The Joy Luck Club 価格:¥ 1,639(税込) 発売日:2006-09-21 |
An-meiおばさんの生い立ちです。
私は寧派;という町で育った。
子供の時、婆ちゃんから「お前の母さんは幽霊だ」と言われたので、母の記憶がない。幽霊とは語らざるべからず人物、の意味。従って、私の家族は父と弟と思ってた。
時々、幽霊は子供をさらうそうだ。とりわけ聞き分けのない女の子。しかし私と弟は、がちょうのはらわたのような、誰も欲しがらない卵なので、幽霊にさらわれる心配はないと婆ちゃんは言う。(An-meiは1914年生まれ)
婆ちゃんはいつも怖かったけど、病気になった時はもっと怖かった。私が9才の時、婆ちゃんは業病にかかり、体中腐って異臭を発していた。すると婆ちゃんは私を呼び、いろいろな話をした。。。
ある欲張りな女の子の話。彼女のお腹はどんどん膨れた。ある日誰の子供と聞かれて、服毒自殺した。お腹を開けると、大きなまくわうりが出てきた。「もしお前が欲張りになるとお腹にはお前のお腹を空かすものが入るんだよ」と婆ちゃんは結論する。
また大人の言う事を聞かない女の子の話、ある日彼女は、おばさんに頼まれた簡単な頼み事が嫌で、首を降り続けたら、ついに脳味噌が出てからっぽになってしまった。「あまりいろいろ考えていると、他のものが出ていってしまうよ」
そしていよいよ病気がひどくなる直前、婆ちゃんは言った。「母さんの名前を決して言うな。それはお前の父さんの墓につばをかけるようなもんだ」
私は家の広間の肖像画でしか父を知らない。いつどこにいても、睨んでいるような肖像画だった。婆ちゃんによれば、父は何でも見てるという事だったので、友達に石を投げたり、不注意で本をなくした時は部屋に隠れた。
私にとって、この家は不幸の固まりだったけど、弟にはそうではなかったようで、彼はいつも無邪気に自転車を乗り回し、笑い、おじさんおばさんがいない時はソファで跳ね回っていた。
しかしそんな弟も不幸にする事件が勃発。ある日葬列を見ていたら、家の前で亡くなった人の絵が落ちて、それを笑った弟をおばさんがひっぱたいて「お前にはshouがない。ご先祖様を敬う気持ちがない。お前の母親と一緒だよ」
「お前の母親は北から持参金も持たずに嫁に来た。10組の銀の箸も持たずに来た。お父さんの墓にも敬意を持たない。そして2人の愛人と妻を持つWu Tsingという男と結婚しちまったんだ」弟はそれをなじった。すると弟を、門に押しつけつばを吐いて「よくも言ったな、お前なんか何でもない。お前の母親は裏切り者の最下層の女だ。悪魔にも見下されるんだぞ」私はそれを聞いて、婆ちゃんの話がわかってきた
自分の母親は考えの浅い、よく笑い、人の言う事を聞かない女だ。箸を何度も甘いものに漬ける女だ。婆ちゃんと不幸な父さん、聞き分けのない子供達から解放されて幸福になった。そんな女の子供である事は不幸で、置いて行かれたのも不幸だ。。。という事を、父の絵から隠れている時に考えていた。
ある日、女性が家に来た。
記憶になくても、それは母だとすぐわかった。母は背が高く、学校の横柄な宣教師のような容姿だ。おばさんは目をそらし、お茶も出さず、使用人はさっさと逃げ出す。思わず目が合った母の顔は自分と瓜二つ。
おばさんは婆ちゃんの部屋で防御。しかし母は構わず、「あなたの娘よ。帰ってきたわ」婆ちゃん目をぱちくり。もし元気なら母をさっさと追い出すだろう。
母は美人でスタイルが良い。
部屋に戻ってくるとそこに母がいて、まるで毎日そうしているかのように、長いすに座って、髪の毛をすきはじめた「An-mei、いい子だった?」
私は、自分はお腹に冬瓜を抱えた少女だと思えてきた。
「私が誰だか知っているわよね」
耳から脳味噌が出た。
彼女は私の首筋の傷跡を見つけると撫で始めた。母の記憶が肌に戻る。母は泣き出した。
その時私はは4才。夕食の時間、赤ん坊の弟が婆ちゃんの膝に乗っていた。これから食べようという時、ドアに長身の女性が立っていた。会話が止まる。声を出したのは私。母の所へ走ろうとするが、おばにひっぱたかれる。母は私の名を呼ぶ。婆ちゃん「誰だこの幽霊は?3番目の妾か!娘を連れて行ったら、娘もそうなる。顔なしめ!顔を上げるな!」しかしさらに娘を呼ぶ母の声、
母が近づいて来たその時、テーブルのスープ鍋が倒れて、中身が私の首にぶちまけられる。このような恐ろしい出来事は、子供から記憶を消し去ってしまうのだ。私の鳴き声はすぐにやんでしまった。なぜなら、スープが彼女の喉を焼き、呼吸を困難にしたからだ。
その記憶を思い出した私は、しゃべる事ができない。
さてその事件の夜、(婆ちゃんは信じられない事を言う。)「An-mei、聞きなさい。お前の死に装束を作った。安いやつだ。お前はまだ子供だからな。お前はまだ子供だから死んでも、家族に尽くす義務がある。お前の葬式は小さい。私達が喪に服す時間も短いぞ」
そしてさらに悪い事を「お前の母親は、涙を使い果たした。お前の事などすぐ忘れる」
婆ちゃんは頭が良い。私は、すぐにあの世から母を捜しにこの世に戻ってきた。婆ちゃんは私の喉に冷たい水をあてて、手当をした。婆ちゃんの指はピンセットのように上手に死んだ皮を剥いた。2年かけて傷が癒えて、傷口が閉まり、痛い記憶も一緒に封じ込められ、母の記憶がなくなった。
私は夢の中の母が好きだった。今目の前にいる母は、夢の母とは違うけど、好きだ。謝りに来たのではない。婆ちゃんが、私が死にそうな時に追い出したのだ。私にはわかっている。他の男と結婚して幸せを入れ替えた事もわかっている。
私は母を好きになった。母の中に自分の姿を見たから。その夜婆ちゃんはいよいよ危篤に。私はきれいな服を着て待っていると、母がスープを作っていた。すると母はやおらナイフを取り出し、泣きながら自分の腕を切って肉をスープに入れた。これは母子の縁を取り戻す、古くからのやり方だ。母は婆ちゃんの口を開けてスープを流す。
しかし婆ちゃんは逝った。
私は幼くても理解できた。母と子の絆は骨に深く刻まれている。肉の痛みは何でもなく忘れるべきものだ。絆を思い出すには、傷も皮膚も肉もなくなるまでそぎ落とさなくてはならない事がある。
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