最上段に飾った錫口から口に飾った奉書を取り除いて持ち、もう一人は三宝を持ちます。もちろん「翁飾り」からこれらの品物をおろす際には切り火を切ってから作業を行います。そして後見はまず翁役の役者の前に行き、「盃事」が始まります。
後見が錫口と三宝を持って近づいてきたなら、役者は後見に会釈して、三宝に載せられている土器(かわらけ=薄い皿状の盃)を取ります。後見の一人が、錫口に入った神酒を土器に注ぎ、役者はこれを三口で飲み干します。空になった土器は三宝に載せられた懐紙の上に伏せて滴を取り、次の役者のために再びもとの位置に戻します。
続いて役者は同じく三宝の上に載せられている粗塩をひとつまみ右手に、洗米を左手に取り、粗塩を自分の身に振りかけて身を清め、洗米を口に入れて、再び後見に会釈をすると後見は次の役者の前へ移って行きます。この「盃事」は翁の役者から始めて、三番叟、千歳、笛、小鼓頭取、脇鼓、大鼓、(太鼓)、狂言方後見、地謡の順番に、まったく同じ作法で進められます。最後にはこの「盃事」の介添えをしていたシテ方後見もお互いに手助けしあって、同じ作法で行います。
こうして「盃事」が終わると三宝と錫口は「翁飾り」に戻され、切り火が切られます。
役者は「盃事」が終わると、役者一同は登場の順番に楽屋の中に並びます。長蛇の列になるので鏡の間には入りきらずに装束の間にまでおよび、最後尾の地謡は装束の間で出番を待つ事になります。もっともこの時に立っているのは「翁」の役者だけで、先頭の「面箱持ち」をはじめ、一同の役者は下に居ます。後見は「翁飾り」の最上段に飾られた面箱を先頭に座る「面箱持ち」に手渡し、このときに中に入れてある面の向きがわかるように環につけられた「こより」を外します。
後見はさらに幕の端を少し開けて、舞台に向かって切り火を切り、続いて役者一同に、さきほどの「盃事」と同じ順番で切り火を切っていき、役者は頭を下げてこれを受けます。
かくして上演の準備はすべて整い、幕をあげて役者が橋掛りに登場することになります。
さて「翁」と「千歳」の装束の着付けは、しばしば装束の間を閉め切って、楽屋の中にも非公開にして行われます。このような措置は『道成寺』から奥の習いの曲ではしばしば行われます。もっともこれらの曲の着付けに特別な仕掛けがあるワケではなくて、曲に敬意を表して、扮装するところを秘するのでしょう。その意味では『葵上』や『善知鳥』の方がよっぽど秘すべきような秘訣が着付けに施されていると思いますけれども。
でも、ぬえの師家では『翁』の時には、胴着(←装束の下に着る厚い綿入れの下着)も「翁用」というものがあって、『翁』のシテを勤められる時にしか使いません。これまた特別な胴着なのではなくて、『翁』以外には使わない、という胴着が別に用意してあるのです。これも『翁』という曲をを尊重して、普段上演する能と別扱いしているのでしょう。
かくして「翁」「千歳」の装束の着付けが終わる頃、ようやく開場時刻となり、お客さまが見所に入られます。まさかもうこの頃には準備万端出来上がっているとは、お客さまはご存じないと思いますですね~。そして開演15分前、楽屋では開演前の最後の儀式が執り行われます。この儀式、私たちは普通に「盃事」と呼んでいますが、本当はなんて言うんだろう。あえて名前はつけられていないのかも知れませんが。
いわく、開演前のあらかじめ決めておいた時刻に(当家では開演15分前)に囃子方・狂言方・地謡は鏡の間に集合します。普段の能のように(もちろん開演よりずっと前の時刻に)囃子方はお調べを奏し、一方その頃シテ方のふたりの後見は、「翁飾り」に切り火を切って、粗塩と洗米が載せられた三宝と錫口を手分けして持って、登場する各役に「盃事」の儀式を開始します。
さてその手順は。。後見の一人は御神酒を入れて「翁飾り」の最上段に飾った錫口から口に飾った奉書を取り除いて持ち、もう一人は三宝を持ちます。もちろん「翁飾り」からこれらの品物をおろす際には切り火を切ってから作業を行います。そして後見はまず翁役の役者の前に行き、「盃事」が始まります。
後見が錫口と三宝を持って近づいてきたなら、役者は後見に会釈して、三宝に載せられている土器(かわらけ=薄い皿状の盃)を取ります。後見の一人が、錫口に入った神酒を土器に注ぎ、役者はこれを三口で飲み干します。空になった土器は三宝に載せられた懐紙の上に伏せて滴を取り、次の役者のために再びもとの位置に戻します。
続いて役者は同じく三宝の上に載せられている粗塩をひとつまみ右手に、洗米を左手に取り、粗塩を自分の身に振りかけて身を清め、洗米を口に入れて、再び後見に会釈をすると後見は次の役者の前へ移って行きます。この「盃事」は翁の役者から始めて、三番叟、千歳、笛、小鼓頭取、脇鼓、大鼓、(太鼓)、狂言方後見、地謡の順番に、まったく同じ作法で進められます。最後にはこの「盃事」の介添えをしていたシテ方後見もお互いに手助けしあって、同じ作法で行います。
こうして「盃事」が終わると三宝と錫口は「翁飾り」に戻され、切り火が切られます。
役者は「盃事」が終わると、役者一同は登場の順番に楽屋の中に並びます。長蛇の列になるので鏡の間には入りきらずに装束の間にまでおよび、最後尾の地謡は装束の間で出番を待つ事になります。もっともこの時に立っているのは「翁」の役者だけで、先頭の「面箱持ち」をはじめ、一同の役者は下に居ます。後見は「翁飾り」の最上段に飾られた面箱を先頭に座る「面箱持ち」に手渡し、このときに中に入れてある面の向きがわかるように環につけられた「こより」を外します。
後見はさらに幕の端を少し開けて、舞台に向かって切り火を切り、続いて役者一同に、さきほどの「盃事」と同じ順番で切り火を切っていき、役者は頭を下げてこれを受けます。
かくして上演の準備はすべて整い、幕をあげて役者が橋掛りに登場することになります。