ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第26次支援活動<仙台市若林区・名取市閖上>(その1)

2015-03-31 13:51:18 | 能楽の心と癒しプロジェクト
年末に気仙沼市でプロジェクト第25次となる活動を行いましたが、年始から私事で多忙な時期を送り、あまつさえ引っ越しまですることになり、ついに活動の詳しい御紹介ができませんでした。活動内容についてはブログにアップした活動報告書・決算報告書をご参照下さい。

さてその後も活動は継続しておりまして、去る3月11日に仙台市若林区の荒浜と名取市の閖上にて活動を行いました。

どちらも震災後に何度か視察には訪れている場所ではありますが、プロジェクトとしては初めての活動となる地区です。そのうえ3月11日。。4回目となる震災の日に活動できたことは大変意義深いことであります。実現には関係各位の並々ならぬご尽力を頂きました。改めまして御礼申しあげます。

【3月10日(火)】

ぬえは午前中師家にて稽古、午後から千葉県松戸市で稽古があり、その後松戸より仙台市に向かい、仙台市内に宿泊。笛の寺井さんは東京でのスケジュールのあと夜行バスにて仙台へ。

このとき ぬえは携帯電話を忘れてしまって。。現代で携帯電話という通信手段がなくなると、ここまで不便なものか。。活動の間ずっと関係者にはご迷惑を掛けてしまいました。幸いにもパソコンは持っていたのでホテルでWifiにつなごうと思ったのですが、なんとホテルには無線LAN設備がなく。。活動費を抑えるために毎度安価な宿を探して泊まっているのですが、その選択が裏目に出た格好です。幸いにもホテルのフロントで事情を話したところ、業務用のWifiを使わせて頂けることになりました。これはホテルのフロント周辺。。つまりロビーでしか電波が届かなかったため、宿泊の間 深夜にも何度かロビーに下りてメールで関係者との通信をすることになりました。

【3月11日(水)】

朝、宿を出発して仙台市若林区の荒浜へ。このあたりは震災3ヶ月目に ぬえが初めて被災地を訪れた際には、通行止の規制があちこちにあって、まったく近づくことが出来なかった場所です。東北といえばリアス式の複雑な海岸線が有名ですが、石巻あたりから南は砂浜が広がっています。荒浜は震災前は仙台市民にとって身近な海水浴場で、付近には広大な仙台平野の恵みにより、仙台の都会の至近にありながら多くの水田が作られて稲作が行われていました。また貞山堀(ていざんぼり)という運河が海岸線の近くに古くから造られていて、宮城県の内陸から運ばれた米などの輸送が盛んに行われていました。農業・漁業・海運など、この地区は仙台藩にとっても重要な地域であったようです。



しかしその一方、高台が付近にほとんどないという地形が災いして、震災の際の津波では仙台平野の広い範囲で多くの犠牲者を出してしまいました。付近で高台といえば数mの盛り土をして作られた仙台東部道路。。我々が石巻や東松島で活動するときは通い慣れた道路ですが、これがある程度。あとは所々にある公民館とか学校など2~3階建ての建物がいくつかあるだけで、車で避難した人々が渋滞に巻き込まれて犠牲になった話は何度となく ぬえたちも聞かされました。





震災当時、テレビでも仙台平野を一面に呑み尽くす津波の衝撃的な映像が流されましたが、震災後の仙台市の発表によれば津波の高さは仙台港で7.2mで、奥に行くに従って湾口が狭くなるリアス式海岸を襲った津波よりも幾分低かった傾向が窺われます。にも関わらずこの地区で大きな被害を出してしまったのは、高台が少ないこの地域の地形が大きな原因になったのであろうと思われます。

荒浜に到着すると、前夜から未明までちらついていた雪は止んで青空になりましたが、あまりの強風にびっくり。かつて岩手県・釜石市の鵜住居の仮設商店街で活動した際に強風に見舞われて困ったことがありましたが、この日の風はそれ以上で、能の上演の際も扇が開けないばかりか、シテが吹き飛ばされてしまいそう。。

荒浜には慰霊碑のほか海岸に背を向けて津波被害に遭った住宅地の方へ向いて観音像が建てられています。これは震災の2年後に地元住民さんにより建立されたもので、石材店が全面的に協力したものだそうです。ぬえたちは視察でここを訪れた際にこの観音像を見ていますから、一昨年の夏、観音像が建立されて半年後くらいにここを訪れたことになります。周囲にはまだ津波によって損壊したままの建物がいくつか残されていました。







この日荒浜に楽屋入りするのは正午過ぎの予定でしたが、荒浜での上演のあとにすぐに名取市・閖上でも上演することになっており、その移動がかなり忙しいことが予想されましたので、まずは荒浜の会場を見て、それから移動の状況の確認を兼ねて閖上に打合せに向かいました。





閖上は旧閖上中学校の敷地内北側が会場となっていました。荒浜からの交通は一本道しかないためかなり渋滞があって、ちょっと上演時の移動には困難が予想されました。会場ではすでに追悼式典の準備が着々と進行しています。正午頃に閖上の関係者さんと打合せをしたところ、上演時刻はそれほど厳密でなくても良い、とのありがたいお返事を頂き、駐車スペースの打合せや上演の段取りなどを打ち合わせました。









すぐにとって返して荒浜へ。笛の寺井さんとは現地集合という約束でしたが、仙台から荒浜までの交通は不便そうだったので(新しい地下鉄が建設中で、これが完成すると便利になるそうです)、途中までお迎えに行こうかと思ったのですが、なんせ携帯電話を忘れたため寺井さんとも連絡が取れず。。仕方なく荒浜の会場に一人で戻ることにしました。

決算報告書(2014.12.09~10)

2015-03-03 01:45:05 | 能楽の心と癒しプロジェクト
能楽の心と癒しプロジェクト
第25次被災地支援活動
(2014年12月09日~10日)


 〔決算報告〕

 【収入の部】
     前回活動繰越金       64,949円
     募金収入             118,000円
     預金利息             12円         収入計  182,961円

 【支出の部】
  〈活動費〉 52,073円
    ◎交通費        48,073円
     (高速道路通行料         17,070円)
     (ガソリン代            6,934円)
     (ガソリン代            7,010円)
     (ガソリン代            8,929円)
寺井宏明分
     (高速バス代            8,130円)
    ◎宿泊費        4,000円
     (とみや              4,000円)        支出計    52,073円

 【収支差引残額】                          残額    130,888円

※注※
・前回活動からの繰越金のほかの収入は、募金2件115,000円(いずれもハシモトさま)、現地中に頂戴した募金1件(Paoさまより3,000円)および預金利息12円である。募金を頂いたハシモトさまからは「今回を以て募金を終了する」旨のお話しを頂いた。震災から3年半に渡りプロジェクトに支援を頂いたのは大変ありがたい事で、重ねて御礼申しあげる。
・プロジェクトの活動にかかる支出については節約を旨とし、おおよそ次のような基準を設けている。①高速道路の利用については体力や公演スケジュールも鑑みるが、休日・深夜割引を利用するなど工夫する。②宿泊はボランティア団体や個人宅に泊めて頂くなど節約するが、継続して活動を続けるボランティア団体が減少し、また市民生活も通常の落ち着きを取り戻しつつあることから、現状では旅館等の宿泊施設を利用する機会が増えた。その場合の宿泊費の基準としては、素泊まりとし、おおよそ1人1泊5,000円程度までに収める。③食費については旅行がなくても掛かる費用であること、酒食の区別がつきにくいため、宿泊プランに朝食が組み込まれている場合を除いて参加者の自費負担とする。
・収支差額は今後の活動費用として活用し、支出明細を明らかにする。
・プロジェクトでは従来活動資金を募金に頼っていたが、一般からの募金の減少を受けて、本年より被災地でも有料のワークショップ等を展開している。これらの活動による収益を、仮設住宅への慰問活動や仮設商店街の振興協力などプロジェクトの本来の目的である被災者への直接支援のための活動資金に充当するべく、両者は有機的な関係であるべきであるが、実際にはまだ有料の活動は少数回に留まっている。
・今後も被災地でイベントやワークショップに限り有料の上演を行う予定であるが、会場の条件により募金を募る場合もある。また被災地以外の場所でも活動報告会を開いたり、引き続き企業スポンサーなどを探す努力を重ねたいと考えている。銀行口座への募金も引き続き呼び掛けさせて頂く。消費増税、また高速道路利用料の割引縮小という厳しい状況であるが今後も変わらぬご助力をお願い申し上げる次第である。

 【振込先】三菱東京UFJ銀行 練馬光が丘支店(店番622)普通預金 口座番号 0056264
名義 ノウガクプロジエクト ハツタタツヤ

                                           以上
  平成27年1月15日

                           「能楽の心と癒しプロジェクト」
                               代表   八田 達弥
                             (住所)
                             (電話)
                             E-mail: QYJ13065@nifty.com




活動報告書(2014.12.09~10)

2015-03-02 12:11:49 | 能楽の心と癒しプロジェクト
能楽の心と癒やしプロジェクト
第25次被災地支援活動
(2014年12月09日~10日)


 〔活動報告書〕

【趣旨と活動の概要】

 東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志「能楽の心と癒やしプロジェクト」では、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、2011年6月よりすでに24度に渡り岩手県釜石市、陸前高田市、宮城県石巻市、気仙沼市、南三陸町、女川町、東松島市、仙台市、大崎市、登米市および福島県双葉町の住民が避難していた旧埼玉県立騎西高校避難所にて能楽を上演することによって被災者を支援する活動を行って参りましたが、このたびプロジェクトメンバーのうち能楽チームの八田、寺井は、去る12月9日~10日の2日間に渡り宮城県・石巻市および気仙沼市にて仮設商店街での能楽上演、および災害FM局への出演を行いました。

今回の活動は久しぶりの石巻市での上演となったこと、気仙沼市で大規模に行われているイルミネーションの時期に合わせた、はじめての冬季の夜間での野外公演であったことが特色でしょうか。「けせんぬまさいがいエフエム」にも2度目の出演となり、年末のあわただしい時期に短期間の訪問ではありましたが、興味深い活動となりました。

【出演者】
八田達弥、寺井宏明(能楽の心と癒やしプロジェクト)
【協力者】(敬称略)
 村上緑/立町復興ふれあい商店街/復幸屋台村気仙沼横丁/高橋信行/気仙沼さいがいエフエム

【主催】
 能楽の心と癒やしプロジェクト

【活動記録】(敬称略)

【12月9日(火)】
早朝に東京を出発、昼頃石巻市に到着。

◎「能楽の心と癒やしをあなたに」公演 14:00開演
会場:石巻市 立町復興ふれあい商店街
内容:能「葛城」

1年ぶりの立町復興ふれあい商店街での上演。前回は仮設商店街開設2周年の記念イベントとしての出演だったが、今回は3周年記念としての出演。足が遠のいていた事を関係者にお詫びするが大変歓迎を受けて恐縮。

終了後気仙沼市へ移動、東日本大震災圏域創生NPOセンター代表の高橋信行氏と打合せの後、ご実家に宿泊させて頂く。ご母堂・和枝さんと深夜まで懇親。戦前の東北地方の窮状の様子など、とても印象的なお話しを伺うことができた。

【12月10日(水)】

昼頃より活動開始。

◎気仙沼さいがいエフエム「にじなま」に出演 14:00~
会場:気仙沼さいがいエフエム
内容:居囃子「猩々」


◎「能楽の心と癒やしをあなたに」公演 19:00開演
会場:復幸屋台村 気仙沼横丁
内容:能「葛城」

終了後帰京。

【収入・支出】

前回活動に引き続き『星と能楽の夕べ』公演を有料化しましたが、残念ながら悪条件が重なり、思ったほどの入場者数を得ることができませんでした。しかし地福寺さまより活動資金の援助を頂くことができました。出演者が多かったため結果的には支出がふくらんだ印象で、この点を今後改善して行くべきとの指摘がプロジェクト内部で話し合われました。

プロジェクトの活動資金としては、前回活動の繰越金が64,949円あるほか、2件の募金115,000円を頂戴しました。また、これによって繰越金を含めた活動開始時点での資金の総額は 179,949円となります。また今回の活動中に募金1件3,000円を頂戴し、収入の合計は182,949円にのぼりました。

一方支出は、交通(ガソリン代、高速道通行料、高速バス代)と宿泊費の数万円のみであり、今回は宣伝チラシも上演会場である石巻立町復興ふれあい商店街さま、復興屋台村気仙沼横丁さまが自ら印刷してくださったため経費が掛かりませんでした。これらの支出を差し引いた次回活動の繰り越し金は130,876円となります。

プロジェクトの訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。交通費節約のため、できるだけ深夜割引の制度を利用して終夜運転をして早朝に現地に到着するなど工夫はしておりますが、体力や公演スケジュールによって、必ずしも深夜走行ができない場合もあります。宿泊につきましては、従来は住民ボランティアさま等のご厚意により無料、または安価での宿泊ができましたが、街が落ち着きを取り戻しつつある昨今では旅館などに宿泊する機会も増えてきました。この場合にも宿泊費はおおよそ5,000円まで、素泊まりを旨としており、食費については酒食の区別がつきにくいため、すべて自己負担としております。

【成果と感想・今後の展望】
今回は1年ぶりとなる石巻市での上演、冬季の夜間に野外で行う初の上演と、年末にふさわしく各地関係者へのご挨拶も致し、華やかな上演となりました。気仙沼市で年末恒例で行われるイルミネーションの下での上演はかねて念願ではありましたが、種々の事情により今回ははイルミネーションの事業そのものとの競演とはなりませんでした。しかしながら復興屋台村気仙沼横丁さまのステージはこれまた美しいイルミネーションで飾られていて、能装束は美しく映えたのではないかと思います。また厳冬期の上演、ことに気仙沼では夜間の上演ではありましたが、どちらの仮設商店街での上演でも30名ほどのお客さまがお見えになり、大変ありがたいことでありました。「けせんぬまさいがいエフエム」の皆さまにも毎度大変好意的にプロジェクトの活動を宣伝して頂いております。今回は久しぶりに出演させて頂き、楽しいひと時を過ごさせて頂きました。
今回も石巻市および気仙沼市の市民の方々に多数ご協力を賜って活動ができました。改めまして御礼申しあげるとともに、プロジェクトの息長い支援のために今後とも皆さまの変わらぬご支援をお願い申し上げる次第です。

平成27年3月2日

                「能楽の心と癒やしプロジェクト」

                               代表   八田 達弥

                             (住所)
                             (電話)
                             E-mail: QYJ13065@nifty.com