朝8時、24時間勤務が終わった。
私はタワーマンションを出て、帰り道にある海の見える
石でできたベンチに坐りタバコを吸う。
昨日もいろいろありました。
昨日の朝、ハウスクリーニングの業者が来た。
私が入館手続きをした。
車を停めるところはあるかといわれ、モニター監視をしている警備員に
無線で訊くと、ないという。
日曜日でゲスト駐車場が満車のようだ。
車をどこか(おそらく路上駐車)においてきたようで、
ハウスクリーニングをする3人の業者が掃除用具を台車に積み、
マンションの横を通り過ぎていく。
マンションに入るときは私を呼んでくれと、
入館手続きのときいっといたのに勝手に行く。
業者の搬入口は鍵がかかっていて警備員が開けなければ入れない。
私が追いかけて「どこから入るのですか?」と訊く。
すると3人が口汚く私をなじる。
「駐車違反で捕まったらあんた金払ってくれるのか」
「なんで入るとこに鍵かかってんだよ」
私は何もいう気がしなかった。
前から予約していればゲスト駐車場には停められる。
搬入口に鍵がかかっているのは防犯上のことだ。
なんでそんなことで私が文句をいわれなければならないのだ。
たしかに、このタワーマンションは一般のマンションとはちがう。
業者にとっていろいろやりずらいこともあるだろう。
でも、このマンションの居住者はそれが気に入って住んでいるのだ。
このタワーマンションのシステムに高い金を払っているのだ。
その居住者がお客なのだから、その客を相手に仕事をするには、
そこに合わせなければ仕事は増えていかない。
ゲスト駐車場に停めた車が時間が過ぎても出て行かない。
次の車が入ってくる時間がせまっている。
私はインターフォンでその住人に時間が過ぎていることを
連絡しようとしたが、その人がでない。
家の電話番号を調べて電話してもでない。
ゲスト駐車場を映すモニターを見ると、その車に人が乗る様子が映る。
家にいたのだ。
次の人が駐車する5分前にその車は出庫した。
ごみ処理場の前に車が停まっている。
30分ほどの駐車なら黙認している。
しかし、それ以上停められていると、それなりの処置をしなくてはならない。
立哨している警備員に無線を飛ばし、車のナンバーを教えてもらい、
居住者のリストから車の所有者がわかれば移動してもらうように連絡する。
わからなければフロントガラスに、
「ここは駐車場ではありません。すぐ移動してください。管理組合」
と書いた紙を貼ってもらうように無線で外の警備員にいわなければならない。
こういう車が日に何台もある。
モニター監視は私の嫌いな仕事だ。
夜8時頃、私が防災センター(モニター監視)にいるときに、
インターフォンの非常呼び出し警報が鳴った。
どうせ居住者の押し間違いなのだ。
無線で立哨している警備員に現場確認を依頼する。
やっぱり住んでいる人の押し間違いだった。
どうしてここの居住者は非常ボタンを間違えて押すのだろう。
毎日のようにある。1200世帯も住んでいるとしかたないかな。
地下鉄の駅に歩いていく。
駅のホームには、月曜日の朝の憂鬱をかかえたサラリーマンが大勢いる。
電車は坐れなかった。
銀座まで10分のこの駅を利用する人々はいい会社に勤めてる人が多いのだろう。
みんなそれなりのきれいな服を着ている。
私といえば、ジーパンにユニクロで2980円で買った防寒ジャケットだ。
仕事で制服の下はワイシャツにネクタイだから、白いワイシャツを着ている。
まったくアンバランスなファッションだ。
わざわざワイシャツを持って行くのが面倒なので着ている。
かっこなんてどうでもいい。生きていくのに必死です。
(いや、たんに無精なだけですね)
地下鉄有楽町駅で少し人が降りて私は坐れた。
文庫本を開く。
今読んでいるのは、「骨音 池袋ウエストゲートパークⅢ」(石井衣良著)です。
なんとなくこの作家には文章の臭さを感じるのですが、読んでいる。
好きなんですね、この人が。
しかし、永田町あたりにくると瞼が重くなる。
麹町とか飯田橋なんて駅名をおぼろげに聴く。
ある駅に電車が停まり目を開けホームの様子を見て私は焦って降りる。
池袋だった。
ほっとしていると、うしろから声がした。
「これ忘れ物です」
女性だった。20代ぐらい。普通の感じだった。
私は文庫本を渡され恐縮して頭を深々と下げお礼をいった。
ホームを歩いているとき、エスカレーターに乗っているとき、
私は、静かな感動を味わった。
目の前の座席の粗末なかっこをしたおやじが急いで電車を降りて文庫本を忘れた。
そんなものほっとけばいい。
なのにあの女性はわざわざ電車を降りて文庫本を私に渡してくれた。
私はあらためて心の中で女性にお礼をいった。
私はいったん外に出た。
池袋ウエストゲートパークの近くの喫煙所でタバコを吸った。
人間、生きているのもまんざらわるくないですね。
私はタワーマンションを出て、帰り道にある海の見える
石でできたベンチに坐りタバコを吸う。
昨日もいろいろありました。
昨日の朝、ハウスクリーニングの業者が来た。
私が入館手続きをした。
車を停めるところはあるかといわれ、モニター監視をしている警備員に
無線で訊くと、ないという。
日曜日でゲスト駐車場が満車のようだ。
車をどこか(おそらく路上駐車)においてきたようで、
ハウスクリーニングをする3人の業者が掃除用具を台車に積み、
マンションの横を通り過ぎていく。
マンションに入るときは私を呼んでくれと、
入館手続きのときいっといたのに勝手に行く。
業者の搬入口は鍵がかかっていて警備員が開けなければ入れない。
私が追いかけて「どこから入るのですか?」と訊く。
すると3人が口汚く私をなじる。
「駐車違反で捕まったらあんた金払ってくれるのか」
「なんで入るとこに鍵かかってんだよ」
私は何もいう気がしなかった。
前から予約していればゲスト駐車場には停められる。
搬入口に鍵がかかっているのは防犯上のことだ。
なんでそんなことで私が文句をいわれなければならないのだ。
たしかに、このタワーマンションは一般のマンションとはちがう。
業者にとっていろいろやりずらいこともあるだろう。
でも、このマンションの居住者はそれが気に入って住んでいるのだ。
このタワーマンションのシステムに高い金を払っているのだ。
その居住者がお客なのだから、その客を相手に仕事をするには、
そこに合わせなければ仕事は増えていかない。
ゲスト駐車場に停めた車が時間が過ぎても出て行かない。
次の車が入ってくる時間がせまっている。
私はインターフォンでその住人に時間が過ぎていることを
連絡しようとしたが、その人がでない。
家の電話番号を調べて電話してもでない。
ゲスト駐車場を映すモニターを見ると、その車に人が乗る様子が映る。
家にいたのだ。
次の人が駐車する5分前にその車は出庫した。
ごみ処理場の前に車が停まっている。
30分ほどの駐車なら黙認している。
しかし、それ以上停められていると、それなりの処置をしなくてはならない。
立哨している警備員に無線を飛ばし、車のナンバーを教えてもらい、
居住者のリストから車の所有者がわかれば移動してもらうように連絡する。
わからなければフロントガラスに、
「ここは駐車場ではありません。すぐ移動してください。管理組合」
と書いた紙を貼ってもらうように無線で外の警備員にいわなければならない。
こういう車が日に何台もある。
モニター監視は私の嫌いな仕事だ。
夜8時頃、私が防災センター(モニター監視)にいるときに、
インターフォンの非常呼び出し警報が鳴った。
どうせ居住者の押し間違いなのだ。
無線で立哨している警備員に現場確認を依頼する。
やっぱり住んでいる人の押し間違いだった。
どうしてここの居住者は非常ボタンを間違えて押すのだろう。
毎日のようにある。1200世帯も住んでいるとしかたないかな。
地下鉄の駅に歩いていく。
駅のホームには、月曜日の朝の憂鬱をかかえたサラリーマンが大勢いる。
電車は坐れなかった。
銀座まで10分のこの駅を利用する人々はいい会社に勤めてる人が多いのだろう。
みんなそれなりのきれいな服を着ている。
私といえば、ジーパンにユニクロで2980円で買った防寒ジャケットだ。
仕事で制服の下はワイシャツにネクタイだから、白いワイシャツを着ている。
まったくアンバランスなファッションだ。
わざわざワイシャツを持って行くのが面倒なので着ている。
かっこなんてどうでもいい。生きていくのに必死です。
(いや、たんに無精なだけですね)
地下鉄有楽町駅で少し人が降りて私は坐れた。
文庫本を開く。
今読んでいるのは、「骨音 池袋ウエストゲートパークⅢ」(石井衣良著)です。
なんとなくこの作家には文章の臭さを感じるのですが、読んでいる。
好きなんですね、この人が。
しかし、永田町あたりにくると瞼が重くなる。
麹町とか飯田橋なんて駅名をおぼろげに聴く。
ある駅に電車が停まり目を開けホームの様子を見て私は焦って降りる。
池袋だった。
ほっとしていると、うしろから声がした。
「これ忘れ物です」
女性だった。20代ぐらい。普通の感じだった。
私は文庫本を渡され恐縮して頭を深々と下げお礼をいった。
ホームを歩いているとき、エスカレーターに乗っているとき、
私は、静かな感動を味わった。
目の前の座席の粗末なかっこをしたおやじが急いで電車を降りて文庫本を忘れた。
そんなものほっとけばいい。
なのにあの女性はわざわざ電車を降りて文庫本を私に渡してくれた。
私はあらためて心の中で女性にお礼をいった。
私はいったん外に出た。
池袋ウエストゲートパークの近くの喫煙所でタバコを吸った。
人間、生きているのもまんざらわるくないですね。