芦部信喜氏著『憲法・新版』( 平成11年刊 岩波書店 )を、読み終えました。読後の印象を表現しますと、「田母神事件を思い出した ! 」の一言です。
覚えておられる方も多いと思いますが、今から13年前の平成20年に、航空自衛隊の空将だった田母神俊雄氏が、論文を発表・公開した事件です。民間団体が募集した懸賞論文に応募し、最優秀賞を受賞しましたが、「政府見解に反する」として大問題になりました。
「日本は侵略国家であったのか。」というタイトルの論文で、「日本は侵略国家ではなく、素晴らしい国だった」と、自説を述べていたと記憶しています。
「日本だけが間違っていた。」「日本だけが、非道な軍国主義国家で、近隣諸国を侵略した。」というのが、当時も今も政府見解ですから、現職の自衛官でしかも高位の航空幕僚長が意見を公表したので、大騒ぎになりました。国会に証人喚問され、マスコミで叩かれた田母神氏の姿が今も記憶に残っています。
私にすれば、普通の意見ですが、あの時は反日左翼マスコミがこぞって氏を糾弾し、野党の議員はもちろんのこと、保守自民党の議員も誰一人弁護せず、反日勢力と一緒になり、氏を批判していました。
「こいつに喋らせるな。」「演説をさせるな。」「黙らせろ。」
国会に証人喚問され、答弁しようと立ち上がると、議員のヤジが飛び交い、氏の説明を遮断しました。今でも忘れませんが、その異様な雰囲気は、本で読む中世ヨーロッパの、「魔女狩り裁判」そのものでした。
結局氏は航空幕僚長の任を解かれ、航空幕僚監部付きに格下げとなり、その年の定年時に慰労式で労われることもなく、退官となりました。参考までに、氏を冷遇した当時の内閣の主要大臣をネットで調べてみました。
内閣総理大臣 麻生太郎 総務大臣 鳩山邦夫 法務大臣 森英介
外務大臣 中曽根弘文 財務大臣 中川昭一 文部科学大臣 塩谷立
防衛大臣 浜田晴一 内閣官房長官 河村建夫
この4年後の平成24年11月に、「田母神作文徹底批判」というタイトルの、You Tubeの動画がありました。九段中学の社会科教諭で、東京都学校ユニオン委員長という増田氏が発信していました。彼女がどのような観点から批判をするのだろうと、興味を抱いて見たのですが、期待は破られました。
氏は田母神氏を、歴史を何も知らない事実ねつ造の右翼と決めつけ、「彼はこんなことも知らないのです」「これも勝手なねつ造です」「こんな人が自衛隊のトップにいるなんて、とても信じられません」と誹謗し続けました。
田母神論文を逐条的に批判し、日本が、朝鮮と中国でどんな悪どい仕打ちをしたかと、まるで福島瑞穂氏のように、いきりたって述べました。増田氏の話は、田母神氏と日本への悪口雑言のオンパレードです。中身のある批判なら聞けますが、最初から最後まで一本調子の批判で、聞くに耐えられなくなりました。
母神氏の論文を読みましたが、不愉快にならず、国を思う自衛官の主張として頷けるものを感じました。個別の数字や年代にズレがあったとしても、すくなくとも田母神氏の論文には、愛国心がありました。感情を込め、熱弁を振るっても、増田氏の言葉には、日本を思う心が感じられませんでした。
芦部氏の書評の「総まとめ」として、なぜこのような話をするのか、きっと息子たちには分からないはずです。「ねこ庭」を訪れる方々にも、疑問かもしれません。理由は簡単なのです。単細胞の私が考えることに、複雑な話はありません。
「田母神事件を思い出した ! 」とがってんした時、頭に浮かんだ図式が次です。
〈 反日・左翼の批判者 〉 〈 批判されている対象 〉
増田委員長 田母神論文
芦部教授 明治憲法
芦部氏と増田氏は、敬意を払うべきものの前で、空っぽの空き缶を叩いているように、空疎な批判を並べていました。増田氏は叫び、芦部氏は静かですが、共通するものがあります。
どんなに言葉を並べても、「日本を大切にする心」がなければ、国民には届きません。
これが私の「総まとめ」です。おつき合いくださった方々に、感謝いたします。