誰が考えやがったんだ、こんな日を。
ヴァレンタインディも、迷惑な日だが、それはそれとして、なに
もそれに対してお返しの日なんていうものをつくんなくてもいいじ
ゃないか。
おれの職場は、おれ以外女性ばかり。現在、日本人が5人、ペル
ー人が3人、ブラジル人が3人、と計11人です。
そのうちの、悪習に染まっている日本人5人が、ヴァレンタイン
ディにチョコレートをくれた。あれは、どう見積もっても5、6百
円のしろものだ。5人合わせてだ。腹の立つことに、それのほとん
どを食べたのは女房だ。
そんなわけで、おれは、昨日、お返しのキャンディをスーパーで
買うはめになった。前からの予定では、女房が買うはずだった。そ
れが、来週のフラメンコ公演の練習に行っちゃって買えなくなって
しまった。
スーパーの入り口に、小癪にもそれらは陳列されていた。前から
知っていた。目星もつけていた。2百円のものだ。5人だから千円
になる。ああ…、くやしい。
おれの前にいたおやじが、6百円のを5個買った。負けた。しか
し、アルバイトの女の子が慣れてないせいか、包装が遅い。おれは、
ホワイトディのキャンディの並んでいる前になんぞいることが、恥
ずかしかった。おれの美学に、生き方に反した。
やっとキャンディを包み終えた女の子に、おやじは、「一個一個
包まなくてもよかったのに」なんてぬかしやがる。前に突っ立って
たんだから、包装してるときにいえばいいものを、全部包装し終え
てからそんなことをいう。その後ろでじれていたおれの立場はどう
してくれるんだ。
スーパーに出入りする客の目線が、全部おれに注がれていたよう
な気がして、生きてる心地がしなかった。
ああ…、おれは、ヴァレンタインディもホワイトディも嫌いだ。
さっきまで、安いキャンディに少しでも思いを込めようと、パソ
コンでカードを作った。メッセージを書き、キャンディの入ってる
ビニールの小袋に入れました。
なんだかんだいっても、いろいろめんどくさくて、金もかかるけ
ど、このカードを見て、あの人たちがどう思うかなと考えると、ち
ょっぴり楽しい気分がないこともないな。
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3月の九想話
3/2 おひなさま
3/3 未中年の悩み
3/13 ホワイトディ