ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

伊豆・子ども創作能の公開稽古(まさかの感染騒動つき)その2

2020-11-13 21:50:49 | 能楽
子ども創作能の公開稽古の前夜、突然もたらされた出演者の子どものクラスメイトの感染発覚。。まさかの展開です。

公開稽古では入口で検温したり座席の間隔をあけて密を避けたり、と感染予防の対策はかなり考えていたのですが、まさか出演する側の身近からウイルスが忍び寄っていようとは。。

クラスメイトの感染がわかったのは中学生の参加者で、この子は出演を切望していましたが、さすがに参加は見合わせてもらいました。中学生なのでお役は地謡だったので、欠席でもまあ上演不能にはならない。最近は参加者の減少に悩む子ども創作能ですが、最後には ぬえが一人で地謡を謡う覚悟でもありました。

さらにもう一人、小学生の参加者にも同じように学校に感染者が出たとのこと。まさかの一度に2件の発覚とは。。ただ、こちらは参加児童と同じ学年ではあるけれども違うクラスの子とのことなので、児童の扱いを慎重にして参加してもらうことにしました。

もちろん公開稽古そのものの中止も熟考しましたが、中止するにしても観覧のお客さまにそれをお伝えするすべもなく、結論は出ず。保護者には一応上演する用意をしたうえで、開演2時間前に集合して、その場でみなさんで話し合うことにしました。感染を心配されるご家庭は欠席も可で判断はお任せしました。その結果上演不能となった場合は ぬえが即席の能楽講座を行うつもりで、展示のための面装束を用意して。

その後近所のホームセンターかどこかで感染予防のためのパーテーションなどを買い求めることも考えましたが、どこで売っているのか見当はつかず(疎開先の茨城県のホームセンターで一度パーテーションを売っているのを見かけたことはあったのですが。。)すでに21時をまわっていて検索の結果どこも閉店している模様。これで万策尽きて翌日の出発を迎えることになりました。感染予防パーテーションなどの購入は文化庁の助成金をすでに7月に申請していたものの、採択が知らされたのはこの1週間前で間に合わず。

さて公開稽古当日、伊豆に到着してママさんたちと話し合ったところ、あまり心配している方はなく、かえって久しぶりの上演で子どもたちは楽しみにしていた、友人などがたくさん見学に来ます、とのこと。

なので公開稽古は決行することにしましたが、子どもたちには よくよく次のように言い含めました。
・今日だけはお友だちに絶対に触れない。お菓子を分け合ったりするのもダメ。
・上演時も含め、常にマスクを着用。
・今日だけは楽屋ではお友だちではなくママのそばにいなさい。
・今日だけはみんなで恐れよう。今日だけ我慢すれば明日は普通の生活に戻れる。

この日に市内で感染者が一気に6人も判明したこともわかりましたが、一部の地区に集中している傾向も見え、それだけに子ども創作能で集まった子どもたちから他の地区への感染拡大や、ましてやクラスターなどは絶対に発生させるわけにはいかない。着替えも狭い場所を避けて広いロビーに換えて、窓を開け放して。。

こうして公開稽古は始まりましたが、意外や20名以上のお客さまが集まってくださいました。ぬえが一人で謡おうかと思っていた地謡も、中学生の子ども能OGが急遽応援参加してくれて解決。ぬえの能楽講座に引き続いて子ども創作能の上演を行いました。

やれやれ、いや、それでも良い舞台だったと思います。上演前日からの騒ぎのせいか、ちょっと間違った子もあって、この時は落ち込んでいたけれど、夜になって頂いたママさんからのメールでは「でも楽しかった!」とうれしそうにしていた、とのこと。そういえば子ども創作能に入会したけれど、出演する機会がなかった子どももあって、その子も無事初舞台を踏むことができました!

(画像撮影;内田隆久さん)

伊豆・子ども創作能の公開稽古(まさかの感染騒動つき)その1

2020-11-11 11:24:40 | 能楽
去る11月8日、もう20年も稽古を続けている静岡県・伊豆の国市の「子ども創作能」の公開稽古を行ってきました。

今年のコロナ禍で、やはり困難を強いられている子どもたち。じつは去年から不運に見舞われてきました。「伊豆の頼朝」という作品を上演している子ども創作能ですが、毎年10月、当地で源頼朝が挙兵したゆかりの守山八幡宮の秋祭りで神社に奉納上演をしているのですが、去年の上演当日、まさかの台風直撃で秋祭りそのものが中止に。。ぬえの能楽師としての経験の中でも、催しが中止になって、来演をお願いしていたお囃子方の出演をキャンセルしたのは初めての経験です。

その後今年の2月に大仁地区の「梅まつり」イベントに出演することができましたが、その直後に新型コロナウイルス問題が勃発して、4月にこれまた恒例で鎌倉市からお招きいただいて上演する「鎌倉まつり」公演が中止に追い込まれました。またまたお囃子方にご迷惑をお掛けしてしまいましたが、出演の子どもたち。。とくに6年生にとっては卒業記念としての公演でもあったので、かわいそうな事になりました。

さらには笛の寺井宏明先生のご尽力によって、今年は箱根神社での子ども創作能の奉納も決定していたのに、これまた中止に。そして今年の10月の守山八幡宮の秋祭り奉納上演も中止になりました。。

ああ。。

仕方なく、子どもたちが上演曲目を忘れないために稽古は続けていましたが、それも上演の目標はないまま。。

ま、それでも毎回配役を換えての稽古は意外な盛り上がりを見せておりました。聞けば学校のクラブ活動やらお稽古ごとも自粛の空気が蔓延して、子どもたちは なかなか身体を動かす機会も少ないのだとか。。

ああ。。

ここで ぬえはとうとう我慢できなくなりまして、無観客・無宣伝でゲリラライブ的な上演をママさん方に提案することに。会場は市内にある小さな野外ステージで。近くには密を避けて広い着替えができる広い和室を備えた公民館もあるし。よし! これならいけるぞ!

。。が、ママさん方からはやはり慎重論が出ました。いわく「この時期に無理にやる必要はないのでは?」「通りがかりの人が上演を見て、はたしてこの時期、喜んでくれるのでしょうか? むしろ反感を覚えるのでは。。」 。。ごもっとも。。orz

なおも我慢できない ぬえ。今度ははじめから予約されていた稽古会場が公民館のホールだったのに目をつけて、普段の稽古を本格的にして、装束を着けて公演のリハーサルのように行うことを再度提案。これはママさん方も賛成頂きまして、それどころか「それなら限定的に公開できるのではないか」「椅子をあらかじめ間隔をあけて並べて」「受付を設けて見学者の名簿を作って」「私、検温器を用意できます」と、どんどんアイデアが出されて、ついに「公開稽古」になりました。宣伝は ぬえがチラシを作って、子どもたちがお友だちなどに配る程度に、小ぢんまりと行います。

そして翌日に満を持しての公開稽古を控えたその前日の夜、ママさん方の一人から連絡がありました。

「。。子どもが通う学校の、同じクラスの子が感染していることがわかりました。。」

え。。

(続く)
(画像は夏の頃のお稽古のものです)

PCR検査を受けました

2020-11-10 01:30:54 | 能楽
ようやくのご報告になります。

この度師家では学校公演その他各地での公演の再開に向けて、主催者様や関係者様に不安を与えないよう、同門の能楽師一同でPCR検査を受けることとなり、先日 ぬえも含め全員が検査を受け、無事 陰性と診断されました。

先輩の中には教室の生徒さんに心配をかけないためにすでに自主的に検査を受けた方もありましたが、個人で検査を受けるのは費用面で大変。。こちらは助成を受けて検査を実施したものです。

助成を受けて検査を実施すると、もしも感染者が発覚したときに団体名が露わになって、公演活動ができなるなるのではないか。。? という懸念を ぬえに言った方もあって、なるほどそうなると再び舞台を失うことになり、それは大変な苦痛ですが。。 とはいえこのような状況下で公演を受け入れてくださった会場や主催者さまに安心して頂くのもまた必要。。悩ましいところではありました。

さて実際のPCR検査とはどういうものか、せっかくの機会なのでご紹介させて頂きます。





こちらが検査のための説明書です。
実際の器具の画像はありませんので想像して頂くよりほかありませんが、太めの注射器のような、樹脂製の円筒形の透明な器具に唾液を入れて提出するほか、免許証など身分証の提示も求められました。

提出する唾液の量は図のように赤い線のところまで。。 結構な分量ですよ! 顎の脇をマッサージしたり、レモンや梅干しなど酸っぱい食べ物を想像しながら、ペッペッと。。とても人に見せられる姿じゃありませぬ。。(TT)