◎絶対無に軸足
(2013-05-20)
十牛図には、有名なのが2種類あって、皆が存じているのは、廓庵の十牛図。もう一つは普明禅師の十牛図。
普明禅師の十牛図の特徴は、最後の第十図が一円相で終わっていること。廓庵の十牛図では一円相は、第八図であり、その後に現実世界に戻って生きる図が2図追加されている。
光明を得れば(悟りを開けば)、それに出会っただけで人間としてはほとんど問題がなくなるので、それだけで生命を終わってしまう者が少なくないという。つまり一円相を最終ステージとする求道者の人生が普明の十牛図と言える。
光明を得た後でも、人は食うために、あるいは日々の営みをするために日常生活をしなければならない。光明を得るというのは、体験ではなく、体験とは言えない体験であり、それを境に別の人生が展開する。
つまり光明を得た後に生き残るというのは、普明禅師の想定しない世界なのだ。しかし、達磨、臨済、趙州など、いくらでも大悟の後に何年も存命した祖師はいる。つまり廓庵の十牛図は人間の方に軸足がある十牛図だと言える。
その点で普明の十牛図というのは、絶対無に一致した時点で目的達成なので、神の方、絶対無の方に軸足を置いた十牛図だと言える。