その一部を、大きな感動ともにコピーしたい。全文はーhttp://critic5.exblog.jp/10043204/#10043204_1
《グローバル市場で圧倒的な競争力を持ち、世界中で商品が売れて過去最高の利益を何年間も出し続けたのは誰なのか。その競争力や空前の利益は、誰の犠牲によって産み出されていたのか。経理の金庫の中に入ったはずの何年分かの「過去最高の利益」は、どこかに消えてしまったのか。真っ先に派遣労働者の大量解雇を行った大企業で、倒産の危機に瀕している会社はあるのか。同じグローバル市場で競争している欧州の企業と政府は、この不況にどう対応しているのか。
ドイツのダイムラーは、従業員に給与を保障して一時帰休で凌いでいる。欧州の企業よりぶ厚い内部留保(過去利益の蓄積)を持っている日本の企業が、従業員の解雇という最終で最悪の経営合理化手段を避けられないはずがない。現実には、湯浅誠が言っていたとおり、トヨタやキャノンのような、今年上半期まで過去最高の利益を出していた世界に冠たるエクセレントカンパニーが、他の企業に先駆けて、まるで手本を示すように、冷酷無慈悲に派遣労働者の首切りを実行しているのである。「グローバル市場の競争」や「企業の生き残り」は首切りを正当化する理由にはならない。内部留保のわずかな部分を手当てするだけで、あるいは株主配当を減らすだけで、失業者を出さずに抱え置くことは十分できる。門脇英晴の説明が当を得たものなら、ダイムラー社は来年早々に倒産しなければならなくなるだろう。経営環境が悪化すれば簡単に労働者の首を切る新自由主義の経営思想が身に染み付いているから、日本の企業は欧州と同じ対応ができないのであり、門脇英晴の空疎な常套句が正論でまかり通る。
新自由主義のイデオロギーが社会を支配しているとは、具体的にはこういうことであり、溜めた利益が腐るほどあっても、株価のため、株主のため、今期の利益のため、経営者は自由に労働者の首を切り、切られる労働者は黙って無抵抗に現実を受け入れるのであり、経営者の首切りを擁護し正当化する人間が政府の諮問会議の委員になって労働法制を差配するのである。新自由主義者が会社の経営者であるとき、企業の社会的責任とは、失業者を出さないように努力して社会不安を抑えるのではなく、大量のホームレスを街に掃き出し、格差社会をさらに純化して、株主や富裕層に満足と安心を与えることなのだ。「企業の社会的責任」の意味が違うのであり、理想とする社会が最初から異なっている。「グローバル市場の競争」云々は単なるこじつけの枕詞で、そう言えば誰もが納得して簡単に頷くからそう言っているに過ぎない。グローバル企業である日本の製造業が賃金が安いはずの中国や東南アジアに出て行かないのは何故なのか。日本で作る方が安くて品質のよい製品が作れるからである。労働力のコストパフォーマンスがよく、首も簡単に切れるからだ。
オランダの事例の後、番組の後半では職業訓練の話題になり、門脇英晴が、日本では労働者の教育訓練が成果が上がらないとか、非正規労働者の職業訓練は企業だけに負担させるななどと言っていた。日本では教育訓練の成果が上がらないとは、一体どのような現実を指して言っているのだろう。意味が不明だ。
NHKの今回の番組の結論は、オランダ並みの賃金と社会保障(教育訓練・失業補償)を派遣労働者に与える代わりに、日本もオランダ並みの消費税(19%)に引き上げようというものだった。鎌田靖の『ワーキングプア』を別にして、この種の問題を扱った最近のNHKの報道番組は、常にこの結論に向かっての一点誘導になる。昨年末から、NHKの報道での「社会保障=消費税」の言説攻勢は凄まじく、朝日新聞と同じく世論固めに余念が無かった。5月の第1回放送でも、落としどころは消費税増税論で、吉川洋が「持続可能な制度」と「給付と負担の均衡」を唱えていた。討論が編集されて放送されている可能性もあるが、湯浅誠と神野直彦にはもっと反論をして欲しかった。政府は国民に約束をしていたはずである。消費税を上げる前には、税金の無駄遣いをやめ、天下り法人の整理をして、まず官僚機構が大鉈手術の痛みに耐えて、その上で国民の納得を得て消費税を上げるのだと。その約束を果たしてもらわなければならない。しかるに、官僚の無駄遣いは年々甚だしくなり、隠蔽工作も大胆で露骨になっていて、居酒屋タクシーなど以前はなかった無駄遣いが公然と行われている。予算を見ると、結局、国の出先機関の廃止統合は見送られた。
官僚とマスコミの言う社会保障費の支出増の説得で、われわれは簡単に消費税引き上げを受け入れてはいけない。その前に、天下り公益法人を整理解散する方が先であり、国の出先機関を廃止して地方自治体に移管する方が先だ。特別会計の無駄を絞る方が先だ。官僚が身を削った後でなければ消費税増税を受諾してはならない。約束の履行が先だ。最後に、12/14の朝日新聞(10面)に大佛次郎論壇賞の発表があり、湯浅誠の『反貧困』の受賞が決まったことが紹介されていた。まさに今年の論壇を代表する一冊で、私が選者でもこの作品を推す。この本は古典になるだろう。大学の社会科学系の学部の教官ならば、新入学生の必読文献に指定して読ませるだろう。そして単なる古典ではなく、政治と社会を動かす歴史的な文献となり、大袈裟に言えば、『共産党宣言』のような地位を得ることだろう。受賞についての湯浅誠の発言がきわめて印象的だった。「大変光栄ですが、私は論壇の人間ではないので、複雑な気持ちもあります。私が受賞したのは、論壇の社会的なメッセージ力が落ちているからでしょう。研究をよく続け、専門的な知識がある人たちに、もっとメッセージを発してもらいたいと思います」。
同感だ。こう言ってくれる人間が現れることを、私は何年待ったことだろう。期待した指導者がやっと出てきてくれた。》
《グローバル市場で圧倒的な競争力を持ち、世界中で商品が売れて過去最高の利益を何年間も出し続けたのは誰なのか。その競争力や空前の利益は、誰の犠牲によって産み出されていたのか。経理の金庫の中に入ったはずの何年分かの「過去最高の利益」は、どこかに消えてしまったのか。真っ先に派遣労働者の大量解雇を行った大企業で、倒産の危機に瀕している会社はあるのか。同じグローバル市場で競争している欧州の企業と政府は、この不況にどう対応しているのか。
ドイツのダイムラーは、従業員に給与を保障して一時帰休で凌いでいる。欧州の企業よりぶ厚い内部留保(過去利益の蓄積)を持っている日本の企業が、従業員の解雇という最終で最悪の経営合理化手段を避けられないはずがない。現実には、湯浅誠が言っていたとおり、トヨタやキャノンのような、今年上半期まで過去最高の利益を出していた世界に冠たるエクセレントカンパニーが、他の企業に先駆けて、まるで手本を示すように、冷酷無慈悲に派遣労働者の首切りを実行しているのである。「グローバル市場の競争」や「企業の生き残り」は首切りを正当化する理由にはならない。内部留保のわずかな部分を手当てするだけで、あるいは株主配当を減らすだけで、失業者を出さずに抱え置くことは十分できる。門脇英晴の説明が当を得たものなら、ダイムラー社は来年早々に倒産しなければならなくなるだろう。経営環境が悪化すれば簡単に労働者の首を切る新自由主義の経営思想が身に染み付いているから、日本の企業は欧州と同じ対応ができないのであり、門脇英晴の空疎な常套句が正論でまかり通る。
新自由主義のイデオロギーが社会を支配しているとは、具体的にはこういうことであり、溜めた利益が腐るほどあっても、株価のため、株主のため、今期の利益のため、経営者は自由に労働者の首を切り、切られる労働者は黙って無抵抗に現実を受け入れるのであり、経営者の首切りを擁護し正当化する人間が政府の諮問会議の委員になって労働法制を差配するのである。新自由主義者が会社の経営者であるとき、企業の社会的責任とは、失業者を出さないように努力して社会不安を抑えるのではなく、大量のホームレスを街に掃き出し、格差社会をさらに純化して、株主や富裕層に満足と安心を与えることなのだ。「企業の社会的責任」の意味が違うのであり、理想とする社会が最初から異なっている。「グローバル市場の競争」云々は単なるこじつけの枕詞で、そう言えば誰もが納得して簡単に頷くからそう言っているに過ぎない。グローバル企業である日本の製造業が賃金が安いはずの中国や東南アジアに出て行かないのは何故なのか。日本で作る方が安くて品質のよい製品が作れるからである。労働力のコストパフォーマンスがよく、首も簡単に切れるからだ。
オランダの事例の後、番組の後半では職業訓練の話題になり、門脇英晴が、日本では労働者の教育訓練が成果が上がらないとか、非正規労働者の職業訓練は企業だけに負担させるななどと言っていた。日本では教育訓練の成果が上がらないとは、一体どのような現実を指して言っているのだろう。意味が不明だ。
NHKの今回の番組の結論は、オランダ並みの賃金と社会保障(教育訓練・失業補償)を派遣労働者に与える代わりに、日本もオランダ並みの消費税(19%)に引き上げようというものだった。鎌田靖の『ワーキングプア』を別にして、この種の問題を扱った最近のNHKの報道番組は、常にこの結論に向かっての一点誘導になる。昨年末から、NHKの報道での「社会保障=消費税」の言説攻勢は凄まじく、朝日新聞と同じく世論固めに余念が無かった。5月の第1回放送でも、落としどころは消費税増税論で、吉川洋が「持続可能な制度」と「給付と負担の均衡」を唱えていた。討論が編集されて放送されている可能性もあるが、湯浅誠と神野直彦にはもっと反論をして欲しかった。政府は国民に約束をしていたはずである。消費税を上げる前には、税金の無駄遣いをやめ、天下り法人の整理をして、まず官僚機構が大鉈手術の痛みに耐えて、その上で国民の納得を得て消費税を上げるのだと。その約束を果たしてもらわなければならない。しかるに、官僚の無駄遣いは年々甚だしくなり、隠蔽工作も大胆で露骨になっていて、居酒屋タクシーなど以前はなかった無駄遣いが公然と行われている。予算を見ると、結局、国の出先機関の廃止統合は見送られた。
官僚とマスコミの言う社会保障費の支出増の説得で、われわれは簡単に消費税引き上げを受け入れてはいけない。その前に、天下り公益法人を整理解散する方が先であり、国の出先機関を廃止して地方自治体に移管する方が先だ。特別会計の無駄を絞る方が先だ。官僚が身を削った後でなければ消費税増税を受諾してはならない。約束の履行が先だ。最後に、12/14の朝日新聞(10面)に大佛次郎論壇賞の発表があり、湯浅誠の『反貧困』の受賞が決まったことが紹介されていた。まさに今年の論壇を代表する一冊で、私が選者でもこの作品を推す。この本は古典になるだろう。大学の社会科学系の学部の教官ならば、新入学生の必読文献に指定して読ませるだろう。そして単なる古典ではなく、政治と社会を動かす歴史的な文献となり、大袈裟に言えば、『共産党宣言』のような地位を得ることだろう。受賞についての湯浅誠の発言がきわめて印象的だった。「大変光栄ですが、私は論壇の人間ではないので、複雑な気持ちもあります。私が受賞したのは、論壇の社会的なメッセージ力が落ちているからでしょう。研究をよく続け、専門的な知識がある人たちに、もっとメッセージを発してもらいたいと思います」。
同感だ。こう言ってくれる人間が現れることを、私は何年待ったことだろう。期待した指導者がやっと出てきてくれた。》