今回の記事で、蓮池薫氏と田中均氏がどのように語っているのかを紹介します。
〈 蓮池氏の意見 〉
・日本独自のカードや北朝鮮を振り向かせるための環境づくりが必要だ。
・親子が再会してこその解決。今しかないと、北朝鮮にもっとプレッシャーをかけないといけない。
・北朝鮮にとって日本の経済協力は虎の子。これは変わっていない。
・北が苦しい状況になった時、手を伸ばす選択肢に日本がなるための環境を、作っておくべきだ。
・北朝鮮には時間が経てば ( 家族が亡くなり ) 交渉しやすくなると考える人間がいる。とんでもない話だ。時間は北朝鮮の味方でないと、認識させることが重要だ。
〈 田中氏の意見 〉
・日朝関係の進展を阻んだものは、核問題だ。拉致問題の解決を目指しても、核問題の解決がなければ動けない。
・そのためには、まず米朝が話し合う必要がある。しかし米朝がうまくいかず、今の状況に至っている。
・北朝鮮が核を使うとは思わないが、標的の可能性が最も高いのは日本だ。
・拉致問題が国内のナショナリズムを喚起しやすかったのは、間違いない。安倍元首相の意識の根底にあったものは、戦後体制からの脱却、『自虐史観』の払拭だった。
・しかし日朝を別の ( 政治的 ) 目的で使おうとすれば、解決は遠のく。
・拉致被害者の消息について、北朝鮮の主張を信用するわけにはいかない。時間をかけて調査できる体制が必要だ。平壌に連絡事務所を設置すべきだ。
・日朝関係を動かすということは、核・ミサイルも含めた包括的解決を目指すということだ。
・独裁体制との交渉で大事なのは、権力と直結する相手と関係を築き上げ、水面下の交渉を積み重ねることだ。
両氏の談話についてコメントする前に、息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々にネットの情報を紹介します。
《 拉致事件を放置した政治家・外務省・言論人 》 というタイトルで、平成14年7月に書かれていました。匿名でしたから、この人物は今流行りの「内部告発者」だったと思っています。内部告発者はネット社会特有の現象で、二つの種類に分けられます。
・勇気を奮って告発する「憂国の士」
・世間を騒がせたいと嘘言を発信する「バカ者」
「バカ者」でなく「憂国の士」の情報だと考えましたので、紹介します。
「結論を先に言えば、外務省には、国交交渉再開だけが目標であって、拉致問題の解決など、眼中になかったことは明らかである。」
「拉致被害者の家族で、最も早く外務省に陳情に行ったのは、ヨーロッパから拉致された、有本恵子さんの両親だった。」「昭和63年秋、外務省を訪ねたところ、対応したアジア局北東アジア課の事務官は、日朝交渉の邪魔になるから、騒がないでほしい、と話したという。」( 佐藤勝巳『日本外交はなぜ朝鮮半島に弱いのか』参照 )
「当時はまだ、拉致問題への関心が、ほとんどなかった時期ではある。」「しかし、横田めぐみさんの拉致事件が、明るみに出た平成9年2月以降も、外務省のこの姿勢は変わらなかった。」
「この年の5月、政府は横田さんのケースも含め7件10人が、北朝鮮に拉致されたと認定したが、その4ヶ月後の平成9年10月、阿南惟茂アジア局長(当時・現中国大使)は、新聞記者との懇談で、こう話している。」
文章体になっていますが、読みやすいように問答形式に変えます。
朝日新聞記者
「北朝鮮の拉致疑惑は、証拠もないのに、あんなに盛り上がってしまったんですね」
阿南局長
「拉致疑惑には、亡命者の証言以外に、証拠がないわけなんですから、」「慎重に考えないと、いけないんですね。」「韓国の裁判で証言があると言ったって、韓国に捕まった工作員だから、彼らは何を言うかわからない」
朝日新聞記者
「警察白書に、7件10人という書き方もされているが。」
阿南局長
「この間、議員に『拉致疑惑』と言うと、『疑惑』とは何ごとか、と怒られました。『疑惑』をとって、『拉致事件』と言えと怒られました。」
ここから問答形式をやめ、元の文章に戻ります。
「阿南氏は、日本の警察の発表すら信じず、拉致事件そのものが疑わしいと、言っているのである。」「北朝鮮外交の実務責任者がこれでは、北朝鮮に拉致問題をただすことなど、不可能である。」「この阿南氏の後任が、槇田邦彦・現シンガポール大使である。槇田局長は、平成10年12月の自民党外交部会で、こう述べている。」
「たった十人のことで、日朝正常化交渉がとまっていいのか。拉致にこだわり国交正常化がうまくいかないのは、国益に反する」
この情報をネットに投稿した人物は、誰だったのでしょう。政府内の関係者でなければ知り得ないことを、たくさん書いています。
「まさに、拉致問題は棚上げすべきだというのである。その後、拉致被害者救出運動が盛り上がってくると、槇田氏は拉致は棚上げではないと言い始める。」
「しかしそれは、拉致被害者を救出しようというのでもなく、拉致問題の前進が、北との国交交渉に不可欠だと考えたわけでもなかった。」「平成12年8月、拉致被害者家族の陳情に対して槇田氏は、拉致を棚上げした国交正常化は、世論が許さないでしょう、と言っている。」
「つまり、拉致被害者の家族が立ち上がらず、世論も盛り上がらなければ、外務省は何もしなかったということなのである。」
「この槇田氏の後任が、今度の小泉訪朝を演出し、また首脳会談の際、北朝鮮からの安否情報の一部を、共同宣言調印直前まで、小泉首相や安倍官房副長官に伏せていたと批判されている、田中均・アジア大洋州局長である。」
「田中局長については、今のところ、阿南・槇田両氏のような、露骨な発言は表面化していないが、田中氏が水面下で、拉致問題解明の中止を、働きかけていたことはほぼ間違いない。」「産経新聞は、今年3月23日、次のように報じている。」
嘘言を発信する「バカ者」でない証拠に、この人物は根拠となる情報源を明らかにしています。
「北朝鮮による、日本人拉致容疑事件をめぐって、政府首脳が、外務省の田中均アジア大洋州局長の働きかけに同調し、事実解明のために設置された副大臣プロジェクトの開催中止を、外務省側に通告していたことが、22日明らかになった。」
「こうした、北朝鮮外交の実務責任者の発言、行動を並べてみると、彼らには一貫して、拉致事件が日本の主権問題であるとの認識も、日本国民の生命の安全に対する責任感も、まったくないことは明らかである。」
私も外務省を、時に「害務省」と酷評していますが、日本がまだアメリカの属国状態にあることを思えば、外務省ばかりを責めるのも酷な気がします。長くなりますが、最後にこの人物が紹介している田中氏の発言を入れておきます。
〈 田中均氏の発言 〉
「北朝鮮が日朝正常化交渉で失敗したのは、政治家に頼んだからである。日本では官僚が力を持っている。私のような力のある官僚に頼まないと日朝正常化の問題は解決しない。小泉首相も私が動かしている」(前掲書127頁)
今回の新聞記事の談話を、こうした過去の情報と比較して読むと色々なことが見えてきます。次回はもう一つ、意外なところで発見した「拉致問題」情報を紹介します。