【 戌・犬の文字の語源 】
「戌(いぬ)」・・・戈(ほこ)と斧(おの)または
“鉞(まさかり)”の象形文字。
もともと「戌」は茂る、真ん中の「一」は陽気を表し、
植物が茂る中に陽気を含んでいる形を示し、
収穫された穀物や、野花などの豊かさを内蔵する
明るい意味がある。しかし成熟し枝葉が茂って日
当たりが 悪くなったり、風通しが悪くなるので、
余分な枝葉を剪定し、
樹木の生気を取り戻す必要があります。
戌削という言葉通り、
戌には“裁つ”“削る”の意味もあり花を摘みとり、
球根を太らせるたとえを含んでいます。
また、脱と韻通で、
万物が脱落、仁滅する意味があり、
木や草が切られて寂しい状態を表す。
戌の音読みは“鉞(えつ)”の音の転訛した
ものであって、“シュツ”という。
「戌」・・・十二支の第11番目
〔方角〕 西北西
〔時刻〕 午後8時(または午後7時~午後9時の間)
「犬」・・・犬の形にちなんだ象形文字。
『説文』には
「孔子曰く、犬の字を視れば狗を描くが如し」
と記述されている。
戌と狗とはたいした相違はないが、
“犬は狗の懸蹄(けんてい)〔偶蹄類の両側にあるヒヅメ。
中央の二蹄はよく発達しているが、懸蹄は委縮し、
ほかに接しないで下垂する〕あるものなり”
という説がある。
犬にまつわる民俗は多い。
犬を拾って育てたり、助けたりしたために
金持ちになった話が少なくない。
「花坂爺」の昔話もその一つであり、
ポチという犬は水の神の使者とみなされている。
犬がお産の神として信仰されるのも、
犬の出産が容易という理由のほか
水神信仰がその背後にある。
犬偏のついた漢字は579ある。
「獣」という文字自体、獣全体を代表する
かのように“犬”がついているし、
「吠える」も“犬”が元祖のようになっている。
『十二支のE~話』『(続)十二支のE~話』
戸出 武著