詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

無題

2008年12月02日 | 日記
鍋という鍋を 
とっくの昔に
みんな焦がしてしまったので
もう料理を作ることは不可能

「夏の扉」という
復讐のために書かれたSFの中の猫は
遠い日の水色のアルバムの中で
もうずっと長いあいだ迷子

かっての旅人は
かっての恋人に
もう二度と出会えないというのに
舳先から
指の先から
したたる滴のような朝がまたやってくる

夢色に滲んだ蝶が
海霧を渡ってゆく夢だったのだと
呟いてる暇もなく
つぎつぎと
同じような時代がまた
同じような相貌でめぐり廻ってくる

風に聴く

2008年12月02日 | 日記
風に聴いている
いつの間にかみんな
どうしてこんなにも
不幸せになってしまったのか
一回こっきりの人生だというのに

ついさっきのニュースにも
鉄道への身投げの人身事故で
数時間不通のなんとか線であるとか
数日前には
首都圏で三件もの人身事故があったとか

風に聴いている
いつの間にかみんな
どうしてこんなにも
一枚の紙よりも頼りない
不幸せへと追い込まれてしまったのか
一回こっきりの人生だというのに

風が通りぬけていった後の森には
無音の音という音が
誇らしげに屹立している
聞こえてこないのは
欲に盲しいた終末期の人類ばかり

風が通底してゆく先の荒野には
すべてのものが覆い隠されている
立ち尽くすばかりの夢の迷路から
未来へと抜け出だす道は
きっとどこかに
隠されているはずなのに

葉群生い茂るブナの樹のように生きることや
誰もが癒され
誰もが微笑み出さずにいられない人生は
もはやぼくらには
望むべくもないものなのか

河原

2008年12月02日 | 日記
深夜の河原の川向うから
むせび泣くような
トランペットの音が聞こえてきた

誰が吹いてるのか
夜を引き裂くような
哀しみのトランペットの音よ

この河原は
星降る夜に
きみとどこまでも歩いた河原
きみの死亡通知を受け取って
天を仰ぎながら歩いた河原

母が亡くなった日にも
とぼとぼと
後悔で濡れそぼりながら
海までへと歩いた河原

深夜の線路を
ドーベルマンかと見まごう二匹の犬が
まるで悪魔と天使みたいに
じゃれあいながら
海へと疾走していった河原

河原では
いつの夜にも
降るような銀河がよく似合っていた