ガンダルフはビンゴに,元気を出して,と言って,暖炉に薪をくべます。だが,1人で行くべきではない,指輪の秘密を知っている3人の親友を連れていきなさい。オドとフロドとマーマデューク,彼らに懇願する,必要なら命令してもよい。しかし,すぐに行くのだ。そして,これは大きな冗談という事にするのだ。いいか,これは冗談だ。決して悲しい顔や深刻な顔をするな。冗談好きがおまえさんの家系だ。だからビルボがあんたを気に入ったのだよ。
しかし,ガンダルフ自身も,冗談の先に何があるのか,わからない,というより,考えたくないという感じです。
何度も念を押すように「冗談」というガンダルフがツボ! この時のガンダルフがトールキンさんの気持ちを語っているようです。果たしてこの話をシリアスに作っていいのか? と,決心しかねているっぽくて。
ところで,オドはピピン,マーマデュークはメリーなのですが,ビンゴ・ボルジャー=バギンスとフロド・トゥックはどのようにフロド・バギンスとサム・ギャムジーになったんでしょうね? 単純に,どちらがどちらという話ではない事はもう明らかですし。。ここからもわかるようにビンゴはやっぱしホントに「冗談」キャラなんですよね。しかしガンダルフへの気遣いやビルボとはちょっと違う真面目な所はやっぱり,フロド・バギンスに近づいています。フロドとサムを生み出す過程はまだまだいろいろありそうですね。
そしてガンダルフは,さらに,出発前にある大きなジョークをやる事を提案し,ビンゴにこっそり耳打ちします。ビンゴもその話には和んだようです。(これがお誕生日パーティってか?)
さて,これ以降はIII章の注となります。
クリストファー氏によると,実はこの当時,トールキン氏は「ホビットの冒険」の初版に書かれていたビルボとゴラムの出会いシーンに基づいてゴラムと指輪の話を書いていた事に注意すべきだと言っています。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが,「ホビットの冒険」のその部分は,1951年に改訂されるまで,こんな感じでだったそうです。
If precious asks, and it doen't answer, we eats it, my preciousss. If it asks us, and we doesn't answer, we gives it a present, gollum!
そしてビルボが勝つと,ゴラムはちゃんと約束を守って指輪を探しに行きますが,その時既にビルボが指輪を持っていたので,見つかりません。するとゴラムは,
We are ssorry. we didn't mean to cheat, we meant to give it out only present, if it won the competition.
と言って一生懸命謝ったそうです。
ビルボはわかった,と言い,その代わり出口まで案内を頼みます。そして最後に"good-bye"と言って汚い惨めな生物と別れました。途中ビルボが指輪をはめてみると,ゴラムは一瞬彼を見失ったので,彼はゴラムの指輪を「もらって」しまったのだと認識します。
そうそう,「ホビットの冒険」の初版に何が書いてあったのか,私探していたんですよね。