「小人閑居して不善を為す」と言う諺があります。
意味は、小人物が暇を持て余すと、とかく悪事に走りやすいと言うことですが、その恰好の事例が兵庫県の県議会議員にありました。
既に、マスコミ報道でご存知のことですが、今や日本の、いや世界の笑い者になったこの騒ぎを、この諺と絡めてご紹介します。
「小人閑居して不善を為す」の「小人」とは、「君子」に対する語であり、教養や人徳のない人のこと。
「閑居」とは、暇を持て余し何もせず日々を過ごすことです。
出典は四書の一つ、『大学』にある有名な言葉の一部です。
原文は、「故君子必慎其独也、小人閑居為不善」、読みは「故に君子は必ずその独りを慎むなり、小人間居(かんきょ)して不善を為す」です。
語訳は「そのため、君子は必ず自分ひとりしか知らないこと(他人に見られていない言動)を慎むのである。 徳のない小人は暇を持て余して家にこもると、人目を憚らないので不善を行ってしまう。」となります。
なお、四書とは、儒教の基本思想を示した経典で、「論語」「孟子」「大学」「中庸」を言い、この内「大学」は儒者の自己修養と政治思想を説いたものだそうです。
さて、兵庫県議会議員の不祥事について、報道によれば、兵庫県西宮市の野々村竜太郎議員(47)は、去年4月からの1年間に陳情などの名目で、東京都や兵庫県の城崎温泉などを日帰りで195回訪問し、政務活動費から約300万円を支出したとして、使用用途が不明瞭であるとして問題となりました。
野々村議員は記者会見で「領収書を取得できない場合という認識で、支払証明書をもって支出できるという認識で報告した」と言っていますが、 しかし具体的な訪問先は明かさず、電車の経路や金額については「無頓着なので覚えていない」と繰り返しました。
会見中には号泣しながら「世の中を変えたいその一心で、やっと議員になったんです」と醜態をさらけ出しながら芝居じみた答弁を繰り返していました。
結局、説明責任を果たさないまま、7月11日に辞表を提出し、受理された事から議員辞職となりました。
野々村議員は西宮市の多くの市民から信託を得て議員となった人です。
その彼が議員の目的を達することなく、諺の「小人」がするような、人目を憚らないで、自分の懐を肥やすことのみに奔走する不善を為し、自ら辞職の道を選ばざるを得なくなったことは余りにも浅はかであり、正に、「小人閑居して不善を為す」を地で行っているようなものです。
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