◎気配を感じる金光の線
エーテル体が、傘の骨状の形であって、経絡に沿って広がっていることは知られている。合気道開祖植芝盛平は、他人の気配を感じるのに体外にハリネズミ様に広がる金光線を用い、この金光線に触れると、植芝盛平の肉体に触れる前に、他人は一瞬にして吹っ飛んだという。エーテル体では、気で巡らしたバリアーを作れるということだろうか。
『新撰組の猛者よ、しっかりせい
ある時、こんなこともあった。大阪警察署長の森田儀一が、大阪の門弟や東京から来ている若い連中に、
「一ぺんお前たち、先生のスキを見て、一分間でもよいから、みんなで先生を押さえて見ろよ。もし一分間押さえてることが出来たら、何でも御馳走してやるぜ」
といってけしかけた。
若いものたちは早速ある夜ふけ、先生の休んでいる寝所に忍び寄って、それも気づかれたり、音をたてたりしないように廊下に座布団を敷きならべて、ソーッと近づいていったが、一間半〈三メートル)ほどに近づくと何か声がしたようでもあり、起きているようで、どうしても近づけない。何べんもやってみたが、どうしても押さえられなかった。
そのような事が一、二ヵ月もつづいたのであった。それでは先生は熟睡することがなく、いつも半ば起きてるのだろうか、それではノイローゼになるが・・・・と、わざわざ医師を呼んで先生の健康診断をしてもらったが、盛平は、「わしはどこも悪くないよ」といっていた。医者も、「先生の体は三十歳ぐらいの体です」といった。
「森田さん、どうしてわしの体を診断させたんや?」と先生から問いつめられた森田は、「実はこういうわけで門人たちをけしかけ、先生の寝込みを一分間でも押さえてみろと企らんだのですが、先生はいつも気づいているようで寝ていないらしいから、それではノイローゼになると心配になったものですから・・・・・」と説明すると、
「わしは、充分に熟睡してるがな」といって、「わしの体からは常に金光の線が出ていて、普通は九尺から一丈(三メートル〉ぐらい出ているんじゃが、長いときは十五尺〈五メートル)ぐらい出てるから、人がそこまで来るとすぐわかるんじゃ。前から来ても横から来ても、また後ろから来てもすぐわかるんじゃよ」
と話すのであった。これには森田もあっけにとられた。』
(合気道開祖植芝盛平/砂泊兼基/講談社p177-178から引用)