昔から機会があればキリスト教書店に行って書籍紹介パンフをも
らっていたが、その中から古いものであるが、聖書外典偽典につ
いて書かれた部分を拾い出してみた。
1 ロスト「旧約外典偽典概説」を訳した土岐健治
外典偽典という区別はユダヤ教内部に存在しなかった。教会の
歴史の中でも外典偽典の境界は流動的で、各時代各教会の好み
にまかされてきている。そして現在の我々にとって・・外典偽典の
区別はほとんど何の意味も持っていない。・・一括して「典外書」
と称する方が正しく事態に沿うものであるように思われる。
そして、ロストがルターの「聖書と同様に扱うべきではないが、
読んで有益な書物すなわち外典」という言葉を引用し、その考え
方がプロテスタントの外典理解を代表しているように思われる、
と記している。・・「興文」1972年9/1, 176号、pp. 7, 8.
2 ナグ・ハマディ文書を専門分野とする荒井献
新約聖書が成立した初期キリスト教の歴史をドグマ的偏見なし
に把握するためには、外典の研究が不可欠だ。しかも、正統と異
端、あるいは正典と外典の区別にしても、少なくとも歴史的には
きわめて政治的なものであり、一時代の政治的・宗教的強者が定
めたものである。・・「本のひろば」204号、p. 9.
3 土岐健治。
文学的な手法・動機について言えば、外典も偽典も似通った面
があると思う。たとえば正典の中にある話を敷衍していって、一
般の民衆が抱いているような敬虔な好奇心に応えようとしている
部分がある。・・「本のひろば」対談書評「信仰の生命力(ダイナ
ミズム)聖書外典・偽典の世界 川田殖、土岐健治, p. 12.
邦訳は教文館から'75年に刊行
4 聖書外典偽典全九巻を刊行した土岐健治
キリスト教の源流と展開の十全な把握はこれら典外文書を抜き
にしては考えられない。それらは聖書の最良の注解書と言っても
過言ではない。・・「本のひろば」1983年4/1, 298号, p. 17.
19世紀初頭のアメリカの人々が抱いていたと思われる敬虔な好奇
心に応えようとして書かれたと読み替えれば、偽典としてのモル
モン書の姿が浮かび上がる。また、聖書の注解書の役割を果たし
ていると受け取る研究者もいる。
機会があれば最近の状況を補足し更新したいと思っている。読者
の皆様から情報をいただければ有難いです。
らっていたが、その中から古いものであるが、聖書外典偽典につ
いて書かれた部分を拾い出してみた。
1 ロスト「旧約外典偽典概説」を訳した土岐健治
外典偽典という区別はユダヤ教内部に存在しなかった。教会の
歴史の中でも外典偽典の境界は流動的で、各時代各教会の好み
にまかされてきている。そして現在の我々にとって・・外典偽典の
区別はほとんど何の意味も持っていない。・・一括して「典外書」
と称する方が正しく事態に沿うものであるように思われる。
そして、ロストがルターの「聖書と同様に扱うべきではないが、
読んで有益な書物すなわち外典」という言葉を引用し、その考え
方がプロテスタントの外典理解を代表しているように思われる、
と記している。・・「興文」1972年9/1, 176号、pp. 7, 8.
2 ナグ・ハマディ文書を専門分野とする荒井献
新約聖書が成立した初期キリスト教の歴史をドグマ的偏見なし
に把握するためには、外典の研究が不可欠だ。しかも、正統と異
端、あるいは正典と外典の区別にしても、少なくとも歴史的には
きわめて政治的なものであり、一時代の政治的・宗教的強者が定
めたものである。・・「本のひろば」204号、p. 9.
3 土岐健治。
文学的な手法・動機について言えば、外典も偽典も似通った面
があると思う。たとえば正典の中にある話を敷衍していって、一
般の民衆が抱いているような敬虔な好奇心に応えようとしている
部分がある。・・「本のひろば」対談書評「信仰の生命力(ダイナ
ミズム)聖書外典・偽典の世界 川田殖、土岐健治, p. 12.
邦訳は教文館から'75年に刊行
4 聖書外典偽典全九巻を刊行した土岐健治
キリスト教の源流と展開の十全な把握はこれら典外文書を抜き
にしては考えられない。それらは聖書の最良の注解書と言っても
過言ではない。・・「本のひろば」1983年4/1, 298号, p. 17.
19世紀初頭のアメリカの人々が抱いていたと思われる敬虔な好奇
心に応えようとして書かれたと読み替えれば、偽典としてのモル
モン書の姿が浮かび上がる。また、聖書の注解書の役割を果たし
ていると受け取る研究者もいる。
機会があれば最近の状況を補足し更新したいと思っている。読者
の皆様から情報をいただければ有難いです。
◆ナグ・ハマディ文書とは・・・
1)1945年上エジプチトのナグ・ハマディ近郊で発見された、紀元後2-3世紀に由来する52の古文書で、その大半はグノ-シス文書。その中には従来教父たちの証言によってしか知られなかった原始キリスト教の文書も存在する。
2)1945年アラブ人のひとりの農夫によって偶然発見された写本(古代エジプト語のコプト語「エジプトのキリスト教徒が用いた文字」で、羊皮に記された多くの「聖書」を含む13冊の写本で、見つかったナイル河流域の地名「ナグ・ハマディ」から「ナグ・ハマディ写本」と呼ばれる。)グノ-シス(認識の意味)思想に含まれる。
その内容は、114のイエスの言葉からなる「語録福音書」であるが、その中には多くの真正のイエスの言葉が含まれていたにもかかわらず、キリスト教会の運営に都合の悪いグノ-シス主義の色彩が強かったため危険視され、正当なロ-マ・カトリックの伝統からは異端の書として弾圧、抹殺されてしまったが、今日の福音書研究には、この第5の福音書の存在を無視することはできないのである。
英語の旧約聖書偽典1、2巻(James H. Charlesworth編)は両方とも大部な書物で死海文書もナグ・ハマディ文書も主なものが含まれているようです。そのうち1,2書をステイーブン・E・ロビンソンが訳しています。(当時デユーク大学、現BYU)。ナグ・ハマディ文書(“The Nag Hammadi Library”)は参考にと買い求めましたが、正典とは異なり読みにくいところが多く、専門家でないと読み応えがないように思われました。(欠落部分がかっこ書きであったり、別訳が並行して記載されたり、馴染みのない内容、テキストとも優しい読み物ではありません。マックスウェル長老が説教か講演の中に引用されたことがあり、驚いたのを覚えています。)
【訂正】
誤・・・上エジプチトのナグ・ハマディ近郊
正・・・上エジプトのナグ・ハマディ近郊
2.聖書外典・偽典について
私が持っている「聖書の世界・総解説」では、
一橋大学 土岐健治として旧約聖書の外典偽典が長々と述べられています。また、学士院会員として関根正雄 氏も出筆されています。とても読みやすい本です。