なぜ、9月17日の千葉日報の記事が、一面トップから政治面、社会面とほとんどの紙面を使い、「拉致問題」で埋め尽くされていたのか。簡単に言いますとこの日の新聞は、スポーツ面とテレビ・ラジオ面、学芸・文化面を除くと、拉致関連の記事で占められていました。
共同通信社の配信記事だけが、この日に集中しているのかと思っていましたが、そうではなさそうです。おそらく朝日、毎日、読売、日経、産経など、他の大手メディアも「拉致問題」の記事を横並びで報道していたと思います。理由は簡単でした。
20年前の9月17日は、小泉総理が金正日総書記と対談した日でした。拉致をしたのが北朝鮮だったと金正日総書記が認め、日本国民が驚きマスコミが大騒ぎした日です。つまりこの日は、それから20年が経過した節目の年だったという訳です。洪水のような拉致報道の記事の見出しに、安倍元総理の国葬反対のトーンを入れたのは、果たして共同通信だけだったのでしょうか。
拉致問題の経過を説明する記事の見出しに、およそ内容にそぐわない言葉を使ったのは何故なのでしょうか。
・「地獄の苦しみ」「政府 何で助けない」「めぐみさん拉致45年 横田早紀江さん」
・「日朝首脳会談20年」「拉致問題 動かず焦り」「被害者高齢化、猶予ない」「特定失踪者の姉 竹下珠路さん(78)」
・「二人の一時帰国拒否」「安倍政権時、幕引き警戒」
・「小泉訪朝20年と拉致」「安倍氏、突き返せ」「伏せられた生存情報」
・「親子再会してこそ解決」「被害者の蓮池薫氏 日本独自カードを」「田中均元外務審議官 権力直結する交渉必要」
見出しだけを並べましたので、息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に確かめてもらいたいと思います。記事を読まず、タイトルだけを見ると、安倍元総理が北朝鮮への強行姿勢を貫き、問題の解決を遠のかせているように受け取れます。しかし記事そのものは、事実の経過が説明されているだけで偏った叙述はありません。
全ページを使った特集記事では、拉致被害者の一人だった蓮池薫氏と、拉致問題の交渉責任者だった元外務省の田中均氏の意見が写真入りで掲載されています。二人の人物は、過去において、安倍元総理の姿勢を強い口調で批判していた人物ですから、経緯を知っている人間は同社の記事が素直に読めません。
「日朝会談」は20年前のことですが、「拉致」発生時から計算すると、45年が経過しています。「日朝会談」以前の25年間は、政治家もマスコミも、ほとんど無視していました。
元社民党 ( 旧社会党 ) の議員で、民主党に鞍替えした辻元清美氏は当時次のように語っていました。( 今も同じ意見を言っています。)
「戦時中の、北朝鮮の国民の受けた被害に比べたら、拉致は優先度が低い。」「拉致問題より、日朝国交回復の方が先だ。日本の植民地支配を、謝罪し、賠償することが優先する。」
当時社民党 ( 旧社会党 ) の委員長だった土井たか子氏については、次のような情報があり、かって「ねこ庭」で紹介しています。
「拉致なんて北朝鮮がするわけが無いと述べていた土井は、平成14年10月、北朝鮮による日本人拉致が明らかになった時、それまで社民党が北との友好や過去の清算を重視し、拉致事件に目をつむり、北を擁護してきたと批判が強まる中、北朝鮮の言葉を信じ、追及が十分にできなかったと釈明し謝罪した。」
「土井は党の公式サイトで、拉致は創作された事件と主張した論文を、事件が明るみに出た後も削除せず、掲載し続けていたことについても、謝罪した。」
「拉致被害者の親族らは、北朝鮮と太いパイプのあった土井に、何度か拉致被害を相談に行ったが、結局無視されたため、その後自民党議員に相談するようになる。」
「また土井は、韓国で逮捕された在日韓国人政治犯、29名の釈放を求める嘆願書を、民主党、公明党等の議員らとともに、韓国政府に提出した。その中には、日本人拉致犯の首謀者である、辛光洙 ( シン・ガンス ) が含まれていた。」
直近の9年間の安倍元政権を批判するのなら、共同通信社はそれ以前の45年間の政界とマスコミの不作為について述べるのが先でしょう。土井氏の謝罪があり、辻元氏の発言があっても、マスコミは報道していません。共同通信社だけでなく、NHKも朝日新聞も毎日、読売等々、全てのマスコミが過去何十年間にわたって、「拉致問題」をなぜ報道しなかったのか。彼らの方が、反省しなければなりません。
・「地獄の苦しみ」「政府 何で助けない」「めぐみさん拉致45年 横田早紀江さん」
・「日朝首脳会談20年」「拉致問題 動かず焦り」「被害者高齢化、猶予ない」「特定失踪者の姉 竹下珠路さん(78)」
そういう観点から記事の見出しを読みますと、マスコミの厚顔ぶりに呆れさせられます。自分たちが過去45年間、20年間、どれほどの報道をしていたのかと恥ずかしくならないのでしょうか。彼らが報道しないから、「拉致問題」の悲惨さが国民に伝わらず、無関心のままになっていた事実の大きさを、何と考えているのでしょう。
多くの国民は拉致被害者が、「拉致被害者」と「特定失踪者」二つのグループに分かれていることも知らないはずですし、「拉致被害者」が、政府が拉致被害者として認定している17名の人々で、政府が正式に認定していな「特定失踪者」は、871名もいることを知りません。
だから私は、今回同社が大きく取り上げている竹下珠路さんについて、ほとんど知りませんでした。竹下さんは「特定失踪者」家族会の事務局長をしていますが、最初の活動は「特定失踪者」を政府認定の「拉致被害者」として認めてほしいと、裁判に訴えるところから始まっています。
横田早紀江さんも竹下珠路さんも、安倍政権だけを批判しているのでなく、45年間の不作為をした政府と政治家に訴えているだけです。節目の20年が来たからといって、突然大きな記事にして全国へ発信し、受け取り方次第では「国葬反対」のキャンペーンにするというのですから、ひどい話ではありませんか。
次回は、蓮池氏と田中氏について過去の情報との対比で紹介します。