今回は、重村教授の意見をそのまま紹介します。
「日本側が担当者の平壌派遣に前向きなのは、日朝交渉の成果が思うように挙らないことへの焦りがあるのかもしれない。北朝鮮は9月18日に、〈調査はまだ初期段階にあり、この段階をこえた説明はできない〉と日本側に通告し、秋のはじめに予定されていた拉致調査の初回報告を、一方的に延期した。」
こうした具体的な事実を紹介すれば、安倍氏が独断で北との対話を拒絶したと言う、青木氏の説明の根拠が崩れます。
「日本の一部報道には、報告の遅れを理由に経済制裁再発動をほのめかせば、再調査が白紙に戻るのではという声も出始めている。過去40年にわたり日朝交渉を研究してきた重村教授は、こうした見方に対し注意を促す。」
「日本側が交渉を決裂させる覚悟を示せば、北は譲歩するという判断力が必要だ。北朝鮮は拉致被害者の情報をすでに把握している。再調査は壮大な芝居にすぎず、北の揺さぶりに屈してはいけない。困っているのは日本ではなく、北朝鮮だということを認識すべきだ。」
青木氏の嘘を証明しようと、教授の意見を紹介しているのではありません。当時二つの意見が対立していた事実を紹介し、氏が安倍元総理だけを批判していることに疑問を述べているだけです。
「北朝鮮は米国や国連の金融制裁に加え、昨年からは中国主要銀行からのドル送金も中止になった。中朝パイプラインの原油供給も、今年一月からストップしたままだ。国内では権力闘争が続いており、不安定な状態が続いている。最高人民会議を欠席した、金正恩第一書記の健康問題も取り沙汰されており、糖尿病が悪化しているとの情報も出ている。北朝鮮は崩壊の危機に瀕しているのだ。」
崩壊の危機に瀕しているのかどうか、今も分からないままですが、次の事実はハッキリしています。
「内憂外患に苦しむ北朝鮮にとって、喉から手が出るほど欲しいのが日本の人道支援と独自制裁の解除だ。」
「日本側が効果的に交渉を進めれば、拉致問題の解決が可能な状況にあるのは間違いない。だが、日本側が北朝鮮の工作に乗っかり安易な譲歩をすれば、北は拉致問題という交渉カードを温存するだろう。」
「重村教授は、日本政府にいま必要なのは、拉致問題の解決を全面に押した交渉姿勢だと忠告する。〈相手の弱みを突いて譲歩を引き出すのが、外交交渉の鉄則だ。〉日朝交渉が決裂して何も獲得できなければ、北の経済は回らない。北もそうした事態は何としても避けたいはずだ。」
「日本政府は拉致問題の全面解決のためにも、『拉致が解決しない限り、人道支援はしない』という強い姿勢で対応する必要がある。」
以上が重村教授の意見で、記事は次の文章で締め括られています。
「安倍晋三首相は、29日に招集された臨時国会の所信演説のなかで、全ての拉致被害者の家族が、自身の手で肉親を抱き締める日まで私たちの使命は終わらない。今回の調査が全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながるよう、『対話と圧力』『行動対行動』の原則を貫き、全力を尽くす、と述べた。」
「拉致問題の解決を、自らのライフワークと位置づける安部首相だ。工作国家・北朝鮮の手口に屈するわけにはいかない。」
「Yahoo!ニュース」を読めば分かる通り、安倍元総理が一人で強行姿勢を貫いていたのではありません。さらに私が関心を抱いたのは、田中氏の融和路線を批判した重村教授の立ち位置でした。
「ウィキペディア」に、次のような説明がありました。
「重村教授は2002 ( 平成14 )年及び 2009 ( 平成21 )年に、北朝鮮よる拉致問題解決を求める意見広告を、ニューヨーク・タイムズや韓国大手紙に掲載した、「意見広告7人の会」の呼びかけ人の一人である。( 残りの6人は、有田芳生、勝谷誠彦、加藤哲郎、高世仁、日垣隆、湯川れい子 ) 」
メンバーの名前を見ると、教授は保守系の学者でなく反日左翼の人々の仲間でした。反日左翼の中でも、北朝鮮への対応について二つの意見があったと言うことになり、氏の意見を紹介した理由がわかってもらえると思います。
「青木氏の一方的な安倍元総理批判は、妥当性が薄れる。」
息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に伝えたかったのは、これでした。次回は予定通り、「朝鮮総連」に関する情報を紹介します。