中東で大変動が起こりつつある現在、対イスラエル感情が悪化している一つの大きな原因はイスラエルでユダヤ人が入植地を拡大し続けていることにある。これはもちろんイスラエル / パレスチナ問題を膠着させ、悪化させている一大原因である。
ヨルダン川西岸地区 点が入植地を示す クリックで拡大できる
12月5日NHKの「クローズアップ現代」で国谷裕子キャスターのインタビューにエジプトの元外相アムル・ムーサは、「世界は、特に中東諸国は現在急速に変りつつある、イスラエルも変らなければ取り残されてしまうだろう」と語っていた。私は確かに要所を突いていると思った。そして、番組第二回の12月6日、イスラエルのシモン・ペレス大統領は国谷キャスターに「イスラエルは海に浮かぶ孤島のような存在で、島は海に影響を及ぼすことができない、海から影響を受けるばかりである。海が平和であって欲しい」と語った。それに対し国谷は海が平和で穏やかであるためには入植地拡大を止めなければならないのではないか、と質問した。ペレスは、現在新しい入植は止めている、と答えていた。しかし、ずっと続いてきた入植地拡張政策はパレスチナ人居住区を囲む巨大な壁構築と並んでパレスチナ人を追い詰め、力づくで傷めつけてきた。国谷はジャーナリストとして鋭い質問を投げかけていた。
ペレスはタカ派ではなく、イスラエルが安全保障と平和追求の「ジレンマ」に直面している現状を率直に語った。イスラエルの側に立てば彼らの言い分が分からないでもないが、入植地拡張は国連安保理決議に違反するもので強引な領土拡大に国際世論は反対してきた。しかし、アメリカの後ろ盾を得てそれを無視してきた。
なぜイスラエルは臆面もなくパレスチナ人の境界内にユダヤ人入植を続けてきたのか。研究者はイスラエルが国家として存在し始めた時以来継続しているイスラエルの政策であると見ている。1948年イスラエル国家が誕生するに際し、70万人以上が住み慣れた村を追われ難民となった。この出来事をパレスチナ人はナクバ(大惨事)と呼ぶ。それ以来イスラエルは研究者が「空間的抹殺」( spaciocide) と呼ぶ政略を実施し、パレスチナ人を経済的にも日常生活面でも制約・分断し弱体化させてきた。入植地拡大は同じ路線上にある。一連の活動は「例外措置」の名の下に工学的都市破壊を表面上「法的」に実施してきたのであった。(「例外措置」というのは、これは例外だから通常は通らない理屈が通ると主張する方便を指す。英文ではstate of exception)。
イスラエルの様々な仕打ちはアムネスティ・インターナショナルが非難し、国連が再三決議で止めるよう求めてきたことである。イスラエルが孤立化しているのは理由があってのことである。一国家の中で共存できないのであれば、パレスチナ国家の樹立を認めるべき時期にきているのではないだろうか。
参考 Sari Hanafi, “Spacio-cide: Israeli Politics of Land and Memory Destructions in Palestinian Territory,” 2008
Rosemary Sayigh, “Hiroshima, al-Nakba: Markers of Rupture and New Hegemonies,” 2008
12/06 NHKクローズアップ現代
本ブログ 2008/12/30 国際シンポジウム「ナクバとヒロシマ」に出席して
追記
村上春樹はエルサレム賞受賞スピーチで語った。
「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。」
Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg. 2009年2月
http://www.47news.jp/47topics/e/93925.php?page=all
ヨルダン川西岸地区 点が入植地を示す クリックで拡大できる
12月5日NHKの「クローズアップ現代」で国谷裕子キャスターのインタビューにエジプトの元外相アムル・ムーサは、「世界は、特に中東諸国は現在急速に変りつつある、イスラエルも変らなければ取り残されてしまうだろう」と語っていた。私は確かに要所を突いていると思った。そして、番組第二回の12月6日、イスラエルのシモン・ペレス大統領は国谷キャスターに「イスラエルは海に浮かぶ孤島のような存在で、島は海に影響を及ぼすことができない、海から影響を受けるばかりである。海が平和であって欲しい」と語った。それに対し国谷は海が平和で穏やかであるためには入植地拡大を止めなければならないのではないか、と質問した。ペレスは、現在新しい入植は止めている、と答えていた。しかし、ずっと続いてきた入植地拡張政策はパレスチナ人居住区を囲む巨大な壁構築と並んでパレスチナ人を追い詰め、力づくで傷めつけてきた。国谷はジャーナリストとして鋭い質問を投げかけていた。
ペレスはタカ派ではなく、イスラエルが安全保障と平和追求の「ジレンマ」に直面している現状を率直に語った。イスラエルの側に立てば彼らの言い分が分からないでもないが、入植地拡張は国連安保理決議に違反するもので強引な領土拡大に国際世論は反対してきた。しかし、アメリカの後ろ盾を得てそれを無視してきた。
なぜイスラエルは臆面もなくパレスチナ人の境界内にユダヤ人入植を続けてきたのか。研究者はイスラエルが国家として存在し始めた時以来継続しているイスラエルの政策であると見ている。1948年イスラエル国家が誕生するに際し、70万人以上が住み慣れた村を追われ難民となった。この出来事をパレスチナ人はナクバ(大惨事)と呼ぶ。それ以来イスラエルは研究者が「空間的抹殺」( spaciocide) と呼ぶ政略を実施し、パレスチナ人を経済的にも日常生活面でも制約・分断し弱体化させてきた。入植地拡大は同じ路線上にある。一連の活動は「例外措置」の名の下に工学的都市破壊を表面上「法的」に実施してきたのであった。(「例外措置」というのは、これは例外だから通常は通らない理屈が通ると主張する方便を指す。英文ではstate of exception)。
イスラエルの様々な仕打ちはアムネスティ・インターナショナルが非難し、国連が再三決議で止めるよう求めてきたことである。イスラエルが孤立化しているのは理由があってのことである。一国家の中で共存できないのであれば、パレスチナ国家の樹立を認めるべき時期にきているのではないだろうか。
参考 Sari Hanafi, “Spacio-cide: Israeli Politics of Land and Memory Destructions in Palestinian Territory,” 2008
Rosemary Sayigh, “Hiroshima, al-Nakba: Markers of Rupture and New Hegemonies,” 2008
12/06 NHKクローズアップ現代
本ブログ 2008/12/30 国際シンポジウム「ナクバとヒロシマ」に出席して
追記
村上春樹はエルサレム賞受賞スピーチで語った。
「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。」
Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg. 2009年2月
http://www.47news.jp/47topics/e/93925.php?page=all
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